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「あのさー、ワシは覚と一緒に黒野くんを探しに行くって言ったんだけどー?なーんであんた達2人なんかと行かにゃ、ならんのよー!!何、これ?お通夜?お通夜なんですかぁー?まーったく、辛気臭くて、やってらんないつーの!!」
馬車の荷台にふんぞり返り、姫乃が不満を隠しもせずにスイレンとギョクレンを睨みつける。
あまりのふてぶてしさに呆れるしかない。
「ちょっと何か言いなよねー?さっきからずっとワシひとりで喋ってんじゃん!!あー!!!ヤダヤダ!!覚のケツ揉みてぇぇ!!!」
「さっきから黙ってればうるさいよ。だから、覚は渡さないって言ってるでしょ」
「何だよ、やっと喋ったかと思えばライバル宣言!?やらねぇーよ、やらねぇーからな!!!」
姫乃はクワッと目を大きく見開き、スイレンを威嚇する。
「それはこっちの台詞だから。覚を置いて来て、本当良かった」
「あぁ、そーですか!!覚を嫁にする前に、この糞ジジイを始末しないといけないって訳ね?上等じゃないの!!」
姫乃は中指立ててから、指を変え、親指で首を切るようにしてから下に向けてジェスチャーで殺すと伝えれば、スイレンのこめかみがぴくりと動いた。
「へぇ…?良い度胸じゃないの。後でたっぷりいたぶってあげるから、覚悟…すんだね」
ふふっと絶対零度な微笑みを浮かべ、姫乃がしたようにスイレンも指で殺すとジェスチャーする。
普段は見せない態度に、ここに覚がいたらさぞかし慌てたであろう。
スイレンがここまで本性を現すのは誠に珍しかった。
相当気が合わないのだろう。
いや、むしろ合うのか。
それくらい珍しい事に、ギョクレンは静かに傍観していたのだった。
「……」
ギョクレンは声が出せないので、姫乃を睨みつけるだけで終わる。
こんな調子で竜也にまで手を出されたら、堪ったものじゃない。
この女、いや、男の性質などあってはないようなもの。
何をしでかすわかったものじゃなかった。
そもそも女から男になったってだけで怪しい。
龍神がどんな意図でこうしたのかはわからないが、ギョクレンからしたらスイレン以上に厄介な相手だろう。
何故ならば、竜也が唯一心を許してるのはこの得体の知れない存在だけだからだ。
前からおかしな奴であったが、やはり侮れないと改めて認識するのだった。
「黒野くんの気配っての?こっちにあるんだよねぇー」
先程からずっと、姫乃の指さす方向に馬を走らせて進んでいた。
普段だったら、こんな行き先も行く宛もない旅など絶対にしないだろう。
だが、黒の神子が消えた今、藁にも縋る思いで姫乃の言葉だけを頼りに進む他なかった。
「ギョクレンはわかってると思うけど、ここから先は獣人の国だから、くれぐれも気をつけてね。人間を見たら、奴隷として一生飼われなきゃならない、危険な場所なんだ」
「………」
スイレンの言葉に、ギョクレンの瞳が鋭くなる。
もし、姫乃が言うように竜也がここにいるのだとしたら、もう奴等の餌食になっているかもしれない。
そう思うだけで胸糞悪く、怒りがこみ上げてくる。
「奴隷って、あの奴隷?」
姫乃がきょとんと驚き、不思議そうに聞き返す。
「あのって言うのが、君の世界のものかはわからないけど、主従関係とでも言うのかな?奴隷と言っても純粋なのから、性的なのまでたくさんあるんだけどね」
「へー…人間が獣人の下僕になる時代が来たって感じなのかぁー。無理矢理とか、そーゆーのはBL漫画の世界だけよね。実際やっちゃいけないわー」
興醒めとばかりに嫌そうな顔をする姫乃。
「だからこそ、姫乃にも危険がある事、肝に命じといてね。捕まったらアウト」
「りょーかい」
適当な返事をしているが、正直、姫乃は焦っていた。
竜也から発せられる信号が危ういのだ。
何がと聞かれたら、何と伝えたら良いのかわからないが、最悪な事を想像するとしたら、既に捕まってる可能性が高いと言う事。
(獣人とか好きだったけど、それは物語の中だけの世界よねー。さすがに異種姦?いや、獣姦とか、あり得ないわ…。モブ×平凡推ししてたけど、現実になると無惨で可哀想になるつーの…)
ちっと舌打ちし、真剣な表情の姫乃に、スイレンとギョクレンは危機感を覚える。
口では気にしてない素振りをしていても、実際は竜也をとても心配しているのを知っている為、本格的に危ない状況かもしれない、と。
2人は冷や汗をかき、その後沈黙するのだった。
本格的に神子とナイトの旅が始まって、各々4人のナイトを探しつつ、竜也を救うんだけど、しれっと軽い気持ちで連載始めたもんだから、鬼とかどうしよって思ってます(笑)本当、いい加減過ぎて泣く。
2025.04.19
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