悪いのは全部コイツだ

とある事件に巻き込まれて警視庁に呼ばれた香澄ちゃんが「すみません、わざわざ付き合ってもらっちゃって」って眉を下げるから「いえいえ、僕も聴取を取らせて欲しいと言われていたのでお気になさらず」って安室がふわりと微笑む。

そんな二人の元にやって来た松田が「悪いな、わざわざ来てもらって」ってニヤリと笑って安室を見るから「こちらこそ、先日はお世話になりました」って安室もニコリと笑って返す。

そんな二人を交互に見て「…お友達、なんですか…?」って香澄ちゃんが首を傾げるから「あぁ、安室サンとは色んな現場で世話になってるからな。なぁ?安室サン」って松田が笑えば「そうですね。松田さんにはいつもお世話になってますね」って安室も笑う。

それだけの仲には見えないけど、自分が知らないだけで探偵には色んな知り合いがいるんだろうなと納得した香澄ちゃんが「そ、そうなんですね…」ってへにゃりと笑う。

「事件は解決してるし、聴取って言っても形式的なモンだ。すぐに終わるから、悪いがよろしく頼む」って香澄ちゃんに向かって片眉を上げて肩を竦めた松田に「は、はい…!」って香澄ちゃんがぴしりと背筋を伸ばすから安室がくすくす笑う。

「そんなに緊張しなくても大丈夫ですよ」って安室に言われるけど「そ、そんなこと言われても…初めてなんですもん…!」って香澄ちゃんが眉を下げて困った顔をするから「取って食われるわけでも無いですし、もう少し肩の力抜きましょうか。ね?」って安室が香澄ちゃんの肩をぽんと叩く。

後からやって来た佐藤に連れられてよたよたと緊張した足取りで部屋へと向かっていく香澄ちゃんの背中をにこやかに見送る安室に松田が面白いものを見た、とでも言いたげに笑う。

「随分気にかけてんじゃねえか、安室サンよぉ」ってニヤニヤする松田に「そうですか?彼女はポアロの常連さんなので、少しだけ仲が良いってだけですよ」って安室が笑い返して「へぇへぇ、そうっすか。んじゃ、俺らもさくっとやりますか」って頭の後ろで手を組んで歩き出した松田の後ろに続いて安室も歩き出す。

部屋に入るなり「んで?ほんとに常連ってだけなのかよ」ってニヤニヤしながら話しかけてきた松田に安室は盛大にため息を吐いて「お仕事はどうしたんですか、松田さん?」って眉間に皺を寄せれば「あ?んなもん後で適当にやっとくっつの」って松田が何てこと無さそうに言ってのけるから再び安室がため息を吐く。

「本当にそれだけですよ。ただ、他の人が知らない彼女の秘密を、ほんの少し知っているだけです」ってため息と共に吐き出された言葉に「わざわざ匂わせるってことは、俺にも多少関係あるんだろ。その秘密とやらがよ」って松田がふん、と鼻を鳴らすから安室がくすくすと笑い出す。

「さすがですね」って楽しそうに笑った安室が松田に向かって小さく手招きをすれば、きょとんと目を瞬かせた松田が「なんだよ」って面倒そうな顔で腰を上げる。そのまま安室の口元に耳を寄せれば「萩原が探してる女の子が、彼女かもしれないんだ」って安室が言うから「はぁ!?」って思わず大きな声が出る。

「は?それ、どういう…」って驚いた顔をする松田に「かもしれないってだけですよ。まだ確証を得たわけじゃないです。…というか、この先確証が得られる予定も無いんですけどね」って安室が肩を竦めるから松田の眉間にきゅっと皺が寄る。

「どういう意味だよ」って尋ねた松田に、香澄ちゃんとの会話のあらましを安室が説明すれば「……ほぼビンゴじゃねぇか」って松田が怪訝な顔をする。「正直、アレを見ている手前言い出しにくくて」って安室が苦笑いをすれば「まぁ多分っつーか、間違いなくヤベェ気がする」って松田も表情を引き攣らせる。

「彼女自身もそれを望んでいないし、彼も自分で見つけたいと思っているようですから、言わないでおこうと思ったんです」ってにこやかに笑った安室に松田の動きがピタリと止まる。

「…おい待て。言わないことにしておいたモンを何でわざわざ俺に話したんだよ」って松田が安室をぎろりと睨む。嫌な予感がしてジトリと安室を見つめれば、それはもうにこやかに、楽しそうに笑った安室が「そんなの決まってるでしょう。もし彼にこの事がバレた時は、一緒に怒られてもらおうと思って。道連れですよ」って語尾にハートマークでも付きそうなくらい甘い声で、清々しく言い切った安室に松田は頭を抱えた。

その後、聴取が終わって戻って来た香澄ちゃんがすっきりした顔をする安室と、頭を抱える松田のあまりにも対照的な様子にきょとんとした顔で首を傾げる。

「松田さん、大丈夫ですか…?」って恐る恐る尋ねた香澄ちゃんに「いや、アンタは何も気にしなくていい。悪いのは全部コイツだ」って松田が親指で安室を指差してため息を吐くから「あはは、酷いなぁ。人聞き悪いこと言わないでくださいよ、松田さん」って安室が楽しそうに笑う。

その姿に益々首を傾げた香澄ちゃんだったけど「さて、じゃあ帰りましょうか。香澄さん、途中までお送りしますよ」って安室に手を引かれて慌てて歩き出す。慌てて松田の方を振り返ればさっさと帰れと言わんばかりにひらひらと手を振っているから一応ぺこりと頭を下げて香澄ちゃんが安室の背中を追いかける。

「松田さん、大丈夫ですかね」って呟いた香澄ちゃんに「平気ですよ。彼、殺しても死なないので」って安室が笑うから「そ、そうなんですか…」って引き攣った顔で返す香澄ちゃんがいる。
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