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(りゅーじんさまって…、え!?まさか…)
どんどんスイレンの顔がおかしなものへと変化していく。
それを姫乃はほー、とか、へー、とか言って、そんな顔も出来るんだ、と爆笑しながら見ていた。
「…は?姫乃、ちょっと龍神様を白ミミズって呼んでるの!?お前、失礼にも程があるでしょ!?いい加減にしなよ!」
「呼んでる呼んでるー。だってどう見ても巨大白ミミズじゃん!スイレンは見てないからそう言えるけど、実際会ってみ?ちょーグロいから!何かビラビラしてて、鱗っての?めっちゃデカイし、心無しか生臭い感じしてさ!しかもこの後が重要!白ミミズ、消えるからってワシに力託したー」
にこにこと笑う姫乃に、スイレンの顔が百面相になっていく。
まだ白ミミズまでは驚いたにしろ許せた。
だが、グロい、生臭いとかは人としてどうなのだろうか。
そもそも神様に使うべき言葉ではない。
「失礼にも程があるよ!!龍神様は神聖なるもの!匂いとか、そんなの…え?あるの?匂い、本当にあった?」
まんまと姫乃の言葉に踊らされるスイレン。
確かに自分は見た事も嗅いだ事もないから、わからないだろう。
もしあったとしたら、これは記述しなくてはならない。
「ほーんと、おっもしろー!真面目くんだねぇー」
姫乃が腹を抱えて笑い始める。
床にのたうち回る勢いだ。
「おい、からかうな!!危うく、本題から離れる所だっただろ!?って言うか、力消えるって何!?託したって…!?」
スイレンのこの慌てようと言ったら実に面白く、姫乃がツボったのは言うまでもなかった。
「ってな訳だから、一刻も早く黒野くん探さないといけないんだわー。長旅になるじゃーん?その前に覚を確実にワシの嫁にしとかないといけないのよー、わかるかなぁ?スイレンとこの従者、ワシにちょーだい」
まるで食べ物頂戴と言わんばかりの軽い口調。
姫乃は確かに白の神子だが、スイレンにとって覚は既に従者を越え大切な家族である。
それを簡単にあげられる訳がない。
しかも覚は物ではないのだ。
あの年齢まで独身を貫いた事から、自分にも言えない過去があるのだろう。
だから、無理に結婚もさせなかったし、恋人を探せとも言わなかった。
「駄目」
にっこりとスイレンが微笑み、即答する。
それを姫乃も同じように微笑んだ。
「あれ?耳おかしくなったかな?ワシ神子なんだけど、何でも言う事聞いてくれる感じなんだよね?スイレンもう一回言うよー。覚をちょーだい」
スイレンが再び微笑み、首を横に降った。
「だから駄目だって言ってるじゃない。姫乃は耳が遠いのかな?おじいさんになっちゃったのかな?」
「えー、オカマに言われたくないんだけどー。そっちこそ、聞かれた意味が理解出来なくなっちゃっんですかぁー?」
スイレンは女神のような慈悲深い笑みを浮かべ、目を閉じた。
オカマの意味はわからないが、凄く悪い言葉なのはわかる。
「今、何て言ったのかな?」
「オカマ。こっちにはそんな単語ないかー。うーん…何て言えば良いんだろぉ…なよなよしてて、気持ち悪い根性無し、かな?」
2人同時ににっこりと微笑み合う。
互いにこめかみに青筋を立てて。
「ちょっと表、出ようか。あと、男あさりしたいなら、ギョクレンを提供するよ」
双子の片割れを思い出し、差し出した。
「弟かぁ…、ちょーっと若過ぎるんだよね。それにオカマはタイプじゃないから、ごめんねー。あ、スイレンはもっと無理。抱くなら男らしいくてワイルドな人じゃないと勃たないから」
ぴしりと音が鳴る程にスイレンが固まる。
さっきから優しく聞いてあげれば、好き放題言いまくるっているではないか。
「出てけ」
スイレンが小さな声で呟く。
姫乃は聞こえなかったのだろう。
耳を近づけた。
「誰がなよなよしてて気持ち悪いんだよ。お前なんかに好かれても嬉しくもないから、選んでもらわなくてむしろありがとう。だから今すぐ、ここから出ていけ」
スイレンの目がくわっと開き、完全にブチ切れている。
「おー、怖っ!カルシウム足りないんじゃなーい?お姫様の癇癪はこれだから嫌だねぇ…」
呆れたような姫乃に、スイレンの魔法が炸裂したのは言うまでもない。
こうして一夜にして、半壊だった城が全壊したのだった。
2025.04.15
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