出たイケメンムーブ

隣の部屋に住んでるサングラスのお兄さんがちょこちょこイケメンムーブかましてくるせいで心乱されまくりでついうっかり好きになってしまいそうなオタク女の香澄ちゃんと、隣人が自分と会う度に百面相してくるから自分が何かしてしまったのか単純に相手が変な奴なのか分からない松田の話。

「隣のイケメンどう?」「いやヤバい。マジでヤバいメロい」「今のとこアンタの言語がヤバいよ」って友達とお酒を飲みながら話してる香澄ちゃん。すれ違う時は挨拶してくれるし、エレベーター乗る時は扉押さえててくれるし、エントランスのちょっと重めの扉も開けてくれるし、とにかくちょっとした所作がイケメンすぎるサングラスの隣人がここ最近の酒の肴になっている。

「話したりしないの?」「無理。声が良すぎるし顔も良いから安易に近付いたら溶ける」「どこが?頭が?」って二人でわいわい話して飲んで、そこそこ酔っ払って帰ってきたらエントランスでバッタリ出会っちゃって「あ、どぉも〜」ってへらっと挨拶をすれば「ッス、」って会釈をしていつもの様にエントランスの扉を開けてくれる。

「いつもすみません〜」って言いながら扉をくぐった瞬間、香澄ちゃんが段差に躓いちゃう。酔っ払った頭でこれは転ぶやつだなぁ…って思ってたら腕を掴まれて「っぶねぇ…大丈夫かよ、アンタ」って眉間にシワを寄せた松田と目が合う。

「うわ、出たイケメンムーブ」って思ってたことが全部口から漏れてしまって「……は?」ってぽかんと口を開ける松田を見て、ようやく香澄ちゃんが自分の失言に気が付く。

「あっいやっえっと、ごめんなさい何でもないです忘れてください」って頭を下げて「酔っ払ってると頭で考えてることをそのまま言っちゃうから良くないですよね〜!」って全然フォローになってないフォローをして「あっははは〜!助けてくれてありがとぉ〜ございますっ!」ってケラケラ笑いながらエレベーターに乗り込んで松田を待たずに『閉』ボタンを連打する。

半ば走るような形で部屋の中に転がり込んで「さっきの醜態を振り返って死にたくなってる香澄ちゃんがいる。取り残された松田は、酔って赤くなった顔でへにゃへにゃ笑いながらド直球に褒められて、ちょっと可愛いなと思ってしまい「…何考えてんだ」って頭をがしがし掻いてから香澄ちゃんを送り届けて戻ってきたばかりのエレベーターに乗り込んだ。
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