tori


2


※ヒロインサイド。読みたくない方はスルーして下さい。


その頃、水国にある王家の城では大変な騒ぎとなっていた。

「ちょーっと待ってよ!!壁とか破壊し過ぎ!!弟っ、落ち着きなって!!」

姫乃が城のあちこちが穴が開いたり、天井が剥がれてむき出しになった空を見上げたり、高級そうな品々が壊されて無残にも床に転がる様を見て大声をあげる。

「姫乃様、もうこうなったギョクレン様を止められる者は誰もおりません」

覚がまるで悟りを開いたような表情で遠くを見つめる。

「え!?だって、城が半壊してんだけど!?住む所無くなっちゃうし、売れば高値つく物ばっか壊れてるじゃん!勿体無いよ!」

姫乃の言葉は城の心配と言うよりも自分の衣食住に関わるから止めろと言っており、それが彼女らしいなと納得してしまう執事であった。

「その点はご安心下さい。スイレン様達のお住まいは私が知っている限りでも100はくだりませんので、ご心配はいらないかと」

またもや遠い目をして、どんどん壊されていく様を見続ける。
覚にとってみれば、これは軽い兄弟喧嘩だ。

「うーわ…引くわぁ〜。かるーく引くね、それ。王子様はやっぱレベチだわ〜…」

姫乃も覚の様子を見て、これは毎回の光景なんだろうなと納得し、若干呆れ顔をする。

「っ……!!」

ギョクレンは声が出せないものの、表情がもう殺し屋並に恐ろしく、スイレン目掛け蹴る殴る等の攻撃を高速でしている。

「神子様の事は悪かったけど、そこまでブチギレる事?元はと言えば、ギョクレンがいけないんじゃん。神子様に攻撃なんてするから…」

涼しい顔をしてスイレンが魔法を使い絶壁ガードを繰り返す。
2人ともさすがと言えようか。
息ひとつ乱れておらず、目にも止まらぬ速さでギョクレンの攻撃をひたすらスイレンが無効化するを繰り返していた。

「っー!!?」

スイレンの言葉が図星だったのだろう。
ギョクレンの目が青色から赤へと変わる。
殺す、そう声に出さず口だけを動かした。
ギョクレンの声が潰れているので正確には出せないのだが。

「姫乃様、危険ですので今から私がするご無礼をお許し下さい」

覚はさすがにまずいと思ったのか、姫乃を素早く横抱きにし、そのまま遥か上空へと飛び跳ねた。
いきなりの事に声を出す暇もないまま、ギョクレンにより壊された天井の隙間から屋根に移動しているではないか。

「…へ!?」

姫乃は訳がわからず、人間離れした覚の身体能力にもだが、怪力に驚くしかなかった。
こんなに線が細く、決して若いとは言えない覚のどこに自分を抱きかかえ、さらにこんな高い所まで軽々と来れるのだろうか。

「え…、ちょ…?ええぇ!!?岸部さん、カッコイイ…」

姫乃の目がとろんとしており、初めて見る女子らしい反応に覚は戸惑う。
こんな美人が純粋に頰を赤らめ、自分に見惚れている姿は案外悪いものではない等と思ってしまうのだった。
女子らしいと言うのは語弊があるが、この世界に女がいないので比較する対象もないが、今までの姫乃の言動からして、こんな初な反応が出来るなんて逆に新鮮でしかない。

「あー、今すぐ押し倒して抱き潰したい。やーっぱ、岸部さんの処女はワシが貰うわ〜」

姫乃の切れ長の目が細まり、欲望を隠しもせず覚を見上げる。
その雄らしい目つきに覚の胸が一瞬だけときめいたのは秘密にしておこう。

「……私は天涯孤独の身なので、その願いは叶える事は出来ませんね」

覚は不覚にもときめいた事を隠すよう、姫乃から顔を逸らす。

「ワシが一生かけておとすから、覚悟しなよ?覚」

初めて名前で呼ばれ、またしても覚の胸がキュンとしたのは言うまでもない。

「たーっぷり甘やかせてあげる」

覚の耳に吐息をかけ、低く掠れる声で囁く。
何故、女に生まれたのだろうかと思う程に格好良かった。

「神子様が消える前だって、自業自得でしょ?自分が負わせた怪我が自分に返って来て、それで俺に味見されたのがそんなに気に入らない?たったひとりの男も守れない奴に、とやかく言われる筋合いはないね」

イライラしてるのだろうスイレンが初めて攻撃する。
水魔法でギョクレンの周りに龍がぐるぐると体を縛り上げ、動きを止めた。

「っ…!!」

ギョクレンが激怒している理由は2つ。
竜也がこつ然と消えた時にスイレンは側にいながら防げなかった事。
そしてもうひとつは最も許せない行為、王宮ドクターにもかかわらず、手を出した事。
ただ確認するだけで良い筈なのに、わざわざ口淫や前立腺を刺激し、キスする必要はない。
あっさりと白状した片割れに殺意を抱いたのは言うまでもなかった。
竜也に触れて良いのは己だけだ。
それ以外、何者であっても許しはしない。
それが恋心なのか、使命感からなのかわからないが、ギョクレンがスイレンに対し、殺意と共にどす黒い感情抱いたのは事実なのだ。
わざとギョクレンに自分のした行為を伝えるスイレンの腹黒さは相変わらずで、喧嘩吹っかけて楽しんでるのは目に見えていたのだった。


姫乃✕覚いつか書こうと思います。今回は竜也の総受けではなく、他カプありな物語にするつもりなので、やたらと姫乃の出番多めです。あくまでBL小説なので、皆さんに嫌悪感与えないよう色々考えていますので、しばしお待ち下さい。


2025.01.07

- 32 -

*前次#


ページ: