「◯日から△日まで出張になったから」って香澄ちゃんに言われて返事をしようと思ったけどカレンダーを思い浮かべて「ああ、わか……っ、え、」って固まった降谷に香澄ちゃんが首を傾げるから「その日は…君の誕生日だろう…」って降谷が額を押さえながら言えば「あ〜〜忘れてた」って返される。
「忘れてたって、君なぁ…」って文句の一つや二つ言おうと思ったんだけど「だって去年もその前も零くん緊急の呼び出しだったじゃん?まあこの歳になってくると普通の日だし今年は何もしなくていいかなって思ってたからすっかり忘れてた」って言われてフルボッコ。
「……すまない」って謝ることしか出来なくてガックリ肩を落とした降谷に「えっ、なんで零くんが謝るの!?零くんが悪い訳じゃないじゃん!」って香澄ちゃんが慌てて駆け寄る。
「君に仕方無いって諦めさせてる僕が全面的に悪いだろ…!」って言いながら泣きそうになってる降谷に「私と仕事、どっちが大事なの!とか言う気ないよ、私」って香澄ちゃんが苦笑いで言えば「言えよ!!!」って理不尽に怒られて思わず声をあげて笑っちゃう。
「日頃のデートもドタキャン、帰ってくるのは深夜、こっちの都合で振り回すのは日常茶飯事で、彼女の誕生日すらろくに祝ってやれない彼氏なんて、いてもいなくても変わんないじゃないか」って完全に拗ねモードに入っちゃった降谷を見て「そうだね。予定通りにデート出来たことなんて片手で数えるくらいしかないし」って言えば「ぐっ、」って降谷が唸る。
「私が寝てる間にふらっと帰ってきて朝起きたらいないし」って事も無げに言えばグサリと降谷に二本目の矢が刺さる。「私の都合なんてお構い無しに振り回されるし」って香澄ちゃんがクスクス笑うから降谷に三本目の矢が刺さる。
もう止めてくれと言いたい気持ちをグッと堪えて香澄ちゃんを恐る恐る見た降谷に「特に去年の誕生日はお店に着いてから3時間待ちぼうけ。ぜ〜んぜん連絡も無くて店員さんにすごい顔されながら一人でコース料理食べたしね」って最後のトドメの一撃。
「……本当に、悪いと思ってるよ」って頭を抱えるようにしてしゃがみ込んだ降谷の前に香澄ちゃんもしゃがみ込む。「正直、この先ずっとこうなんだろうなって考えたこともあるよ」って言われて降谷がひゅっと息を飲む。
嫌だ、なんて言える立場じゃない。愛想を尽かされても当然のことを何度もしてきているから。言葉を失った降谷に「でも、零くんの隣にいる私しか想像できなかったの。零くんが心置き無く信念と誇りを持って仕事ができる理由の一つに、私がいるなら、それでいいかなって」って肩を竦めて香澄ちゃんが笑う。
「我ながらチョロいなって思うけど、それくらい零くんのことが大好きなんだよね。わたし」って笑った香澄ちゃんが降谷の頬を両手で包む。「大好きだよ、零くん。この先何十年も一緒にいるんだから誕生日なんていつだって祝えるし、当日じゃなくても零くんがお祝いしてくれるならいつだって嬉しいよ」って笑った香澄ちゃんを思い切り抱き締める。
「……本当に、僕でいいのか?」って震える声で聞いてくる降谷に「零くんが、いいの」って抱き締め返せば「香澄…っ、すきだよ、あいしてる、せかいでいちばん…っきみが、すきだ」ってもっと強い力で抱き締められるから、また声を上げて笑っちゃう。
「泣かないでよ」って笑えば「ないてない!」って返ってくるの可愛いね。