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✐グエン・ジゼル…炎国第一皇子珠里の直属部下であり将軍。
竜也が目を覚ますと、腕の中にいた姫乃はおらず、ひとり神社の境内に倒れていた。
これだけでもう自分が違う世界に来ている事を悟り、これからどうするかと考え始める。
おそらく、ここは日本である事に変わりないだろう。
景色だけの話なのだが。
「#&$%π§µ!!」
背後から勢い良く響く声。
それは全くもって聞いた事もない言語に、竜也は先程まで日本だと思った自分を悔いる。
言葉こそわからないものの、どうやらキツイ言い方なので歓迎されていない事だけは理解した。
「あ〜…、多分、通じないだろうけど、初めまして?」
竜也は降参ポーズわをし、こちらには全く敵意がない事を伝え、振り向いた。
すると赤髪のやけに長身な美形が銃口を向けて、こちらを睨みつけているではないか。
竜也の身長は決して低くない。
高校男児の170センチともなれば、それなりだろう。
だが、目の前にいる男は竜也の頭分ひとつ抜き出て高く見える。
190センチはくだらないだろう。
男と目が合えば、細められた瞳が大きく見開いた。
竜也に驚いている様子である。
「µ£$%π¢?」
先程とうって変わり、責めるような言い方ではなく、何かを確認するような声色になった。
それでも相手が何を言っているのかわからない竜也は困惑するしか出来ないのだが。
「ごめん、何を言ってるのか本当にわからないんだ」
この繰り返しなのだろうと思い、相手に気づかれないよう小さな溜息がもれた。
「$µ£#&π」
謎の言葉を続けている男に半ば諦めかけ、自分は幽閉されたり、捕虜にされたり、最悪処刑とかもあり得るんだろうなと心の中で思った時だった。
黒い影が出来たかと思えば、男がかなりの至近距離にいる事に驚く。
そして綺麗な顔を近づけて、謎の言葉を囁いた。
「は…?」
肩を掴まれたかと思えば、男の顔が更に近づいて来る。
止める暇もないまま、互いの唇同士が触れ合った。
(……は?え、…キス?)
竜也が困惑する中、触れただけの唇がすぐに離れて行く。
男が目を大きく見開き、信じられないとばかりに瞳が揺れ動くのを間近で見つめた。
「嘘、だろ?……お前、神子、なのか…?」
はっきりとした日本語に、今度は竜也が驚く番だった。
「物凄いパワーが流れてきた…。神子は本来、女の筈なのに…、何で…??」
男が尚も驚愕してる中、竜也は言語が通じてる事に喜びを感じた。
どんな理由かはわからないが、もしかしたらこれが黒野の力なのかもしれない。
祖父の孫だから、神の力により、言葉が通じたのだと大喜びである。
口づけられた事すら忘れ、男の手を勢い良く掴んだ。
「俺、黒野竜也!俺の言葉、通じるか!?わかったら、返事してくれ!」
もう必死だった。
自分よりもゴツくて、鍛えあげられた大きな手をぎゅっと握り、真剣な表情で告げる。
その勢いに押され、男がゆっくりと頷いた。
「やったぁぁ!!!マジか!ジジイ、サンキュー!!!」
イエーイと男の手ごと空高く上げ、大喜びの竜也は気づいていない。
目の前の男の瞳が警戒するものから、恋い焦がれるようなものへと変わる。
「えっと、名前、聞いていい?自己紹介して欲しい」
先程までの殺気がなくなり、命の危険が無いと判断した。
古井戸からの事で最悪な事態しか想定してなかった為に、やっと溜飲が下がったと言うべきなのだろう。
「私は炎国第一皇子珠里様直属の部下であり、第一将軍のグエン・ジゼルだ。」
そう言って、地面に片膝をつき、大きくお辞儀をする。
急な動きと、礼儀正しさに、竜也はぎょっとして後退った。
「…え、…ちょっと…何、急に…」
まるで目上の者へするような挨拶に、居たたまれずニ、三歩だがよろけてしまう。
その体を支える為に、ジゼルが竜也の腰に腕を回せば二人の距離がゼロとなり密着した。
がっしりとした鍛え上げられた腕や胸板の感触が竜也に伝わり、さすが将軍だなと納得してしまう。
「っ!神子様、申し訳ありません…!」
先程の言葉遣いと違い、丁寧な話し方へと変わるジゼルに、竜也の頭にハテナマークが浮かぶ。
しかも神子と自分の事を言っているのも驚きなのに、様付けだ。
「あの、さ…神子様って、俺の事だよな?そして、敬語?みたいなの使ってるのもそれに関係してたりする?」
おずおずと竜也が聞けば、ジゼルはハッとしたように竜也の体から離れる。
耳を赤らめ、何度も謝罪してくるが、竜也の質問には全く答えてくれない。
(多分だけど、さっき男が神子ってあり得ない的な発言してたし、キスしてから言葉が通じてる事から考えると…異世界に来たプラス、神子と間違えられてるプラス、ここでのキスは挨拶と同じって事か…)
ふむ、と竜也が考え混んでいる姿をジゼルは瞬きせずに見つめた。
古より聞いていた神子が現実に存在した、それたけでジゼルの心は酷く弾んだ。
ずっとずっと恋い焦がれていた存在、まさかの男だったが、聞いていた通り、黒髪の黒い瞳を持つ神聖なまでの出で立ちだった。
ほうっと見惚れてしまう程に神々しい姿に、ジゼルの目がうっとりとしたものに変わる。
「神子様、我が皇子珠里様の元へ行きましょう」
ジゼルの言葉に従う以外、竜也には選択肢がなかったので、ここにいて変な輩に殺されるよりはマシだろうと腹を括り着いて行く事に決めたのだった。
世界線ないまま、ゆるっと気長にやっていこうと思います。和、中、中心なのかなと思いきや、管理人歴史とか全く詳しくないので、武将とかそう言うのはちょっと…無知ですみません。なんとなく、別空間あるくらいの認識でお願いします。
2024.09.17
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