※原作軸※本当に注意※
『終わったら行くから、いつものとこで待ってて』って萩原から送られてきたメッセージを、香澄ちゃんはいつまでも消すことが出来ない。萩原がいなくなったあの日、一緒にご飯を食べに行こうと話していた。いつものように「遅くなってごめん!」って来てくれると信じていたのに。
待てど暮らせど、萩原は待ち合わせ場所にはやって来なかった。代わりにやって来たのは松田からの『萩原が死んだ』ってメッセージ。嘘だと思った。信じられなかった。萩原に何度も電話をかけたけど、繋がらない。何度メッセージを送っても、届かない。返事は、無い。
色鮮やかなお花だけが入った棺桶を見送っても、そこに萩原がいるとは思えなくて。毎日、毎日、あの日の待ち合わせ場所で萩原を待った。雨の日も、風の日も、雪の日も。毎日、待ち続けた。けれど、萩原はいつまで経っても、何日経っても、何か月経っても、待ち合わせ場所には現れなかった。
「約束、忘れてるのかなぁ」って困ったような顔で笑った香澄ちゃんに、松田は何も言えなかった。「松田くんからも言っておいて。待ってるって」って曇りの無い瞳で笑う香澄ちゃんに、萩原はとっくに死んでいるのだと、二度と待ち合わせ場所にはやって来ないのだと、松田から伝えることなど出来ないのだと、言えるはずも無かった。
伝えたら、香澄ちゃんが壊れてしまう気がしたから。けれど、それが間違いだったと気付いた時には遅かった。「…もう、壊れてたんだな」って呟いた松田の前には、懇々と眠り続ける香澄ちゃんの姿。
連絡が取れず、会社にもやって来ない香澄ちゃんを心配した職場の同僚によって、自宅で倒れている所を発見された。傍らには大量の睡眠薬と、萩原のタバコがあった。一命は取り留めたはずなのに、香澄ちゃんは一向に目を覚まさない。
「夢の中で、ハギに会ってんのかよ」って自嘲めいた笑みを浮かべて香澄ちゃんの頬を指の背で撫でる。随分と、やつれた。松田にとっても、何が最善なのかは分からなかった。
「このまま死んだ方が、お前は幸せになれんのか」って呟いて、拳を握り締める。萩原がいなくなってから2年。香澄ちゃんが倒れてから1年が経っていた。
絶対にやって来ない萩原を待ち続けていた時よりも穏やかな、柔らかい表情で目を閉じる香澄ちゃんに「どうせなら、俺が仇を討つまで待ってろよ」って笑った松田も、その1年後にぱたりと病院にやって来なくなった。
まるで、待っていたかのように深い眠りについた香澄ちゃんを抱き締めたのは、あの日からずっと待ち続けた萩原だった。
「待たせてごめん…っ、ずっと、ずっと待っててくれて、ありがとう…!」って泣きながら香澄ちゃんの肩に顔を埋めた萩原の背中に香澄ちゃんの手が回されて「むかえに、きてくれてありがとう…っ、ずっと、あいたかった、さみしかったぁ…っ、!」って香澄ちゃんが泣きじゃくる。
何度も、何度も、互いを確かめるように交わされるキスは涙の味がして、それでも今まで交わしたどんなキスよりも甘かった。二度と離さない、と誓う様に、二人は何度も唇を重ねた。