おれが、みごろしにした

※痛い表現アリ※いろいろ注意※

事件に巻き込まれて瓦礫と一緒に下の階に落ちそうになった香澄ちゃんの手を何とか掴んだけど腕を痛めてしまった萩原が「あッ…ぶねぇ…もう、ちょっと待ってね。今、助けるから」って顔を顰めるから、これ以上萩原を危険な目に遭わせたくなかった香澄ちゃんが「研二、もういいよ」って笑う。

その言葉の意味を分かってしまった萩原が「は…?ちょ、冗談キツイって…ッ、なに、いってんの、」って声を震わせるんだけど「ごめんね、研二」って香澄ちゃんが諦めたようにへにゃっと笑うから「何に謝ってんだよ!!冗談やめろって!!」って萩原が声を荒げる。

ぎゅうって香澄ちゃんの手を握り締めるけれど「研二、だいすき」って穏やかな顔で優しく笑った香澄ちゃんが無情にも、その手を振り払う。「ッ、香澄!!!」って声を張り上げるけれど、一度離れた手はもう掴めない。

香澄ちゃんの体が真っ逆さまに階下に落ちて、嫌な落下音が響く。何度も名前を呼ぶけれど、返事は無くて「ぁ…っ、う、そだ…ッ、ちが、香澄ちゃん…っ、なんでッ…!」ってその場で絶望する萩原の頭には香澄ちゃんに手を振り払われる瞬間の映像が何度も、何度も、繰り返し再生される。

「ぁ…っぅ、ぁぁァあ゛あ゛ああ…!」って頭を抱えた萩原が泣き叫ぶ。さっきまで掴んでいたはずの手が、温もりが。すぐ側にあったはずの声が、顔が、姿が。どこにもない。あるのは間違いようの無い腕の痛みだけ。

胸が張り裂けそうな悲しみと絶望に、目の前がぐらぐらと揺れて、世界から色が消える。どうして、俺じゃなかったんだ。どうして香澄ちゃんだったんだ。どれだけ考えても香澄ちゃんはもうどこにもいなくて、嗚咽が零れて、吐き気が止まらない。

「おれが、香澄ちゃんを、みごろしにした」って小さな声で呟いて、萩原がその場に倒れ込む。このまま、彼女と一緒にいなくなれたらどれほど幸せだろう、と考えずにはいられなくて目を閉じる。

「おれも、だいすきだよ、香澄ちゃん」って左手の薬指に口付けをした萩原は穏やかな気持ちで、意識を手放した。
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