tori


3


時は少しだけ遡る。
士騎はベッドの上で仰向けに寝転がっており、ヘッドフォンをつけて音楽を聴いていた。
だがどこか焦った様子を見せ、何度もスマホの画面を確認する。
メッセージを通知するものはなく、舌打ちをしてスマホをベッドに伏せた。

「マジ、どこにいんだよ…」

帰りはいつものように友人と下校するのが日常になっていたが、いくら待っても彼が現れる事はなかった。
別に好きで一緒にいる訳ではない。
そういい訳してるが、士騎は友人の事がとても大切である。
自分の傍に嫌いな人間など寄せ付ける性格でもないし、ましてやつるむくらいならひとりでいた方がマシなタイプで。
一緒にいて居心地が良く、温かくてどこか懐かしいような不思議な感覚と共に、安心感を与えてくれる。
そんな友人の事が大好きなのだ。
ごみ捨て当番だと言ってクラスの女子と一緒に焼却炉へ行く後ろ姿を見送った。
なかなか戻って来なくて、2人が行ったであろう場所まで探しに行ったがもぬけの殻。
そこにはゴミ箱だけが転がっていたのだ。
校内をくまなく探したが目的の人物に会う事は出来なかった。
ラインしても既読にもならず、何かトラブルでも発生したのかと心配で仕方ない。
のらりくらりしてる割には案外几帳面で、面倒見良く、困った人間をほっとけない性格しており、また誰かに巻き込まれてるんじゃないかと危惧する。
未だラインは未読のまま。
こんなに長い間気づかないなんて事、ある筈ない。
やはり何かあったとしか考えられなくて、電話するも連絡はつかなった。
こんな事一度もなかった為に、士騎は柄にもなく狼狽えてしまう。
まだ数時間しか経ってないのに、何かとてつもない事が起こり、引き返せない所まできているんじゃなないだろうか。
物凄く、嫌な予感がしてならなかった。

「……」

もう一度探しに行くかと起き上がった瞬間、今まで晴れていたのに一瞬にして雨が降って来た。
ヘッドフォンをしてても聞こえるくらいだから、余程だろう。
少しだけ耳からはずして雨の音に耳を傾ける。
窓から外を見れば、まるで夜かと思う程に真っ暗な空が広がっており、雷さえも鳴っているではないか。
ザーっと雨の音が室内に響き渡り、窓に叩きつけるような音を放つ。
まさに土砂降りだ。
確かに少しだけ雲行きは怪しかった。
それでも一瞬で天候がこうも変わるものだろうか。
不気味とさえ思わせる空を見て、何とも言えない気持ちになる。
それらを誤魔化す為、再びヘッドフォンをし、明るい音楽に選曲したのだった。
どんどん雷雨は酷くなるばかりで、ひときわ大きな閃光が光った瞬間、太鼓の音がドンっと大きく室内に響き渡る。

「っ!?…な、…っ!太鼓…?」

ヘッドフォンを外し、室内を見渡す。
雨の音以外、他の音はしなかった。
聞き間違いかもしれない。
もしかして気づかない内に自分は少しだけ寝てしまったのか。
そう思った瞬間、大きな落雷の音が辺り一面に響いたのだった。
まるで隕石が落ちたかのような激しい地響きと共に、建物全体が揺れるような感覚。
ベッドの上で姿勢を保つのがやっであった。

「雷か…!?隕石…?」

それ程、衝撃的だった。
青白い光が高校の裏山に落ちて行く様を見て、士騎は驚愕する。

「学校…?」

その瞬間、ドドドドドっと再び太鼓を連打する音と共に部屋の中が光る。
やはり先程のは聞き間違いでも寝ていた訳でもなかった。
確かに聞こえたのだ。
しかも2回も。
太鼓などひとり暮らしのこの家にある筈もなく、引っ越しの際に持って来た記憶すらなかった。
ましてや聴いてる音楽に使われてる訳でもない。
どこから音がするのか、そう気になっているが雷が落ちた場所から目が離せなかった。
やっと地響きがおさまり、体が自由になる。
まるで上から見えない何かで無理矢理抑えつけられていたような感覚に、冷汗が止まらなかった。
こんな経験をしたのは初めてで、思わず士騎は自らの胸元のワイシャツをぎゅっと握りしめる。
こんな大きな衝撃にも関わらず、外の住人達や近所の人達はおろか、街は特に変わった様子が見られない。
あんな出来事があったなら、もっと騒いでも良さそうなのに周囲は突然の雨に建物に隠れるのみ。
まるで落雷があった事すら気にしてないように思えた。

(…雷なんて珍しいもんじゃねぇけど、さすがに変じゃねぇか…)

そこへ目を凝らしていたから背後の気配に全く気づく事が出来なかった。
真っ赤な球体が部屋を埋め尽くし、赤い髪の毛が士騎の方へと伸びていた事に。


間章にて初登場した竜也の現代の友達、ようやく本編で出番になりました。現代にもどったら、絶対クラスメイト、または友達を書き方かったのでようやく叶いました。不良で、ひとり暮らし、オカン気質、一匹狼、竜也の嫁決定ですよね(笑)これからも登場人物が増えるので、またややこしくなるのを承知で書こうとする無謀さ加減を優しい目で見てくれると嬉しいです。


2025.07.29

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