気付きたくなかったが???

「えっ…?」って困惑した顔で降谷を見た諸伏の肩にぽん、と手を置いた伊達が「気持ちは分かる」って頷いて、松田が「もれなくお前も道連れだ」って楽しそうに笑って、降谷が「萩原には絶対にバレないように頼む」って真剣な顔で諸伏を見る。

「バレちゃいけないなら知ってる人数は最小限にするべきだろ!?」って最もな意見と共に頭を抱えた諸伏に「だから最小限だろ。俺らだけだ」って松田が言えば「萩原以外全員なんだから最大人数だろ!?」って諸伏が声を荒げる。

「というかゼロもよく気付いたな…」ってため息を吐きながら諸伏が降谷を見れば「気付きたくなかったが???」って眉間に皺を寄せて露骨に嫌そうな顔で返されて「会わせてやりたい気持ちも無くは無いんだがな…」って苦笑いをした伊達に全員が何とも言えない顔で視線を合わせる。

「萩原がアレだからな」って降谷がため息を吐いて「本気で監禁とかしそうで怖ぇんだよ」って松田が眉間に皺を寄せて嫌そうな顔をする。「さ、さすがにそこまでは…」って否定しようとした諸伏だったけど、先日の据わった目の萩原を思い返すと否定しきれなくて「する、かも、しれないな…」ってどんどん声が小さくなる。

「もうあれじゃね。偶然を装ってゼロの店で会わせりゃいいんじゃねえの」って投げやりになって来た松田に「勘弁してくれ。ポアロで男女の泥沼なんか見たくない」って降谷が首を横に振る。

あまりにも真剣すぎる顔に「泥沼って…」って諸伏が苦笑いを零して「まだ泥沼になるとは決まってないだろ」って伊達がフォローを入れるけれど「自ら地雷原に足を突っ込む気は無い。却下」って降谷がばっさりと松田の提案を切り捨てた。

……はずだったのだが、へらりと笑ってポアロに姿を現した萩原を見て安室の手の中のグラスがミシリと音を立てた。「い、いらっしゃいませ」って何とか笑顔を作った安室に「お、アンタが噂の安室サン?ほんとにイケメンじゃん」って萩原が白々しい顔で笑う。

「噂の、ですか?」ってきょとりと目を瞬かせながらも誰の差し金だ、と視線で訴えかければ苦笑いをした萩原が「いや〜知り合いの女の子たちが、ここのランチが絶品だって言うから来てみたんですよ」って言うから「それはそれは…期待に応えられるように頑張りますね」ってにこりと微笑んだ安室が萩原を席へ誘導する。

香澄ちゃんが普段この時間にやって来ることが無いとは言え、イレギュラーは十分に考えられる。頼むから来てくれるなよ、と心の中で念を飛ばしながら安室が萩原のオーダーを受ける。

安室の念が届いたのか、香澄ちゃんがやって来ることは無く「ご馳走様。噂通り店員さんは美男美女でランチも美味しかったよ」ってにこりと笑った萩原が会計を済ませる。

「ありがとうございます。是非、またいらしてくださいね」って笑顔を浮かべながらも二度と来るな、と視線で訴えれば萩原は楽しそうに笑う。「今度は俺の友達も連れてくるね」って笑って店を出て行った萩原を見送ってホッと息を吐いたのも束の間、開いた扉から顔を覗かせた香澄ちゃんに安室は目を見開いた。

「香澄さん!?」って驚いたような顔をする安室に「こ、こんにちは…?」って香澄ちゃんが首を傾げるから「あ、あぁ、すみません。そろそろ香澄さんが来る時間かな、と思っていたら丁度香澄さんが来てくれたので驚いちゃいました」ってにこりと笑って言えば「えぇ…いつも来る時間がバレてるの、ちょっと恥ずかしいですね」って香澄ちゃんが照れたように笑う。

タイミングが良いんだか悪いんだか…と心の中で苦笑いを零しながら、先ほどまで萩原が座っていた席に香澄ちゃんを案内した安室は気付かなかった。

ポアロから遠ざかる萩原の背中を香澄ちゃんがしっかり見ていたことも、席に残った萩原の香水の残り香に香澄ちゃんがほんの少し肩を揺らしたことも、「今日はどうされます?いつものセットにしますか?」って首を傾げた安室に「はい!お願いします」って笑顔で答えた香澄ちゃんが泣きそうに顔を歪めていたことも、安室は気付かなかった。
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