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竜也が目を覚ますと、喉の辺りが痛く、声が出せなかった。
天井は豪華な花の模様が一面に広がり、中華を思わせる美しさだ。
体を動かそうとするも力が入らず、くらりとした目眩に襲われる。
辛うじて動くであろう腕を動かせ、額を触ると物凄く熱かった。
(あ…、マジかぁ…。これ、風邪引いたかも…)
そう思い、先程から体が金縛りのように動かないと思っていたら、姫乃が上半身だけをベッドに乗せて寝ていたのである。
「っ…!?」
白川、そう言葉にしようとするも声に出せず、喉が痛む。
「起きたのか」
突然、声がし、びくりと体を揺らした。
聞いた事のある声に、視線をむければ、昨日風呂場で出会った美青年の姿がそこにあったのである。
「悪かったな…、俺のせいでお前の声帯が傷ついて、今は話す事が出来ない。許してくれとは言わない、俺は間違った事はしてない。けど、怪我をさせた事、それだけはすまなかったな…」
ばつの悪そうな顔で、静かに謝る彼を見て、昨日の記憶が鮮明に蘇る。
あれは入浴中に落ちて来た自分が悪い。
確かに不可抗力だが、立場入れ替えたら恐怖でしかなった。
竜也は声の変わりに、頭を左右に振って、そんな事はないと伝える。
両手を合わせて、こちらこそ申し訳ないとジェスチャーすれば、ギョクレンの目が微かに見開かれた。
「……そうか、なら、良かった。岸部を連れてくる」
そう言ってギョクレンが離れる。
すると姫乃が目を覚まし、飛び起きた。
「黒野くんっ…!?」
たくさん泣いたのだろう。
姫乃の目は真っ赤に充血し、目の周りも腫れていた。
竜也は姫乃に会えた喜びで目に涙を溜める。
そして、姫乃も同時に目を潤ませて、竜也に抱きついた。
二人はしばらく抱き締め合い、現実である事を確かめたのである。
ようやく落ち着き、二人は今までどうしてたのか語り合う。
もちろん竜也は声が出せない為、姫乃の手のひらに文字を書いて伝えた。
そんな二人を覚を呼びに行ったギョクレンとスイレンの目飛び込んで来て、まるで恋人同士のような親密さにそっと来た道を戻る。
今は逢瀬の時間を存分に味わってもらおうと配慮したのだった。
だから双子兄弟は知らない。
この後に行われる白の神子と黒の神子の会話を。
「黒野くん、今までどこにいたの?」
姫乃の言葉に、竜也は炎国での事を全て話した。
もちろん珠里に玩具にされている所から、ギョクレンの入浴中にワープした話も全部。
「っ…、何それ、こんなご褒美…あるの?って言うか、黒野くんの声が直接頭に流れ込んで来るんだけど、何これ!?テレパシー!?」
その言葉に竜也も動揺せずにはいられず、頷くしか出来なかった。
(多分、俺達が神子ってやつだからかもしれない)
「え、じゃあ、何!?もしかして、遠くにいても話せる感じ!?だとしたら、今後、黒野くんと攻達のいちゃいちゃタイムを24時間リアルタイムで聞けるって事!?」
(……え、よくわからないけど、何だろ、これ…)
姫乃が体を震わせ、両手で顔を抑えている。
竜也はその様子に、困惑はするものの、こうして出会えて良かったと心から思うのだった。
(白川…)
竜也が姫乃に感動し、その小さな肩に手を置いた瞬間だった。
「平凡受け最高ー!!!何これ何これ何これ!!黒野くんってそんなに需要あったの!?学校ではノーマークだったよ!こんな美味しい展開になるなら、もっと早くにダイヤの原石見つけられたのに、ワシのアホ!!ここにこんな美味しいエサがあるなんて、トリップ最高ー!!!平凡受けキタコレ!!!」
普段の美しい顔が見事に破顔し、鼻息荒く、興奮する様はとてつもなく恐ろしかった。
そして姫乃の話す言葉全てが竜也には何一つ理解する事が出来ず、ヒロインを見るような目ではなく、得体の知れない生き物を見た時のような目で見たのである。
2024.10.02
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