14
竜也の方に顔を向け、ジゼルは悔しそうに瞳を揺らす。
知られてしまったからにはもう隠しようがない。
そう思い、息が詰まる思いで覚悟を決めたのだった。
「……私も色々と試しましたが、その都度…逃げては捕まりを繰り返し、断念せざる得なかったです。一刻も早く珠里様の元に帰るには命令に従うしか、道はありませんでした。神子様…ご安心下さい。神子様は私が必ず、お守りします」
そう言って優しく抱きしめる。
その弱々しさに、ジゼルの方が守られなきゃならないんじゃないかと思う。
体もだが、精神の方が何より心配だった。
こんなに男らしい人が男を受け入れるなんて。
けど、竜也は気づいていなかった。
この世界は男しかいないのだから、それがごく当たり前だと言う事に。
「ジゼルがこの少年を買うって事か?それをすればまたここを出る金が減るが良いのか?それに彼は人気が出る。こちらもこんな小さな相手を商売として働かせるんだ。それ相当の金を用意させてやれるが?」
「っ…!俺の事なんで、どうでもいいんだ!今は神子様の身の安全が1番だろ!」
ジゼルにとって神子とは神聖なもの。
そんな方に身売りなどさせられる訳がなかった。
そして、ニロは勘違いしていた。
まだ竜也が子供であり、成人を迎えていないと思い込んでいたのだ。
そんな事も知らず、体が小さいとだけで価値がつくのだろうと竜也はどこか他人事に思っていたのである。
竜也はそこまでしなくても良いのにと、ジゼルを優しく抱きしめた。
「ジゼルさん、俺は大丈夫。龍神様から言われてるんだ、ひとりでも多くの男にって…。それがこの世界を守る為の手段なら、俺がやるしか…ないよね」
「っ、…そんな…っ!?」
ひとりでも多くの男にこの体を許すと言うのか。
そう思うだけで悔しくて堪らない。
神子に触れて良いのは己だけだ。
その清らかな体を他の男が堪能するなど許せない。
それならば、自分が1番最初に。
そう思った瞬間、ジゼルが驚愕の表情を浮かべたのだった。
(俺は何を思った…?神子様を誰にも触らせたくない、そんな風に…思ったのか!?)
ジゼル自身、気づいていないのだろう。
初めて会った時から、神子と言う存在に恋焦がれていた事を。
それが今回再会し、竜也自身に触れ、彼を知る事で気持ちが更に加速していった事にも。
「客、取ります。俺にはやらなければならない事があるんです」
竜也は知らない。
ジゼルも竜也同様に抱かれるのだと思い込み、辺な正義感が生まれていた事に。
彼が抱く側だと知った時の衝撃はをまだ先の話である。
「俺は早くナイトを見つけて。ジゼルさんは皇子様の元に帰る。よし、じゃあ、俺は何からしたら良いの?」
こんなに小さな体で全てを背負い、何て男らしいのだろうか。
ジゼルが本当の意味で竜也に落ちた瞬間だった。
「そう言うの、嫌いじゃないよ」
ニロがにこっと初めて微笑んだ。
その破壊力と言ったら、物凄く美しいものである。
中性的だと言われる猫族の獣人。
彼もまた、ここに来るまでには大変な苦労があったのだろう。
「……ニロ、神子様の初めては俺が買う」
そう言って竜也を見つめ、真剣な表情で告げる。
「金さえ払ってくれれば、文句はない。好きにすると良い」
「神子様の処女は私のものです」
竜也に触れるだけの口付けを落とす。
「っ…ジゼル、さん…?」
キスの合間に竜也が名前を呼べば、にこっと微笑まれ、再び唇を塞がれる。
そんな2人をニロが呆れながら見て、ネピロードは手のひらで目を隠すようにしてぎゅっと目を閉じたのだった。
2025.05.03
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