tori


19


※流血シーンあり。苦手な方はスルーして下さい。


手首を掴まれ、腰に廻る筋肉質な腕。
竜也は自分がギョクレンに支えられながら口付けしている事に気付く。

「っ!!?」

触れた唇の感触は薄く、柔らかく、またしても男にしてやられたと心の中で思うのだった。
ぶわりとギョクレンの体に紫色をした光りがともった瞬間、まるで二人は弾かれるように離れる。

「ぐっ…!?」

ギョクレンから苦しそうな声が聞こえたと思い、竜也はそちらに目を向けた。
すると唇から血を吐き出し、首から血が噴き出したのである。
その血飛沫を浴び、竜也は立ち上がりかけた脚に力が入らずぺたりと床に座り込んだ。

(っ…、何が起きたんだ!?皇子様の時はこんな風にならなかった!!何で!?)

ギョクレンがうずくまり口元を手で覆う。
溢れたのが血だとわかり、驚愕の表情をするのがわかる。
そして首を鋭利な刃物で切られたような激痛。
触れば血が噴き出した後なのか、どくどくと流れていく。

「な、んで…!?だってこんな…!!」

竜也の声がし、ギョクレンがはっとしたように立ち上がった。
ダラダラ流れ出る血に、竜也の顔が蒼白になっていく。

(声、出せるようになったんだな…)

そう竜也の脳内にギョクレンの声が響いた。
何が起きたのかわからず、辺りを見回す。
ギョクレンの他に誰かいるのかと思ったが、自分達以外誰の姿もない。

「……は?え…、何…!!?」

竜也は気づいていない。
自分の声が出せる事にも傷口が傷まない事ににも。

(黒野、俺だ。ギョクレンだ。)

その言葉に目の前のギョクレンを見れば、竜也の近くまで来たのだろう。
口から血を流し、首から胸にかけて血だらけである。

「っ、おいっ!!これ!?どうなってんだよ!?何でこんなっ…!!」

竜也は意味がわからず、自分のチャイニーズ服のスカートでギョクレンの首元を止血した。
溢れたであろう血を手で拭ってやり、何処が怪我したのか見つけようとするが外傷は見られない。
そうなると傷があるのは咥内であると判断する。

(大丈夫だ…、慌てるな。これは多分、お前の傷を肩代わりしてる。黒野、傷口を見せろ)

そう言われ、慌てて包帯を取ろうとするがギョクレンの血で真っ赤に染まっていくばかりである。
そんな状況で冷静になれる筈もなく、竜也は可哀想な程に顔を真っ青にして、体をガタガタを震わせたのだった。

「ぁ…、っ…嘘…」

自らの声が戻っている。
あんなに痛くて話せなかったのに、掠れてはいるが自分の声が聞こえたのだ。

(心配するな、俺は鍛えている…。これくらいでどうにかなる訳がない。…だから、気にする必要はない)

ふっとギョクレンの鋭かった瞳が優しく細まるのがわかった。
竜也を安心させようとしているのも。
だが、自分の時よりも非じゃない量の出血に竜也の目から涙が溢れた。
それを見て、ギョクレンが固まる。

(……。……お前を殺そうとし、傷つけた人間を労ってくれるのか?そんな心配する必要はない。俺の自業自得だ。だから、泣かないでくれ…)

ギョクレンは竜也の涙を指で拭い、包帯をとる。
するとそこには傷が何一つなかった。
まるで最初から怪我をしてなかったかのように。

(あぁ、そうか。…良かった。これでお前は治ったんだな。…良かった)

そう声が聞こえた瞬間、ギョクレンの体が傾いた。
床に倒れる寸前で竜也が抱きとめ、大事に至らず。
白い顔をして、すまない、そう一言告げ、ギョクレンは気を失ったのだった。

「っ!!?おい!!なぁっ、おいって!!」

竜也が必死に呼びかけるもギョクレンはぴくりともしない。

「誰かいないのか!!白川っ!白川!!!」

姫乃の名前を必死に呼び、その声があまりにも緊迫していた為、スイレンと覚が慌てて飛んで来た。
そして竜也達の状態を見て絶句するのである。
血だらけの二人。
そして竜也のスリットがめくれ上がり、悩まし気な脚がこれでもかと出ており、その場でスイレンと覚が思った事は同じものだった。
無理矢理犯されそうになり、抵抗した故の事件だと。
愚弟のした事に顔を真っ青にし、竜也の元にかけよりしゃがみ込む。
そして謝罪しようとした時に、竜也が泣きながら訴えて来たのだった。

「っ…、俺のせいで…!!ギョクレンさんがっ!!」

そう言って泣きじゃくる少年に、緊迫した空気の中、不謹慎にも美しいと感じてしまう。
黒曜石のような綺麗な瞳から溢れるダイヤモンドのような雫、目元を赤らめ、眉毛を下げて必死にしがみつきながら救いを求める姿に、思わず吸い寄せられた。
スリットからあられもなく晒される白く細い脚。
サラサラと揺れる黒い髪。
そのどれもが綺麗で、時間を忘れる程だった。

「スイレン様」

覚の声で我に返り、スイレンは小さく息を吐き出し、目を一瞬閉じる。

「神子様、大丈夫だよ。俺の弟はこれくらじゃ何ともないさ」

いつものスイレンに戻り、覚もほっと胸を撫で下ろした。

「岸部、ドクター呼んで」
「仰せのままに」

覚が部屋から出て行き、竜也が心配そうにギョクレンを見つめる。
その体は未だに震えていた。
そんな姿ですら、健気でいじらしく、スイレンの心がとくりと音を立てる。
心の中で何度も可愛いを連発し、いつもの余裕そうな笑みを浮かべ、竜也を安心させ、ギョクレンの止血を行った。


双子、好み一緒。


ギョクレンだけでなく、スイレンまでも竜也に夢中。姫乃めちゃくちゃ美人なのに、女を意識しない世界だから、全くのアウトオブ眼中。それすらも喜んでる姫乃がいそうだよね、何せ傍観するのが趣味だから。


2024.10.14

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