だから、投げてみて欲しいの

「零くんにお願いがあるんだけど…」って真剣な顔で香澄ちゃんが言ってきたから何事かと思って「うん?何かあったのか?」って聞いたら「あ、あのね…ちょっと、私のこと投げてみて欲しくて…」って言われた降谷が「……悪い。もう一回言ってもらっていいか?何だって?」って首を傾げる。

「だから、投げてみて欲しいの」ってもう一回言った香澄ちゃんをまじまじと見て「僕の聞き間違いであって欲しかった」って思わず額を押さえちゃう。「…何でそうなったんだ」って聞いたら「一本背負いされる側の感覚が気になって」って返って来るから、もう本当に意味が分からない。

「何でそれが気になるんだよ…」って呟けば「だって私の力じゃ投げる側にはなれないでしょ?」ってきょとんと首を傾げられるから「違う。そういう意味じゃない」って首を横に振る降谷がいる。投げる側になれないなら投げられる側になろう!という発想が全く理解できないし、そもそも香澄ちゃんを投げる気は一ミリも無い。

「と言うか、僕が君に手を上げられる訳無いだろ。絶対嫌だからな」って怪訝な顔をした降谷に「えぇ〜〜!零くん一本背負い出来ないの…?」って香澄ちゃんが言うから「できるに決まってるだろ。香澄にそれをやる気は無いって意味だよ」って言えば「ちょっとだけ!」って顔の前で両手をぱちんと合わせてオネダリしてくる。

「ちょっととか無いだろ」って呆れた顔で言えば「じゃあ一本背負いじゃなくていいから、こう…転がして欲しい…」って不満そうな顔で言ってくるから「何で香澄が渋々妥協しましたみたいな顔してるんだよ…だからしないってば…」って降谷が困った顔をする。

「何でよ!」ってぷんすこ怒る香澄ちゃんに「君に怪我をさせたくないからに決まってるだろ」って言えば「別に殴れって言ってないじゃん!ちょっとこう…足を引っかけて転ばすとかあるでしょ!」って全然諦めてくれなくて降谷の口から盛大なため息が零れる。

こうなったら絶対引いてくれないって分かってるから「……一回だけだぞ」って言えば、香澄ちゃんの顔がパァッと輝く。ウキウキしながら待ってる香澄ちゃんの手首を掴んで軽く引っ張れば、いとも簡単に自分の方に倒れ込んでくるから、そのまま軽く足を払うように動かして香澄ちゃんの体勢を崩す。

がくん、と香澄ちゃんの体が傾くから地面にぶつからないように片手で支えてあげれば「い、今の何!?えっ、すごい!もう一回!」ってキラキラした目を向けてくるから「一回だけって言っただろ。もうしない」ってため息を吐いちゃう。

内心ではあまりにも軽すぎる香澄ちゃんの体にゾッとしてるし、ちょっとでも力を入れたら折れちゃいそうな細さにヒヤヒヤしてるから、絶対もうやらない。
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