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ギョクレンが竜也の元へ着くと、姫乃が目を真ん丸にして凝視していた。
「……スイレンが二人?…いや、違うか、雰囲気や纏うオーラがあいつ程邪悪じゃない。え、何?目の保養なの?双子??こんな美形が二人いるだと?どーなってんのさ!!ほーんと最高っ!!!」
姫乃とギョクレンは初対面。
ずっと寝てる姿しか見てなかったので、意味不明な言葉を言う姫乃にギョクレンはドン引きである。
寝てる時や先程泣いていた人物と同じには到底思えず、入れ替わったのかと疑うレベルだった。
「女、少し黒野と二人になりたい」
ギョクレンは姫乃が連呼していた名前を覚え、竜也が黒野だと認識し、名前を呼ぶ。
「……いーけど、何をするつもり?傷つけるとかそんなんだったら、ワシが今ここで相手してあげるんだけど?物理的な意味でね」
姫乃はブワッと戦闘態勢になり、スイレンと同じ顔をした男を睨みつける。
本能だろうか、聞いてもないのに竜也を傷つけたのがギョクレンだとわかっている様子だ。
さすが神子だなと変な所でギョクレンは納得したのだった。
(白川…)
「黒野くん、大丈夫!ワシが守ってあげる!黒野くんはヒロインポジだからね!ワシの目の黒い内はどこの馬の骨かわからん奴になん、渡す訳がない!何なら、嫁にしてやろうとまで思っているよ!」
身長差40cmはくだらないのに、ギョクレンの前に立ち、竜也を守るように背中に隠す。
(……嫁?…誰が?誰の?)
竜也は姫乃の言っている言葉に小首を傾げる。
その姿が可愛いのなんのと。
首に巻かれた包帯と綺麗にしたとは言えトリップした時に出来た傷が庇護欲を刺激し、スイレンの趣味だろう赤いチャイニーズ服と綺麗な黒髪黒眼が見る者の目を奪っていく。
「………」
平凡な顔だと思っていた男の姿は美しく、不覚にもギョクレンは一瞬魅入ってしまう。
「黒野くんがワシの嫁」
(俺が白川の嫁!!?)
竜也が衝撃を受け、姫乃を心底あり得ないと言った顔で見た。
姫乃が何か言っていたが、ギョクレンの目には竜也しか入らない。
異国民の黒髪黒眼は珍しく、黒曜石のようだと言い伝えられているのがわかる。
それ程に神秘的な美しさに吸い寄せられた。
そんなギョクレンにいち早く気づいた姫乃は一瞬目を大きく見開く。
「……もう傷つけるような事はしない。これからは俺が守る」
無意識に出た言葉だった。
自分がナイトかどうかを確認する為に来た筈が、いつの間にかミイラ取りがミイラになったかのようにギョクレンの体が勝手に動く。
その言葉に姫乃の目が殺気だっていたものから、ニヤニヤしたものへと変わった。
「え?ちょ、マジ!?守るって、え!!?そう言う事!?え、惚れちゃった訳!!?あ、待ってね、順序あるよ!!急にベッドインとかダメだよ!!黒野くん、あー見えてウブだからさ、ちゃんと言葉にするんだよ!!」
もう姫乃はテンション上がり過ぎて、鼻息が荒い。
フガフガと美人な顔が台無しである。
顔を真っ赤にして、ガッツポーズを決める。
「ちょ、そこの、こっち、来てー」
ギョクレンに向け、屈めと言うよう指でちょいちょいジェスチャーする。
その意図がわかったのか、40cmも小さい姫乃に合わせるよう、ギョクレンが耳を近づけた。
(ん…?何だ?……喧嘩、では無さそうだけど…)
竜也は二人の様子を伺うが、何やら内緒話をしているようだ。
姫乃に合わせて、ギョクレンが耳を傾ける様は絵になる程にお似合いである。
先程、自分の事を守ると言っていたが、姫乃を守るべきだろう。
何故、姫乃ではなく、自分なのだろうか。
少し考え、そして気づく。
(……そうか、この傷を気にして…)
竜也が自らの首に触れれば、ギョクレンが何を考えてるかわからない目で凝視する。
浴室での目つきとは違い、全く殺意がない。
その事に小さく息をついた。
「じゃー、ちょーっとだけ黒野くん貸してあげる。ワシの言った事を守るならの話だけとね、えー…と?」
姫乃はギョクレンの名前がわからないのだろう。
首を傾げ、うーん、と考える。
「その約束は守る…。俺はギョクレンだ」
「そそ、ギョクレン。頭の回転が早くて、助かるわー。じゃー、黒野くん、頑張って」
語尾が何故かハートマークついてるように感じるのは何故だろう。
二人の間でどんな話をしていたのかわからないが、少なくとも竜也は声を出す事が出来ないので、その会話に参加する事が出来ないのは事実だった。
2024.10.12
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