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こちらは俺、ニセ神子なんですけどの続編。前作をご覧になってから読む事をオススメしてますので、よろしくお願いします。
(あれから何やかんやあって、俺は一人になった。何やかんやって、色々あり過ぎてもうキャパオーバーだけど…。そして、一番重要なのはここがどこかって話…)
竜也がいるのは森林に覆われた山奥。
不気味なカラスの鳴き声と、獣らしきものの雄叫びだけが先程から聞こえて来る。
もちろん人の気配などありはしない。
あるのは背筋が凍る程、恐ろしい獣の存在だけだ。
「おいおいおい…、何だよ、この禍々しい空気と死亡フラグな雰囲気は…」
トリップしてから神社や浴室など、人工的な場所にたまたま来れたから命の保障は出来た。
だが、今はどうだろうか。
人っ子ひとりいない、昼間なのに太陽の日射しが木々に覆われてここまで届かない、そんな場所に竜也はぽつんと置かれていた。
初めてひとりになる恐怖に震え上がり、音を立てないように辺りを見回す。
するとどこを見ても仄暗い森林と、不気味な静けさだけが続いていたのだった。
(あー…、これはもう終わったかもしれない…。白川達もいないし、俺ひとりでワープしたのかもな…)
恐怖を感じながらも一緒にこの世界へ来た姫乃が側にいない事を安堵する。
黙ってれば極上の美人で上品であり、そして口を開けば残念な存在をどこか懐かしく思う。
(やっと会えたばかりだったのにな…)
沈みかける気持ちを押し殺し、竜也はいつまでもこのままここにいる訳にいかないと再び辺りを見回した。
そして少しでも武器になりそうなものはないかと何度も視線を向ければ、折れた枝が所々に散らばっている。
周囲に獣の気配がないかを確認しながら枝を集めた。
そして中でも殺傷能力のありそうな太めの木を選び、獣の雄叫びがしない方へと歩き始めたのだ。
(それにしてもここはどこだ?水国、…それとも炎国?…いや、そのどちらでもないかもしれなちよな…)
ゴクリと唾を飲み込み、いつ襲われてもいいよう身構える。
どのくらい歩いたのだろうか。
足が棒のようになり、感覚すらない。
そして喉はからからになり、目の前が微かに霞んだ。
先程は寒くて堪らなかったが歩けば体が暖まり、太陽の日射しが届かないとは言え、体内にある水分が汗として排出される。
それにより水分が失われ、軽い脱水症状になっているのだろう。
だが歩けど歩けど、森林の風景は変わらず、もしかして同じ所をぐるぐる廻っているのではないかと不安すら感じられた。
獣の雄叫びが大きく聞こえ、竜也の体がびくりと反応する。
数時間前は遠くから聞こえてたものが、近くで聞こえた気がした。
嫌な汗が背中を流れる。
「ガルルルル……」
竜也の背後から聞こえる威嚇した鳴き声に背筋が凍りついた。
気配はおろか、足音や物音もしなかったのにすぐ側にいる事がわかる。
(嘘だろ、嘘だろ、嘘だろっ……!!!?)
竜也は冷汗をダラダラと流しながら固まる。
感じた事のない殺気に包まれ、少しでも動いたら噛み殺される、そう感じた。
なので竜也は指ひとつも動かせず、呼吸するのも忘れる程の恐怖に包まれたのだ。
ひたひたと土を歩く足音が聞こえ、背後でぴたりと止まる。
グルルルと再び鳴き声が聞こえ、恐る恐る振り返った。
すると真っ黒な毛で覆われた獣特有の前脚が見えるが、その太さと大きさに思考回路が停止する。
「っ……!?」
上からは生温く、吐気がする程の血生臭い腐敗臭。
グルルルっと威嚇音と共に吐き出された息の臭いだと気づく。
ガタガタと竜也は震えながら、真上に感じる獣の存在を視界に入れた。
するとそこには熊と呼ばれる種類に似た巨体が竜也を覆うように上から見下ろしていたのだ。
白く尖った牙から溢れる唾液が竜也の顔に垂れる。
生臭く、今にも吐きそうな程の異臭を放っており、竜也はその場で嘔吐した。
熊はそんな竜也を気にも止めず、口を大きく開け、噛み付こうとする。
モワッと近くなる息の臭さに、竜也は自分の死を覚悟した。
走馬灯のように自分のいた世界から、今に至るまでの記憶が脳裏に流れる。
あぁ、もうこれで終わるんだな、と思うと悲しみよりも諦めが混ざった。
覚悟して目を閉じた瞬間、風が勢いよく吹き出す。
それに目を開ければ、熊と自分の間に入る人のような存在。
「……ぇ、…っ?」
竜也は思わず声をあげた。
人間にしてはあまりにも筋肉質でいて、毛並みがある。
「ん…?毛…?」
竜也が声に出してしまうのも仕方ない。
人間の体をしているが、耳と背中に虎のように黄色い毛に黒い線が入っており、尻からは尻尾が伸びていたのだから。
装飾品と言う訳でも何かを被ってる訳でもなく、自然とはえていると言うのが正しいのだろうか。
自分の世界で言うなら、半獣と言うものになるのだろう。
そして何よりも驚いたのが、30cmはあるかと疑問になる程の小ささだった。
そんな子供のようなサイズの者が、熊、もとい、グリスリーと言えばいいのだろうか。
3mはありそうな巨体な獣に立ち向かっているのだから、開いた口が塞がらなかった。
この半獣の子には悪いが、自分を守って死ぬのはよろしくない。
子供を盾にまでして生き残る意味はあるのか。
いや、無い。
竜也の中で先程の恐怖や諦めが消え、この小さき存在を護らねばと言う思いに駆られた。
「ジジィ、力をくれ!!」
そう叫んだ瞬間、半獣の子供と熊が大きく目を見開く。
そして竜也の周りに漆黒の魔法陣が現れ、熊と半獣の間に紫色の光を放った。
熊が断末魔のような叫びを上げ、一瞬にして消滅してしまう。
「……、………え?」
竜也は瞬きを何度も繰り返し、先程までいた巨大な熊の存在を探すがどこにも見当たらない。
「…………!?」
そして半獣の子供が化物を見るような目で竜也を振り返って凝視したのだった。
「……あれ?……もしかして、これ、俺がやったの……?」
間抜けな声を出し、何が起きたかわからない竜也を半獣の子供はあり得ないとばかりに目を大きく見開き、絶句していたのである。
またワープして、新たな国に来てしまった模様。早速、神子の力を使って、ナイト必要ないくらい強い主人公(笑)このままひとりで鬼倒せんじゃね説www
2025.01.06
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