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※流血シーンあるので、苦手な方はスルーして下さい。
血生臭いにおいで竜也の意識が徐々に戻ってくる。
鼻にこびりつくような錆びついた鉄のような刺激に、ぱちりと目を開けた。
すると一面真っ赤な糸のような物に覆われ、一瞬何が起きたのかわからず、朦朧とする意識の中で段々と視界がクリアになっていく。
(何だ…これ…?糸…?)
竜也が目の前の赤色をした糸のような物に触れるが、さらさらとした髪の毛のようにとても柔らかく、その質感に驚きを隠せなかった。
(糸じゃない。…これ、髪の毛だ)
そう確信し、何故自分は大量の髪の毛の中にいるのか。
そして、この血生臭いにおいは何なのか。
段々と自分の置かれている状況を思い出し始めた。
「っ…ジゼルさん…?」
先程まで自分を組み敷いていたジゼルの存在がない事に慌て、辺りを見回す。
だが、全て髪の毛と思われるもので竜也の周りを埋め尽くし、目視では確認する事が出来なかった。
不思議とそれに恐怖はなく、竜也に危害を加える為じゃない事に安堵する。
ほっとしたのも束の間、体の奥から熱がずくりとくすぶってきたのだった。
(っ…あ。……これ、ちょっとヤバいかも…?)
ジゼルにより胸と息子を弄られ、ピンと主張するそれら。
じんじんと甘い疼きが体を支配する。
先程まで弄られていた記憶が一気に蘇ってきた。
竜也は顔を真っ赤にし、両手で顔を覆い尽くす。
穴があったら入りたい。
あんな理性を失い、女の子のように喘ぐ自分が恥ずかしくて仕方なかったのだ。
「っ…」
過ぎた事は仕方ない。
竜也は頭を左右に振って、気を紛らわす。
媚香効果よりも血独特の臭いの方へ意識がもっていかれる為、段々と冷静さを取り戻せてきた。
自分の体を見れば出血部位など一切見当たらない。
なら、この臭いの正体とは。
そこで先程から姿を見せないジゼルが頭に過るのだった。
「ジゼルさん、そこにいるよね?」
竜也が声を出すも返答はない。
シュルシュルっと何かが大量に動き続ける音だけが響き渡る。
「……っ…、ジゼルさん…?」
何度呼びかけても返事なく、竜也は段々と不安にかられてゆく。
血生臭いにおい、ジゼルからの応答なし。
最悪な事態を想像するが自分を落ち着かせる為、目を閉じて深い深呼吸をするのだった。
(ダメだ…、そんな事を考えるな。大丈夫、ジゼルさんは強い。返事がないからって焦るな。単にここにいないかもしれない。それともこの髪の毛で聞こえてないだけかも?)
竜也はジゼルが赤色の髪により、毒で侵され瀕死の重症である事を知らない。
逆にそれが良い事もある。
今の竜也にとっては。
(まずはこれが髪の毛だとしたら、この正体が何なのか確かめないと…だよな。俺だけに見えてる?それとも実在してるのか?それからジゼルさんを探そう)
この世界に来る時に姫乃に巻き付いた無数の手の存在を思い出す。
あれは自分にだけ見えており、逆に琴の音は竜也には聞こえなかった。
それに関係してるかもしれない。
竜也は恐る恐る赤色をした糸に触れる。
上質な艷やかな触り心地に、やはり糸でない事に気づく。
想像した通り、髪の毛のような質感だった。
「……やっぱ…髪、だよな…」
こんな大量の髪がなぜ自分の体を覆うよう、巻き付いているのか。
球体の中にいて、実際には巻き付いてるではなく、囲われているのだが。
中に閉じ込められている竜也はそれを知らない。
触れる度に竜也の指を避けるように髪の毛は左右、または様々な方向へと広がっていく。
感触もあるのに、指の周り、いや竜也の体周りが見えない布で守られているかのような感じるのは気のせいだろうか。
「……殺意や殺気は感じない。俺を殺そうとしてる訳じゃない?なら、何の為に…?」
先程から感じていたが、それらに恐怖心はおろか、殺気がまるでないのだ。
それ所か、竜也を守るように優しく包み込んでいるから不思議である。
髪の毛は意思をもって動いており、優しく竜也の頬に束となって触れてくるではないか。
よく異世界ファンタジーや漫画等で描かれている触手のような動きをしており、一本一本に意思があるように思えた。
「っ…」
するりと頬を撫でては両頬を優しく包まれる。
温度なんてないのに、温かなぬくもりさえ感じるのだからおかしいものだ。
髪の毛が触れる度に、上質な糸のような質感。
それが肌を擦れる度にとても心地良くて堪らない。
まるで宝物に触れるかのような動きに、先程消えかけた熱を思い出させ、何とも言えない気分になった。
「…は…」
竜也は再び頭を振り、煩悩を打ち消すように唇をきゅっと噛み締めた。
そんな事より今はジゼルの安否確認が第一である。
竜也の中で彼は何らかによって声が出せない状況であると過程し、先程よりも強くなる鉄独特の刺激臭に意識がもっていかれた。
これがもしジゼルのものだったら。
一度は振り払い否定した可能性が再び竜也の脳内に浮かび上がったのだった。
2025.07.10
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