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スイレンに呼ばれ、姫乃とドクターが現れる。
「…え?黒野くん、妊娠してるの!?…は!?相手は誰!?何でよっ!!ワシと出会うまでしょ…」
処女、そう言いかけて、姫乃がぴたりと止まる。
先程までの驚きから、悪さを企む悪代官さながらのニヒルな笑みを浮かべた事を竜也だけは見逃さなかった。
「白川っ!!?」
竜也の声に、姫乃は口元に人差し指を宛て、静かにするよう伝える。
何とおいしい展開なのだろうか。
人として素直な部類に入る竜也の事だから、何だかんだ流されて検査とやらを受けるだろう。
それはきっととてつもなくいかがわしいに決まっている。
竜也がエロい事をされて、あんあん啼く姿を想像し、ある筈のない愚息がこんにちわしてしまうではないか。
堪らん、何だこのご褒美は。
それを見越して、姫乃は気持ち悪い笑みを再び浮かべたのだった。
(黒野くーん、ちょーっと確かめたい事があるから、これから何があっても抵抗しないでねー。これからされる事は今後の未来にものすごーく関わる大切な事だから、抵抗なんかしちゃーダメだよよー)
急に姫乃の声が聞こえて来て、竜也の顔が強張る。
(え、白川…?ちょ、待って!!これなら何が起きるんだよ!?何かさっき、めちゃくちゃ怖い笑顔だったたけど、抵抗するなって、何!!?)
そんな竜也の言葉に答える筈もなく、姫乃は美しい程の微笑みを浮かべた。
こんな場面じゃなければ確実にときめいていただろう。
だが、いかんせん。
これから何が起きるかわからないのに、何故か貞操の危機を感じるのは気のせいだろうか。
綺麗とか可愛いとか見惚れてる場合ではない。
背筋に悪寒しか感じられないのだ。
「スイレン、これは間違いなく妊娠してるかもしれない。あたし神子だからわかる!何か宿ってるかもしれない!!」
突然の姫乃の発言。
この場にいるみんなが凍り付く。
普段はワシ呼びなのに、何故かあたし呼びする姫乃に誰も気づかない。
通常には絶対しない行動が怪しいだなんて、竜也以外は悟りもしなかったのだった。
「姫乃…わかるのかい?」
スイレンはやけに真剣な顔をし、姫乃を振り返る。
竜也が訂正しようと口を開きかければ、姫乃が素早く移動し、竜也の口を自らの手で塞いだ。
しゃべったらどうなるかわかってるよな、と副音声が聞こえて来るのは何故なのだろう。
「黒野くん、心配しないで!!絶対、大丈夫だから!!あたしがついてるから!全部、スイレンに任せて、えっちぃ検査しよう!!」
怪力とはまさに姫乃の事を言うんじゃないだろうか。
骨が軋む程に抱きしめられ、口を塞がれ、心配する素振りをしているが、口元が明らかに笑っている。
えっちぃ検査って何だよ、と突っ込みたかったが声になる事はなかった。
「うん、あたしの中の神様が何か感じるって!だから、スイレン、レッツゴー!!」
スイレンは神子の力や神様などと言われればやはり弱く、疑う理由すら見つからない
かった。
それはそうだろう。
腐っても神子なのだから、信用しない方がおかしい。
(ちょ、白川ぁぁぁ!!!?)
竜也はこれから自分の身に起こる未知数にただ怯えるばりで、何故姫乃がこんなに喜々しているのか皆目検討すらつかなかったのだった。
言える事はひとつ。
絶対楽しんでるだろ、今の状況、だったのだ。
(黒野くん、ちゃーんと考えあるんだって。それともワシがみんなの前で公開プレイされた方が良いかな?えっちぃ事されちゃうワシ、可哀想…ぐすん)
ニコリと微笑み、竜也を見下ろす。
自分がされるのは嫌だ。
かと言って、姫乃が代わりになるのは男としてどうなのだろうか。
そして、そもそも珠里によってつけられたキスマークが原因なのだから、例え姫乃が変わろうが何の意味もないだろう。
エロい事をされるのは決定事項なんだろう。
ここは腹を括るしかないようだ。
(……いや、いい、俺がやるよ。だって、この国の妊娠基準が俺達の世界と違うんだろ?それに皇子様に好き勝手されて抵抗すら満足に出来なかったのは俺の力不足だならな。あー…やっぱムキムキの筋肉欲しい…)
(ご名答。最悪、妊娠とかしてたら、それこそ元の世界に帰れなくなるからさ!男なら、やるっきゃないよねー!ファイトー!!)
姫乃の言ってる事は一理あるのだが、何故だろう。
こんなに気が進まないのは。
そして物凄く胡散臭く感じるのは気のせいだろうか。
「スイレン様以外、皆様はお部屋から退室願います」
ドクターの声に姫乃は若干残念そうに従う。
そして、何故かドクターまでもが部屋から出て行ってしまったのだ。
「……え?医者…」
竜也が唖然とする中、医者とは何の事だろうとスイレンが首を傾げた。
「あ、えっと…ドクターは何で?」
「あぁ、医者ってドクターの事か。俺では不満かな?一応これでも王宮ドクターとしても活躍してるんだけどね。ギョクレンみたいに体術の才能に恵まれなかったから、俺は知識を中心に極めたんだよね」
ふふっと花か咲いたように微笑む姿はとても美しく、つい見惚れてしまう。
「さすがに神聖な神子様の体をドクターとは言え、王族以外の男にに見せる訳にいかないからね」
2024.10.26
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