tori


12


目が覚めると和風な天井が広がっており、もしかして日本に戻れたのかと思い喜んだのも束の間、似ているけどやはりどことなく違う事に気付き、落胆する。
それでも親しみやすく、懐かしい景色に心が洗われたのは確かだった。

「……」

頭が妙にスッキリする。
体は動かないものの、何故か気分が良かった。
たくさん寝て起きた時の感覚に似ており、声を出そうとして出せない事にはさすがに驚いてしまうがそのうち出せるだろうと軽い気持ちでいられる。
理由なしにとても清々しいのであった。

(すぐには頭が回らないな…。そう言えば何が起きたんだっけ?)

自身に起きた事を必死に思い出そうとすれば人の気配がし、竜也はそちらに視線を向けた。

「っ…!?」

ネピロードがそこにおり、竜也が目覚めた事に気づき、顔を真っ赤にして、目に涙を浮かべ驚いていた。
獣人だから真っ赤と言うのは語弊があるが、それでも毛の上から赤らんでいるのがわかる程だ。

「……!っ!!」

何かを話そうとするもネピロードは言葉が話せず、あわあわと必死に口を動かすのみ。
竜也はゆっくりと頷き、わかってると言うように優しく微笑んだ。
その思いがネピロードに伝わったのだろう。
竜也の手を取り、ぎゅっと自身の両手で包み込んだ。
そして、部屋の外を指さした。

「…ニロって人を呼びに…行って来る、…で合ってるか…?」

ようやくの声を発する事が出来て、安心する。
何となく雰囲気を察知し、確かめるように伝えればネピロードは何度もうんうんと頷いてみせた。

「俺は大丈夫だから、行っておいで…」

まるで弟がいたら、こんなだろうと思いながら声をかければ、ネピロードが嬉しそうに笑って何度も頷いた。
言葉を話せないのに理解してくれた、その事が何より嬉しかったのだろう。
バタバタと部屋から出て行く後ろ姿は、どことなく弾んでいるように思えた。
周囲を見渡し、ここが地下楼でない事を再確認し、安堵する。
温かな布団、ごわごわしてるけど清潔そうなシーツの感触。
腕には包帯が巻いており、注射針だろうか。
それが刺さっている。
そしてこの世界にも点滴と言うものがあるんだなと思い、体が妙にすっきりしているのも頷けたのだった。

「神子様っ!!?」

ふすまが急に開いたと思えば、聞いた事のある声に竜也は目を見張る。

「よくぞ、ご無事で…!」

慌てて駆け寄って来たかと思えば、ぎゅっと抱きしめられた。
顔にかかる真紅を連想させる程の綺麗な赤髪と筋肉痛で鍛え抜かれた小麦色をした肌。
この特徴的な人物をひとりしか知らない。

「え…!?もしかして、……ジゼルさん!?」

竜也が驚き、大声をあげる。

「はい!珠里様の直属の部下であり、第一将軍のグエン・ジゼルであります!こうして、また神子様に出会えた事、とても感謝してます!」

凄い正式なまでの肩書をハキハキ話し、相変わらず神子と言う存在を崇拝しているなと感心すらしてしまった。

「……?あれ?…何か前の時と服装違う?」

以前会った時は、将軍だとひと目みてわかる程に鎧やら剣などを所持していたのに、今回は外出着にしては少々薄着な着物だった。
しかも胸元は大きく開き、腹が見える程の位置で帯を巻いており、見事なまでのシックスパックがこんにちはしているではないか。
心無しか色気と言うのだろうか、ムンムンして見えたような気がしてならなかった。

「…あ、はい。…その、とても伝えにくいのですが、調査班を引き連れていた所、…奇襲に合い、捕虜…いえ、負傷し、……この楼で匿ってもらってます」
「襲われたのか!?他の人達は大丈夫?」

竜也も襲われた身だからこそ、同じ境遇の元でとても心配になるのだった。


2025.04.24

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