香澄ちゃんが目の前で爆死する夢を見て目が覚めた萩原。自分の心臓の音が頭の中に響くように聞こえて、呼吸が苦しい。隣で眠る香澄ちゃんを起こさないように息を殺そうとしたのが逆効果で「は、はッ…はぁっ、は…ッ」って変な呼吸になっちゃって「研二くん…?」って香澄ちゃんも目を覚ます。
「ご、め…っ、へ、きっ、へいき、だから…っ、」って萩原が言うけど大丈夫には見えなくて香澄ちゃんもハッとして体を起こす。「研二くん、体起こせる?ゆっくり息しよう?ね、大丈夫、大丈夫だよ」って萩原の背中を撫でて香澄ちゃんがゆっくり声をかける。
早く何とかしなきゃ、と思えば思うほどに呼吸が乱れて頭がくらくらする。「ハッ…ぁ、げほ、っは、ぁっ…」ってどんどん呼吸が荒くなる萩原に泣きそうな顔をした香澄ちゃんが「研二くん、私のこと見て。大丈夫、大丈夫だよ。手、繋ごう。ゆっくり息しようね。吸って、吐いて、」って萩原の手をぎゅっと握り締めて声をかけ続けるんだけど、全然ダメ。
いつもなら香澄ちゃんの手が痛くならないように優しく握ってくれる手も痛いくらいに握り締められてて、いつもならまっすぐに見つめてくれる綺麗な目もどこか空虚を見てゆらゆら揺れている。
このままじゃダメだって思った香澄ちゃんが「ッ研二くん、ごめんね」って謝ってから頬に手を添えて唇を重ねる。驚いたように目を見開く萩原にキスをして、唇を離して、また口付ける。
呼吸が、少しでもゆっくりになるように。ただ、それだけを考えて何度も口付ければ、握り締められていた手が少しだけ緩む。そっと唇を離して「研二くん、深呼吸できる?」って香澄ちゃんが尋ねれば「…っごめん、ごめんね…っ、」って萩原がくしゃりと泣きそうな顔をして香澄ちゃんを抱き締める。
肩口に顔を埋めて「香澄ちゃんが、いなくなったかと、おもって…っ、おれのせいで、ばくだんがっ…や、だ…いやだっ、おいていかないで、しなないで…!」って震える声で言う萩原の背中をあやす様にとん、とん、と撫でてあげる。
「研二くんがいつも守ってくれるから、大丈夫だよ。研二くんのことを置いて、私が死ぬ訳ないじゃない」ってくすくす笑いながら萩原の背中を撫でる。「ね、研二くん。顔見せて」って言えば、恐る恐る体が離されて泣きそうな、迷子の子のような目をした萩原と目が合う。
両手で頬を包み込むようにしてこつん、と額を合わせれば「香澄ちゃん、」って縋るように名前を呼ばれる。「全部悪い夢だよ。大丈夫。また怖い夢を見ても、私がやっつけてあげるから。だから、安心して。大丈夫、大丈夫だよ」って鼻先をすり、と擦りつけてから、ちうって優しい触れるだけのキスをする。
萩原の体を倒す様にして一緒にベッドに横になって、萩原の耳を胸元に押し付けるようにして抱き締める。「聞こえる?ちゃんとドクドク言ってるでしょ?大丈夫だよ、ちゃぁんと生きてるよ。研二くんのおかげだよ」って頭を撫でてあげれば、萩原が震える手でぎゅううって抱き着いてくる。
「よか、った…」って安堵する小さな声が聞こえて、少しするとすうすうと萩原の寝息が聞こえてくる。「ゆっくり、休んでね。おやすみ、研二くん」ってもう一度頭を撫でて香澄ちゃんも眠りにつく。
次の日の朝、ふと目を覚ましたら香澄ちゃんをじいっと見つめる萩原と目が合って「お、はよぉ」って言えば、ふにゃっと笑った萩原が「おはよ」って返してくる。「昨日は、ごめんね」って眉を下げた萩原に「なんのこと?」って首を傾げれば「……迷惑、かけちゃったでしょ」って萩原が泣きそうに顔を顰めるから、萩原の頬をむぎゅっと抓る。
「研二くんは、何にも悪いことしてないでしょ」ってムッとしながら香澄ちゃんが言えば「…でも、」って萩原が食い下がる。「でももだっても無い!研二くんは何にも悪いことして無いんだから謝らなくていいの!」って香澄ちゃんがぷんすこ怒って「楽しいことも嬉しいことも、嫌なことも悲しいことも、全部半分こしよ?ね?」って笑った香澄ちゃんに萩原の胸がぎゅうっと苦しくなる。
「…うん。そう、だね」って微笑んだ萩原が「ありがとう、香澄ちゃん」って嬉しそうに笑ってぎゅうって抱き締めてくれるから「ふふ、どういたしまして!」って笑って抱き締め返す。不安で、怖くて、眠れなくなる夜があったとしても。貴方がいるなら大丈夫って、お互いが思えるなら、それだけで無敵になれる気がするよね。