こうなるって分かってただろ

※色々注意※香澄ちゃんの性格が悪い※

最近入ったばかりの職場の後輩が、何がお気に召してしまったのかやたらとしつこく声をかけてくる。「はぁ…」と思わず零れてしまった溜息に萩原が首を傾げる。「なになに、どうしたの。ため息なんか吐いちゃって」と笑う萩原の横では「酒が不味くなんだろうが」と松田が眉間に皺を寄せる。

「……ごめん、無意識」と眉を下げて謝れば「無意識で出ちゃうため息って相当じゃない?」と諸伏が怪訝な顔をして「話すだけ話したら少しは楽になるんじゃないか?」と肩を竦めた降谷が空になったお猪口に日本酒をとくとくと注ぐ。

「ん〜…でもそんな、大したことじゃないし…」と言い淀むけれどその程度で引き下がるような彼らでは無い。「大したことないなら尚更じゃん?」「おら、さっさと吐いちまえよ」と萩原と松田が悪い顔で肩を組んでくるから渋々口を開く。

「やたらと懐かれちゃって…家の近くのコンビニで待ち伏せしてるっぽいんだよねぇ」と苦笑いで告げれば、先程まで楽しそうな顔をしていた彼らの目付きが鋭くなる。「香澄ちゃんの家の近くって、あの角の所だよね?」と首を傾げた諸伏に頷けば「待ち伏せされてる時間は?」と降谷から質問が飛ぶ。

「今は朝かなぁ…夜は寄り道したりして毎日時間変えてるけど、朝はどうしてもズラせる時間に限りがあって…」と苦笑いで答えれば「何かあったらすぐ連絡してね」「迷惑だとか余計な事考えるなよ」と諸伏と降谷に念を押されてこくりと頷く。

そんな私の頭を撫でながら「も〜〜なんでそんな事になってるのに黙ってたのさ〜〜」と萩原が泣き真似をして「何かあってからじゃ遅いんだよ、このバカ」と松田が額をびしりと指で弾く。

その飲み会から数日後、ぱたりと待ち伏せは無くなって後輩の男の子は会社に来なくなった。風の噂で捕まったと聞いたけれど、その真偽を確かめる術は無い。「ふふっ…」とご機嫌に笑みを零した香澄の隣で「お前、こうなるって分かってただろ」と伊達が苦笑いを零す。

「え?なんの事?」とにこりと微笑む香澄に「はぁ…お前くらいだぞ。アイツらを顎で使ってるの」と呆れたようにため息を吐く伊達に「人聞き悪いこと言わないでよ。私は困ってることがあるなら話してみなって言われたから、ちょこっと相談しただけだも〜ん」と笑った香澄に「ちょこっと、ねぇ…?」と伊達が眉を下げる。

「別に、こうなるって分かってた訳じゃないよ。ただ、皆ならこうしてくれるだろうなって、思ってただけ」と口元を隠すようにして、にこりと微笑んだ香澄に伊達は肩を竦めるだけで何も言わない。彼らが法に触れることをした訳じゃない。法に触れることをしたのはあの男であり、あの男は然るべき手段で正しく裁かれただけなのだから。
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