カーテンの隙間から差し込んだ光が眩しかったのか「んぅぅ…」って小さく唸って布団の中に潜り込んだ香澄ちゃんを見て萩原が頬を緩める。七年ぶりの再会に年甲斐もなくはしゃいでしまった自覚はあって、未だ眠り続ける香澄ちゃんの頭をそっと撫でた。
少ししてころりと寝返りを打った香澄ちゃんがゆっくりと目を開ける。「起きた?」って萩原が声をかければ「……ぅん…?」ってぼんやりしながら香澄ちゃんがぱちり、ぱちり、とゆっくり瞬きを繰り返す。
それから萩原を認識してふにゃりと頬を緩ませて「けんじくんだぁ」って笑うから、あまりの可愛さに天を仰ぐ。昨晩「昔みたいに名前で呼んで」って懇願するように言った萩原に、香澄ちゃんが熱に浮かされながら何度も呼んだ名前。
寝ぼけながらも名前を呼んでくれる香澄ちゃんに萩原の胸が締め付けられる。ふにゃふにゃと笑う香澄ちゃんの頬を撫でてあげれば、嬉しそうに擦り寄ってきて「おはよぉ」って笑うから「ん、おはよ」って笑って萩原がキスを落とす。
「ふふっ…ふふふ、」って楽しそうに肩を震わせて笑う香澄ちゃんに「なぁに」って萩原が尋ねれば「あさおきて、けんじくんがいるの、うれしい」って目を潤ませながら香澄ちゃんが言うから萩原が目を見開く。
「しあわせ」ってとろりと微笑む香澄ちゃんに萩原の目にも涙が滲んで「おれも、しあわせ」ってもう一度キスをする。ゆっくりと深くなっていく口付けに香澄ちゃんが「っ、きのう、いっぱいしたじゃん…!」って真っ赤な顔で抗議すれば「七年分だよ?あんなので足りる訳ないじゃん」って萩原が笑う。
するりとお腹を撫でられてびくりと香澄ちゃんが体を震わせるから「やだ?」って萩原が首を傾げれば「…ゃ、じゃ、ない…」って香澄ちゃんが呟くから「ははっ、かぁわいい」って笑った萩原が香澄ちゃんの唇に噛み付く。
そのまま二人で寝落ちして、次に目が覚めた時には夕方になってて「…研二くんのせいで、立てない」って香澄ちゃんが不満そうに唇を尖らせる。「香澄ちゃんが可愛すぎるんだもん。ごめんね」って笑いながら頭を撫でれば「んん…」ってなんとも言えない顔で布団の中にもぞもぞ入って行くから可愛くて仕方ない。
同じように布団の中に潜り込んで香澄ちゃんと視線を合わせれば「……なに」って両手で顔を隠すから「ふは、なぁに」って思わず笑っちゃう。「なんで、こっち見るの」って耳まで赤くしてる香澄ちゃんの左手を取って薬指を撫でれば「……ほんとうに、お嫁さんに、してくれるの…?」って香澄ちゃんが不安そうに瞳を揺らす。
「俺は、香澄ちゃんにお嫁さんになって欲しいな」って笑ってこつん、と額を重ねる。「これから先、何があっても、ずっと一緒にいよう。もう、香澄ちゃんがいない世界なんて生きていけないよ、俺」ってくすくす笑った萩原が、ぎゅっと香澄ちゃんの手を握り締めて「俺と、結婚してください。香澄ちゃんの残りの人生、全部俺にちょうだい」って微笑んで香澄ちゃんの左手の薬指にキスを落とす。
「〜〜ッは、い…わたしも、研二くんのお嫁さんになりたい…っ、研二くんの、人生も、心も、体も、ぜんぶちょうだい」ってぽろぽろ泣きながらしがみついて来る香澄ちゃんを抱き締めて「うん、もちろん。全部あげるから、一緒に、幸せになろう」って萩原が泣きじゃくる香澄ちゃんの涙を拭う。
「すき、だいすき…っ、けんじくん、」って名前を呼んで涙を流す香澄ちゃんに「おれもすき、だいすき。香澄ちゃん、あいしてるよ」って萩原も泣きそうになりながら返事をする。
握り締めた手を、もう二度と離さないように。ずっと呼べなかった名前を、この先ずっと呼び続けられるように。また再び巡り会えた奇跡を噛み締めるように、二人の唇が静かに重なった。
「もうほんっとに、可愛くてさぁ。…って聞いてる?陣平ちゃん?」って眉間に皺を寄せて萩原が首を傾げると「あぁ、終わったか?」って松田がスマホから視線を萩原に移す。
「途中までしか聞いてなかったわ」って言う松田のスマホには暇つぶし用にダウンロードしていたパズルゲームの画面が表示されていて「真面目に聞けよ」って萩原が不満そうに唇を尖らす。
「聞いてられっか、あんな砂糖まみれの惚気話。胸焼けするわ」ってうげぇ、と舌を出して嫌そうな顔をする松田だったけれど、心底嬉しそうに香澄ちゃんの話をする萩原の顔を見てふっと表情を緩める。
「でもまあ、良かったんじゃねぇの」って笑ってタバコの煙を吐き出した松田に、萩原が「何が?」って不思議そうな顔で首を傾げる。「ずっと後悔してたろ、あの日のこと」って肩を竦めた松田に「……うん」って萩原が視線を落とす。
どんな理由があったとしても、あの日の香澄ちゃんを置き去りにしたのは間違いなく自分だということを、萩原は嫌という程に分かっていた。後悔して、一度は身を引こうとしたけれど、香澄ちゃんの隣に自分以外の男が並び立つと思ったら耐えられなかった。
だから探して、焦がれて、求めて、ようやく見つけた。「もう、手離すなよ」ってニヤリと悪い顔で笑った松田に「……おう。ありがとな、松田」って萩原が嬉しそうに笑い返した。
「んで、それはそれとして聞いてくんない?香澄ちゃんが可愛いのなんのって」「もういらねぇ」「まだ話し足りない!」「安室サンに聞いてもらえよ面倒くせえ」「俺の親友でしょ!陣平ちゃん!ちょっとくらい聞いてくれてもいいじゃん!」「うるっせぇ!散れ!さっきから全然ちょっとじゃねぇだろうが!」