※痛い表現アリ※いろいろ注意※
対象の動向を探るだけで危ないことは何も無い公安の捜査だから香澄ちゃんに美味しいご飯を食べてもらおうと思って連れてきた降谷だったけど、自分と香澄ちゃんのグラスを取り違えてしまって、パッと見たら「っ、ごほ…っ、」って香澄ちゃんが赤を吐いて呆然としてるからヒュッと息を飲む。
「あ、ぇ…?なん、で、」って真っ赤に染まった自分の手と、床に落ちて砕けたガラスと、目を見開いて固まる降谷を見て呆然としていた香澄ちゃんだったけど、こみ上げてくる吐き気を堪えられずに、また数度咳き込む。
「ぅえ、げほっ…ごほ、っ、」って咳き込む度に口の中に鉄の匂いが広がって、徐々に目の前が霞んでいく。足に力が入らなくて「と、…る、さ、」って震える声で降谷の偽名を口にした香澄ちゃんが、膝から崩れ落ちる。
どしゃ、って倒れ込む音と、会場内に響き渡る悲鳴で、ようやく我に返った降谷が香澄ちゃんの体を抱き起す。「香澄、香澄…っ、!」って何度声をかけても香澄ちゃんは目を閉じたまま、浅く早い呼吸を繰り返してて。
香澄ちゃんがどうして倒れたのか、何を摂取してしまったのか、風見たちに連絡をして動いてもらわないと、救急車を呼んで香澄ちゃんを早く病院に連れていかないと…って頭の中では分かっているのに、情けなく手は震えて、かちかちと歯が音を鳴らす。
香澄ちゃんの名前を呼ぶことしかできなくて、最悪の想像ばかりが頭をよぎって、降谷の呼吸も荒くなる。「い、やだ、香澄…!たのむから、おきてくれ…っ、ぼくを、おいていかないで」って泣きそうな顔で降谷が香澄ちゃんを抱き締める。
降谷と同じく会場にいた別の捜査員が素早く動いてくれたおかげで、すぐに救急隊が駆け付けてくれて、別の場所で待機していた諸伏や風見も駆け付ける。
「ゼロ、ここは俺たちに任せて、早く香澄ちゃんを病院に連れてってあげて。それと、大丈夫だとは思うけど絶対口に触るなよ」って諸伏が真剣な目で降谷を見るから「あ、あぁ…わるい、っ、」って降谷がくしゃりと顔を歪ませる。
「俺も、すぐに行くから」って言ってくれた諸伏にこくりと頷いて香澄ちゃんが運ばれた病院に向かう。処置は完了したけど、いつ目が覚めるかは分からない。そう言われた降谷がふらふらと椅子に腰かけて、力一杯握り締めた両手に額を押し当てる。
「ぼくのせいだ、ぼくが、香澄を巻き込んだんだ…っ、!あのとき、ぼくが飲んでいれば、香澄は…!」ってがたがた震える降谷の背中を撫でた諸伏が「ゼロのせいじゃない。あれは、ゼロも香澄ちゃんも、あの場にいた人たちの誰が倒れててもおかしくなかった」ってもう片方の手の拳を握り締める。
犯人は『手に入れた毒が、どんな風に人を殺すのかが見たかった』なんて動機で毒を仕込んだ。たまたまそのグラスに口を付けてしまったのが香澄ちゃんだった。
「絶対大丈夫って、ゼロが信じてあげないでどうするの」って諸伏に言われるけど「わか、ってる…!わかってる、わかってるけど…っ、だめなんだ、あの、赤色が…っ頭からはなれない、」って降谷が震える声で言葉を吐き出す。
それから数週間、真っ白な顔で静かに眠っていた香澄ちゃんの手が微かに動いて降谷がハッとする。「香澄…?」って名前を呼べば、香澄ちゃんの瞼が震えてゆっくりと目が開く。
「香澄、分かるか?」って顔を覗き込む降谷を視界に捉えた香澄ちゃんが「ぶじ、で、よかった」って目を細めて笑うから降谷の目からぼろぼろと涙が流れる。「ぼくの、せりふだよ…っ、本当に、君が無事で、よかった」って泣きながら微笑んだ降谷が香澄ちゃんの唇にキスを落とす。
「れ、くんが、ないてるの、はじめてみた」って香澄ちゃんが笑うから「君の前では、かっこいい僕でいたかったんだけどな」って冗談めかして降谷も笑って、また唇が重なった。