tori


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※残酷を思わせる(人喰い)発言あり。苦手な方はスルーして下さい。


「神子が2人とは意外だったけど…本当に君は予想外な事ばかりするよね。紛い物も昔の君の一部なのかもしれないけど、…僕は要らないかな…」

100年前の記憶が蘇る。
まるで昨日の事のように頭の中で浮かんでは恍惚な表情を浮かべたのだった。

「裏切り者には裁きを与えないといけないからね…」

一瞬、魁人の瞳に黒い炎が宿る。
それだけで辺り一面の温度が急降下した。

「黒野くんの処女を貰わないと…僕にはまだ何の力もないからね…。あぁ、もちろん、力の為に黒野くんが欲しい訳じゃないよ」
「理解しております。魁人様が神子様を心から愛している事を……」
「なら、安心したよ。誤解されたくないからね。今から楽しみだよ…今度の君はどんな風に恥じらい、啼いてくれるのかな?」

作り物のような瞳で、くすくすと微笑む主。
可憐に映るそれは酷く恐ろしかった。
今にも赤鬼自身が喰われるのではないかと思う程に、身の危険を感じる。
常に餓鬼状態である魁人。
まだ力はないとは言え、もし竜也とひとつにでもなり、ナイトを喰らえば世界は滅ぶかもしれない。
赤鬼は背筋が痺れる程の恐怖を感じ、かたかたと震え出した。


「黒野くんとあれ等だけは傷つけてはいけないよ?ここではロミオとジュリエット…だったかな?好きなだけ絆を深めてくれても僕は気にしないよ。最終的に僕の元に返ってくるのだから…」
「承知しました」

赤鬼は目を閉じ、詠唱し始める。
遠くに意識を飛ばし、ゆっくりと確実に彼らを捉えて行くのだった。

「あと、美味しそうな匂いがするけど、それは食べても良いのかな?」

それとは雷国で瀕死な状態で横たわっているジゼルの事である。
赤鬼の目に映る物全てが魁人の脳内に送られていく。

「彼はナイトではありませんが…味見程度に召し上がられますか?」
「……そう、ナイトじゃないのだね。…それは美味しくないからいらないよ。てっきり匂いがそうだったから、ナイトだと思ったのに…残念だね、黒野くんに選んで貰えなかったのかな。やはりあれ等を食べるまでは当分お預けなのだね…」

腹部を優しく撫で、喉の渇きがおさまらず飢餓状態な魁人。
鬼の長である彼が口に出来るのはナイトのみ。
100年前に食べたきり、何も口にしておらず。
飢えがそろそろ限界に来ていたのだった。


2025.07.28

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