行きつけの喫茶店で最近働き始めたイケメン店員の安室に「僕と賭けをしませんか?」って言われた香澄ちゃんが「賭け、ですか…?」って警戒しながら返事をしたら「一ヶ月後に、貴方が僕を好きになっているかどうか」って言われて想像してなかった内容に「…は?」って本気で首を傾げちゃう。
何を言っているのか全然分からなくて「え、っ…と?」って首を傾げた香澄ちゃんに「一ヶ月後、貴方が僕を好きになっていたら僕の勝ち。貴方が僕を好きになっていなかったら貴方の勝ちです」って普段お客さんに向けているような笑顔で笑う安室に「そ、れは、勝ったら何かメリットがあるんです…?」って恐る恐る香澄ちゃんが尋ねれば、パチリと目を瞬かせた安室が楽しそうに笑う。
「勿論です!僕が勝ったら僕とお付き合いをしてください。貴方が勝ったら顔が良くて気立ても良いそこそこ高給取りの公務員を紹介してあげます」って言い切った安室に胡散臭さしかなくて「そんな人、本当に実在してます…?」って聞いたら「してますよ?」ってきょとんと首を傾げられてしまう。
安室が勝った場合は交際スタート、香澄ちゃんが勝った場合は超優良物件の斡旋。確かにどちらに転んでも…とそこまで考えて「…待ってください。その条件だと、どっちに転んでも私が得しすぎじゃないですか?絶対何か企んでますよね?」って気付いてしまってジトリと疑いの目で安室を見ればわざとらしく肩を竦めた安室が「バレましたか」ってクスクス笑う。
「何なんですか…もう…」ってため息を吐いたら「先日、梓さんと結婚の話をしてましたよね?」って安室が言うから「ああ…親戚からお見合い迫られてるってやつ…よく聞いてましたね」って香澄ちゃんが目を瞬かせる。
「随分と嫌そうだったので珍しいなと思って覚えてたんです」ってくすくす笑った安室が「香澄さん、あんまりそういう顔しないから」って言うから「…そりゃそうですよ。お見合いの相手、10個も上なんですから」って香澄ちゃんが嫌そうに眉間に皺を寄せれば、さすがに予想していなかったのか「10個ですか?」って安室が驚いたように目を見開く。
「それは…何とも…」って微妙な顔をした安室に「ね?嫌でしょう?」って今度は香澄ちゃんが楽しそうにくすくす笑う。「だからそんな割の良い話を持ちかけてくれたんですか?」って香澄ちゃんが安室に向かって首を傾げれば「その通りです。とは言え、いきなり恋人のフリっていうのもアレかと思ったんですけど…わざらしすぎましたかね」って安室が言うから「いえいえ、お気遣い頂いてありがとうございます」って香澄ちゃんもふわっと笑う。
とは言え、安室とそんな話をしたところで香澄ちゃんのお見合い話が消える訳でも無く、香澄ちゃんが小さくため息を吐けば「あ、でもさっきの紹介しようとした人は本当に実在してますからね」って安室が言うから「えっ、冗談じゃなかったんですか」って香澄ちゃんがびっくりした顔をする。
「最初からずっと本気ですよ」って笑った安室が香澄ちゃんの頬に指を滑らせて「それに…どちらに転んだとしても、僕にとっても悪い話では無いので」って笑う安室の言葉の意味が分からずに「それ、どういう…」って香澄ちゃんが言いかけたタイミングでお店の扉が開いてお客さんが入ってくるから「続きはまた今度、ですね」って人差し指を口元に立ててパチリとウインクをした安室の言葉の真意を悶々と考えることになっちゃうよね。