tori


〇〇しないと出られない部屋


※姫乃×竜也、ノーマルっぽいけど心は男のようなものなので、苦手な方はスルーして下さい。
俺、ニセ神子なんですけどの日常ひとコマ。時間軸はめちゃくちゃ、ちなみに姫乃まだ女の子バージョン。


「………ん?」
「……え?」

上から姫乃、竜也の順で真っ白な部屋にいきなりワープ。
そこまでは竜也にはよくある事だから良かった。
問題はこの後である。
何故か姫乃の膝の上に竜也が乗っており、所謂お姫様抱っこだ。

「…え?……はぁあぁぁ!!?」

竜也が驚くのも無理もない。
姫乃がされる側ではなく、竜也がお姫様抱っこされており、見事におさまっているからだ。

「おー、誰かと思ったら黒野くんじゃーん!」

対して気にも止めていない姫乃は普段通りに竜也の名前を呼ぶ。
この異常なまでの空間と体勢に戸惑う事なく笑顔とはさすがである。

「えぇ…、もっと他にリアクションないのかよ…」
「ないない。役得、役得ぅー!」

ちょこんと姫乃に抱かれたまま、呆れ顔の竜也。
この反応が通常だろう。

「いやぁー、今をときめくDK男子高生を抱っこ出来るとか、棚ぼたしかないんだけどー!黒野くん、身長のわりに軽くなーい?ちゃんと食べてるー?」

ひょいっと持ち上げられ、体が浮く。
スレンダーで決して筋肉がついているとは思えない姫乃の腕力に、すんなり浮き上がる体。
竜也は何故か男して大切なものを失ったような感覚に陥ったのだった。

「…あ、うん…。何だろね?…俺、痩せたのかな…?」
「痩せた痩せたー!ストレスなんじゃないの?ちょー心配!」

とても心配してる様子は全くないものの、楽しそうな姫乃に少しだけ安堵するのだった。

(こんな時、いつも通りって凄いよな…。それにしても白川のイメージが崩れてくんだけど…。あの儚げ美人はどこに行った?むしろ俺、助けなくて良かったよね…)

この世界に来る前の古井戸を思い出し、自分は余計な事をしたんじゃないだろうかと思うのだった。
手を伸ばして助けたは良いが、姫乃にとって竜也は必要な存在だったのか、そう問われると素直に答えられない。
姫乃ならば、余裕でこの世界を逞しく生きて行くのは目に見えてわかる。
ただのクラスメイトだった時は高嶺の花で、近寄りがたくて、それでいて守ってあげないといけないとまで思わせる何かがあったのだ。
それも今やただの思い過ごしであると痛感してるのだが。

「傍観のつもりだったけど、ワシが攻めるのもありなのかぁ…」

ぶつぶつと何やら怪しげな言葉を放っているが、竜也は聞かなかった事にする。

「白川、…ここ何処?」
「えー、知らなーい」
「あ、うん…、そっか…」
「そそ、考えても仕方ないっしょ!」

会話終了。

(え!?何これ!?こんなに会話続かないもん!?普通、もっと騒がない!?こんな白い部屋に2人しかいないんだよ!?何処ここ!?とかさ、何でこの体勢とか、あるよね!?)

姫乃が部屋中を見渡すと紙らしきものが落ちているのを発見する。
竜也を乗せている為、手だけを動かしてそれを手に取った。

「ふーん」

紙と竜也の顔を交互に見て、玩具を見つけたと言わんばかりに姫乃は口角を上げる。
紙をくしゃりと握りしめた。

「こうやって見ると、案外可愛いよねぇー。さっきから表情変えちゃってさー、そりゃ弟が夢中になる訳だわ」
「……は?…弟?」

いきなりの発言に訳がわからないが確実に言える事は、ひとつ。
姫乃がとんでもなくどうしようもない事を考えてると言う事だ。
竜也の背中に悪寒が走った。

「暇だからさ、ベロチューしようよ」

竜也は一瞬、何を言われたのかわからず、ぽかんとする。

「この世界来てから、してないから欲求不満なんだよー!減るもんじゃないし、良いよね?」
「いやいやいや、減る減る!!ちょ、待って白川…!!暇だからするとかじゃないんだけど!」

やっと理解したかと思えば、貞操の危機ならぬ、唇の危機。

「いや、百歩譲って女の子とするの嬉しいけど、…何かこれ違う!!絶対この姿勢じゃないし、主導権とか…ちが……っ!」

竜也が否定していれば、顎を固定されて柔らかな感触が。

「………は?」

ちゅっとリップ音を鳴らし、姫乃の唇が離れていく。

「顔、真っ赤。黒野くん、かーわい」

ふふっと笑う姫乃の顔がイケメンに見えるのは気のせいだろうか。
仮にもこんな美少女をつかまえて。

「……べろ、ちゅー…?」

頬に残る柔らかな感触。
姫乃が口付けしたのは頬であり、唇ではなかった。

「したかったけどギョクレンに本気で殺されそうだし、まだ生きてたいからね。それにワシの唇は岸部さんにだけって決めてるから、…ごめんね?」

何故か告白してないのに振られた気分になる。

「あ…うん、大丈夫だよ。…何か、ありがとう?」
「どーいたしまして!!」

カチリと金属音が鳴ると、姫乃が待ってましたと言わんばかりに口笛を吹く。
そして丸めたゴミのようなものを手渡す。

「それ、見てみて」

そう言った瞬間、竜也ごと立ち上がり、扉に向かって歩き出したのだった。

「…えぇえぇぇ!!?」

軽々と抱き上げられ、歩く姫乃に驚いたのは言うまでもない。
そして渡された手紙に書かれていたものは。


お題:体のどこかにキスすれば部屋から出られる。



ゴールデンウィークと言う事で、本編には書けなかった日常を間章と言う形で書いてみました。今後も本編には書けなかったけど、実はこんな事がありました的なのを書いていけたらなと思います。まさかのノーマルカプに嫌悪感ありましたら、申し訳ありません。管理人の中で姫乃はヒロインと言うよりも男と言うくくりなので。


2025.05.04

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