tori


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覚の部屋の前に来た姫乃は、興奮する気持ちを必死に抑える。
あの覚を物理的な意味で自分の思うまま、好きに出来るなんて夢のようだ。
女の体ではテクニックでしか満足させてあげられないだろうから、長期線でいくつもりだった。
だかそれも杞憂に終わり、遠慮する必要がなくなったのだ。
この国のやり方通りなら、すぐにでも手を出し、ぐずぐずになるまで甘やかしてやろうではないか。
今から実に楽しみである。

「はー…、やっべぇー。完全勃起したわー。男の体って正直ー。やっぱこれだよねぇー。」

ぐんとテントを張る姫乃の息子。
どくどくと中心に熱が集まっているのがわかる。
男の体は正直で良い。
こんなにも何かが欲しいと欲求したのは初めてではないだろうか。

「たっまんねぇー」

早く喰らいたい。
あの少しだけ年老いた済ました顔を快楽に歪ませたら、どれ程気持ち良いのだろうか。
自分の事など後回しにし、主人の為だけに尽くす存在。
べらぼうに甘やかして、自分を1番にして欲しいと言わせてやろうではないか。

「可愛いだろーなー。ほーんと、黒野くんには悪いけど、この世界さいこー!!」

目を光らせ、舌なめずりをする。
その何とも言いようのない色気はかつて本当に女子だったのかと疑いたくなるような程に、雄々しい。
姫乃が覚の部屋のドアに手をかけた瞬間、空気がかわった。

「!?」

はっとして姫乃が身を屈めればビュンと風を切る音と共に自らの髪の毛がはらりと床に落ちる。
どうやら何かにより切り離された様子だ。
来る途中に鋭利な刃物など無かった為、風などにより家具などが倒れたとは思えない。
だとすれば、その正体は何なのだろうか。

「俺の従者に、何の用かな?」

にっこりと微笑みを浮かべ、魔法で作った水の剣を持ったスイレンが背後に立っていた。
水色に輝き、電子音にも似た音を放っている。
ヴィンとやけに耳に残るそれに、姫乃の顔が引きつった。
やはり腐っても第一皇子。
スイレンの気配に全く気づかなかったのである。

「きみは誰かな?」

笑っているのに目の瞳孔が開いており、殺気がびりびりと伝わる。
指先ひとつでも動かしたら、あの摩訶不思議な水の剣で真っ二つになりそうな勢いだ。

「もう一度、聞くよ?何しにここへきたの?」

温度のない声。
美しい程に整った顔。
一瞬のスキすら与えない身のこなし。
城を半壊するだけの実力者だ。

「……あっぶなー!!殺される所だったじゃん!!ちょっと気をつけてよね!!何、その物騒なもの!!早くしまいなさいよ!!」

姫乃は慌てたように自らの髪の毛を確認しながら、禿げてない事を安堵する。
気配すらなく突然襲うのはどうかと思うと説教をし始め、スイレンを見上げて激怒した。
初めて見る顔なのにオカマ口調と、この変わった話し方。
気が抜ける程の緊張感の無いアホ面。
スイレンは瞳孔を開いたまま、男に性転換した姫乃をじーっと見つめた。

「ちょ、悪かったってー!!あわよくば覚の寝込み襲って、にゃんにゃん啼かせて、バージン貰おうとした事は謝るけど、未遂じゃーん!!まだ触ってもないのに、そんな怒んないでよー…」

この独特の喋り方と切れ長の目に見覚えがある。
アホ面ではあるが、目をひく程の美しさなのだ。
スイレンは魔法を解除し、男に性転換した姫乃を見下ろした。

「きみ、………姫乃?」

先程までの殺気じみた空気は成りを潜め、きょとんとした顔でスイレンが小首を傾げた。
美人のそんな顔ですら絵になるのだから、目の保養である。

「……あ!そーゆー事ね!!ワシが誰かわからなかったのか!!刺客じゃないよ!?ワシ姫乃!!白ミミズが男にしてくれたんだよね!たくさん突っ込んで啼かせていいって言うから、ワシの嫁から娶りに来たって話ー」

素早く立ち上がれば、スイレンより身長は少し低いものの、元々の顔が綺麗だった為、男になっても見惚れる程の美男子である。
スイレンと並んでも引けを感じない程の美しさと格好良さだった。

「白ミミズって何?」

姫乃の相変わらず意味のわからない言葉に疑問を持ちつつ、何かの式神でも従えたのだろうかと問いかける。

「え、白ミミズはほら、いたじゃん。伝説のりゅーじんさま」

その言葉にスイレンが目を大きく見開き、驚愕の表情を浮かべ固まったのだった。


2025.04.08

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