この先一生君と同じ気持ち

※原作軸※本当に注意※誰も幸せにならない※

「どうして、みんなを助けてくれなかったの」と涙を流した香澄に、コナンは何も返すことができなかった。「香澄さん、」と名前を呼ばれてハッとした香澄の瞳から大粒の涙が次々に溢れ出す。

「なんで、なんで…っ、あの人ばっかり、零くんのことも…ったすけてよ…っ、!」と泣きじゃくりながら悲鳴にも似た声で叫んだ香澄の視線の先にいたのはコナンと赤井だった。

こんな怒りを、悲しみを、苦しみを、彼らに向けたところで八つ当たりでしかないと、百も承知だった。分かっている。酷いことをしていると。彼らは何一つ悪くないと。それでも、もしもを願わない日は無かった。

彼らの死は避けようと思えば避けられたんじゃないかって。でも、それがたらればだと言うことも、分かっている。そして、それを口に出すことが許されないことだと言うことも分かっている。

それを口にしたら、降谷が苦しそうに顔を歪めるから。香澄にとっても降谷にとっても、かけがえのない存在だった。ずっと、傍にいてほしかった。今だって、隣で笑っていてくれる、はずだった。

第三者の悪意に、殺意に晒されて、命を落とした彼らを、忘れることなどできやしなかった。「ずるい、なんで…っ、なんでみんなが死なないといけなかったの…!なんで、何でたすけてくれなかったの!なんで、何で…っ、なんであの人ばっかり…!」と溢れ出した心は、酷く、醜い。

「ごめんね、ごめんねコナンくん…っ、わかってる、わかってるの…あなたのせいじゃない、あの人も悪くない、わるくないから…っわるくないから、憎くて、しかたないの…っ、ごめんなさい、」と何度も、何度も、謝る。

頭が、心が、どうにかなってしまいそうだった。コナンくんの肩を掴んで泣きじゃくる香澄を止めたのは降谷だった。「香澄、もういい。もう、いいから」と背後から香澄の肩を掴んで振り返らせる。

涙に濡れた瞳が降谷を映して、顔がくしゃりと歪んだ。降谷の胸元に飛び込むようにして声を上げて泣く香澄の背を撫でながら降谷は静かに頭を下げた。

「ごめんね、コナンくん。君は何も悪くないし、勿論アイツらの死は君のせいなんかじゃない。君の力は本物だ。たまたま、その力の使いどころが、今だった。それだけだ。過去の死まで、それも、君のあずかり知らない場所で起きていた死を、君が背負う必要は無いよ。……嫌な思いをさせて、本当にすまない」と謝る降谷にコナンは「…うん、分かってる」としか返せなかった。

離れた場所で様子を窺っていた赤井も、返事はおろか声をかけることなんてできなかった。涙を流して、悲しみに体を震わせる香澄を抱き上げてその場を離れた降谷が静かな声で香澄の名前を呼ぶ。

怒られる前の小さな子供のようにビクリと肩を揺らして恐る恐る降谷を見つめた香澄だったが、降谷の顔を見て再び涙が溢れた。「ありがとう。アイツらのことを想ってくれて、僕の分も叫んでくれて」と静かに涙を流した降谷も声が、震えていた。

降谷も、香澄と同じだった。彼らのことを思い出さない日は無かった。もしもを願わない日など、無かった。コナンが誰かを救うたびに、彼が現場にいてくれたらと、たらればを考えたことは何度だってあった。

けれど、それを願ったところで彼らは帰ってこないし、降谷が愛するこの国を守ることなどできない。だからこそ、ひたすらに目を逸らし続けてきた。考えないようにしてきた。それを、言葉にして、叫んでくれたのは他の誰でも無い香澄だった。

「世界中の人間が香澄のことを酷い女だって罵倒しても、僕は、この先一生君と同じ気持ちだよ」と涙を流しながら綺麗に微笑んだ降谷が香澄に口付けた。彼らの死を認めることは出来ても、受け入れることは出来ない。

今この瞬間、世界から二人だけが切り離された。
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