学生時代にフラれた香澄ちゃんに同窓会で久しぶりに会ったら腕に大きなアザを作ってて「あの時、松田くんと付き合ってたら…もう少し、違う未来があったかな」って泣きそうな顔で笑うから、思わずその手を掴んだ松田が勢いのままに「今なら、まだ間に合うだろ」って香澄ちゃんを抱き締める。
「あの時も、今も、お前のことしか見えてねぇよ」って呟く松田の声は怒りで震えている。「お前にそんな顔させるような奴に渡すくらいなら、俺が奪ってやる」って抱きしめる手に力を込める松田に香澄ちゃんの目から涙がぽろぽろ零れる。
松田に告白されたあの日、秀でた何かを持つ訳でも無ければ、とびきり美人と言う訳でもない自分が松田の隣に立つことなんてできないと、自分を守るために松田からの告白を断った。
その結果が、ろくでもない男に捕まって身も心もボロボロになった。何て間抜けな女だと、自分でも笑うしか無かった。そんな自分に、差し伸べられた手を、取っても良いのだろうか。
「お前がどうとか、周りがどうとか、知ったこっちゃねぇんだよ。俺が、何を差し置いても手に入れたいって、欲しいって思うのは…後にも先にもお前だけだ」ってまっすぐ目を見て告げられたら、もう逃げられるはずも無い。
ぼろぼろと涙を流しながら、香澄ちゃんが「たすけて、松田くん」と告げれば松田は嬉しそうに頬を緩めて「あぁ、俺に任せろ」って微笑む。涙を流す香澄ちゃんの頭に自分のジャケットを被せて手を引いて会場を出て、その足で香澄ちゃんの恋人の元へ向かう。
「アンタの女、俺がもらうから」って香澄ちゃんを抱き締めて啖呵を切って、文句を言う男に「言い忘れてたが、コイツの怪我、俺が事件だって騒ぎ立ててもいいんだぜ」って悪い顔で警察手帳をチラつかせる。
「そんな陰気なブス女、こっちから願い下げだ!」って吠える男に「おーおー、強がりだけは一丁前だな。世界で一番イイ女を手放したって、死ぬほど後悔する日を楽しみにしとけよ」って鼻で笑って香澄ちゃんを連れて家に帰る。
「迷惑かけてごめんなさい」って眉を下げた香澄ちゃんの鼻をむぎゅっと摘んだ松田が「言ったろ。お前がどうとか関係ねえって。俺がしたいからやったんだよ」って笑って香澄ちゃんの頬をそっと撫でる。
「好きだ、香澄。お前のことが、あの時から、ずっと変わらず好きだ」ってあの日と同じようにまっすぐな目で告白をされて「わたしも、あのときから、ずっとすきです」って涙を流しながら香澄ちゃんが嬉しそうに笑う。
「俺と、付き合って」って優しく笑った松田が香澄ちゃんの返事を聞かずに唇を重ねる。返事をする代わりに松田の首に腕を回した香澄ちゃんの体がふわりと浮いて、夜が更けていく。