体の傷よりも心の傷

※痛い表現アリ※いろいろ注意※

「すみません、道を教えて欲しいんですけど」って男の人に聞かれて答えようとした香澄ちゃんの腕を掴んだ男が、香澄ちゃんを無理やり引き摺り倒して頬を殴るから香澄ちゃんは勿論のこと、一緒にいた警察学校組の皆ですらも何が起きたのか分からなくて一瞬反応が遅れちゃう。

何が起きたのか分からなくて目をぱちぱち瞬かせる香澄ちゃんをもう一回殴ろうと拳を振り上げた男に真っ先に動いたのは松田と伊達だった。「何、してんだテメェ!!!」って松田が香澄ちゃんに馬乗りになる男を殴り飛ばして、倒れた男を伊達が押さえつける。

離せと喚く男に「離す訳ねぇだろうが!!!大人しくしてろ!!!」って伊達が怒鳴るから、松田と伊達の二人の怒号に萩原たちがハッと我に返って動き出す。萩原が「香澄ちゃん!」って駆け寄って体を抱き起して、諸伏が「俺、水買ってくる」って香澄ちゃんの頬を冷やすための水を買いに近くの自販機に向かって走り出す。

降谷は険しい顔で電話をしていて、どうやらすぐに警察が駆け付けてくれるように手配したらしい。突然襲い掛かった悪意を受け止めきれていないのか「え、ぁ…っ、?」って混乱している香澄ちゃんをぎゅっと抱き締めて「大丈夫、大丈夫だよ。もう、大丈夫だからね」って萩原が泣きそうな顔で背中を撫でる。

時間差でようやく自分の身に起きたことを自覚した香澄ちゃんが萩原にしがみついて泣きじゃくるから「うん、そうだよね。怖かったよね、ごめんね。もう大丈夫だからね」って何度も何度も背中を撫でてあげる。

水を買って戻って来た諸伏が「香澄ちゃん、ほっぺ冷やそう?ね?」って買ってきた水でハンカチを濡らしてそっと頬に当てる。唇の端が切れてるのかぴりぴりと痛んで「い、っ…」って険しい顔をする香澄ちゃんを見て全員の表情も険しくなる。

駆け付けた警察に男は連行されて、香澄ちゃんはそのまま病院で手当てを受ける。倒れた時にぶつけたであろう頭に異常は無し。殴られた頬は暫く腫れが続くだろうけれど骨に異常も無く、数日で収まるだろうとのことだった。

「問題は、体の傷よりも心の傷だろうな」って眉間に皺を寄せた降谷の言葉通り、香澄ちゃんにとってあの出来事はトラウマを植え付けるには十分すぎた。自分に向かって伸ばされる手が恐怖の対象になってしまっていて、頭では分かっているのに体が拒否してしまうのだと降谷たちが泣きながら謝られたのは先日の出来事だった。

「根気強く向き合っていくしか、無いだろうな」って呟いた伊達が「ナタリーにもフォローしてもらえるように頼んでる。しばらくは、少し距離を置いて様子を見た方が良いな」って言うから皆もそれに頷く。

「でも、このままって訳にもいかないよね」って萩原が困ったような顔で言えば「伊達の彼女がいるところで、ちょっとずつ慣らしてくしかねぇだろ」って松田が返して「そう、だね。俺たちだけだとパニックになっちゃうかもしれないし」って諸伏も同意する。

皆を拒否したい訳じゃない香澄ちゃんが皆の手を借りながらトラウマ克服を頑張る話が続くかもしれないし、続かないかもしれない。
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