萩原と一緒にポアロを訪れた香澄ちゃんが「以前お話していた人なんですけど…色々あって、この通り…再会できました。ありがとうございます」って安室にお礼を言ってしまって萩原の目からスッと光が消えるから安室が面倒なことになる、と覚悟を決める。
「そうだったんですね!無事に出会えてよかったです」って香澄ちゃんに笑いかける安室に「お話、ねぇ…?なぁんだ…安室さん、香澄ちゃんの相談に乗っててくれたんだ?」って萩原が笑うから「……えぇ、まぁ」って安室の顔が引き攣る。
「それ、どんな相談だったの?」って萩原が安室に首を傾げると真っ赤な顔をした香澄ちゃんが「わーー!ちがうの、ちがうの…!えっと、その、昔!昔連絡取れなくなっちゃった人を探してるって話しただけなの…!学生の時の好きな人の話とか、そういうのじゃなくて…!……あっ、ちが、」って一人であわあわしてるから、あまりにも可愛くて「はーーー好き」って香澄ちゃんの頭を撫で回す萩原がいる。
香澄ちゃんは意図せず全部話してしまった挙句「俺のこと、ずっと好きでいてくれたんだ?」ってくすくす笑いながら萩原に頬を撫でられるから「……引いた?」って恐る恐る尋ねれば「ん?超嬉しいに決まってんじゃん。ここがポアロじゃなかったらちゅーしてるよ」って言われる。
「〜〜ッばか!」って顔を赤くして萩原の肩をびしびし叩く香澄ちゃんを、萩原が「ははっ、うそうそ。冗談だって」って楽しそうに笑いながら宥める。そんな様子に大丈夫そうかな、と思った安室だったけど香澄ちゃんがお手洗いで席を外した瞬間に「後で、全部吐いてもらうからな」って真剣な顔で言われて「……分かりました」って答えるしかない。
もちろんすぐに安室が『色々あって萩原にバレた。すまん、全員道連れにする』ってメッセージを全員に送るから皆頭を抱えることになる。その数日後、いつものお店にやって来た降谷たちに「まあ座れよ」ってにっこり笑って萩原が言うから、その笑顔の不気味さにぞわぞわ鳥肌が立つ。
「んじゃまぁ……早速なんだけど、降谷ちゃんがあの子からされてた相談って、なに?」って早速話し出した萩原が真顔でこてん、と首を傾げる。
「相談、と言っても雑談の延長だ。学生の頃に好きだった人に、音信不通にされた挙句に約束をすっぽかされて、忘れようと思ったけど忘れられないって話を彼女と梓さんがしていたから、本気で探そうと思った時には協力する、と伝えただけだ。安室が探偵と銘打ってる以上、そう言わない訳にもいかないしな。ただのリップサービスだよ」って険しい顔で事情を説明する降谷に萩原は「ふぅん…」って納得のいってない顔で頷く。
それから視線を松田と伊達に移して「で?松田と伊達は?香澄ちゃん曰く?何度か事件に巻き込まれた時にお世話になってるって言ってたけど?」って首を傾げるから「そのままだっつの」って松田が眉間に皺を寄せる。
伊達も苦笑いをしながら「何度か現場で会ったことがあるくらいだよ」って返すんだけど、萩原はやっぱり納得いってない顔で「へぇ…」って呟く。何とも言えない緊張感の中で「……降谷ちゃんさぁ、」って萩原が静かに声を発してすぅっと目を細める。
「香澄ちゃんからも、俺からも話聞いてて、気付かなかった訳ないよね?」ってにっこりと微笑む。疑問、というよりもほぼ断定に近い口ぶりに降谷が頬をひくりと引き攣らせながら「彼女からは詳しい話を聞いていなかったからな。まさか彼女の言っていた学生時代の好きな人が萩原だなんて思ってもみなかったよ」って返すけれど「ははっ、冗談言うならもっと面白いの用意してよ。全然笑えない」って萩原の目からすんっと光が消えるから降谷が白旗を上げる。
「……悪かった。正直、そうなんじゃないかとは思ってた」って両手を上げて降参のポーズを取った降谷がため息を吐いて「ただ、言わなかったのには理由がある」って萩原をじっと見つめる。
「何?」って首を傾げた萩原に「彼女が、お前に会うことを望んでいなかったから、何も言わなかったんだ」って降谷が言えば、心当たりがあったのか萩原の表情が歪む。
「不確実な情報だったとしても、自分が探している子かもしれないと聞けば、お前は会いに行くと思ったから言わなかったんだ。それで彼女を困らせたり、泣かせたりするのは本末転倒だろ」って最もな降谷の意見に松田たちは心の中で思わず拍手をした。
大っぴらに態度に出して良いのならスタンディングオベーションをしていたところだ。「……その顔だと、香澄ちゃんが俺が探してる子かもしれないって、松田たちも知ってたんだろ」って視線を降谷から松田たちに移した萩原に今更違うとも言えずに全員が頷く。
「お前らの言い分も分かるけど…でも、〜〜ッ、だぁぁあああ!クソッ!やってられっか!」って何か言いたそうに口をぱくぱく開いたり閉じたりさせてからがりがりと頭を搔いてグラスの中身を一気に煽った萩原が息を吐く。
「……わざと俺に言わなかった理由は、分かった」って俯いたまま呟いた萩原がガバリと顔を上げて「けど、ムカつくもんは普通にムカつくだろ。お前ら後で一発ずつ殴らせろ」って眉間に皺を寄せるから、降谷が肩を竦める。
「ったく…一発だけだからな。まあ、黙っていたのは悪かったよ。本当に悪いと思ってる」って困ったような顔で笑った降谷を見て「おいおい、まさかそこまで全部道連れにする気じゃねぇだろうな、ゼロ」って松田が怪訝な顔をすれば「当たり前だろ」って何を言ってるんだお前は、と言わんばかりの不思議そうな顔で降谷が首を傾げる。
「ま、萩原にバレたらこうなるって想像はしてたけどな」って伊達が苦笑いを零す横で「俺に関しては最初から最後までとばっちりじゃん」って諸伏は不満そうに唇を尖らせていた。