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はぁっとスイレンが何と説明しようかと感えていれば、黎椎がなりふり構わずにジゼルの元へと駆け寄った。
「ジゼル将軍…!!?」
黎椎の取り乱すような声と共に、スイレンが予期していた誤解の解きようのない事態に陥っていた。
しかも倒れてる男が将軍だったとは。
驚きと同時にこれは厄介である。
「っ…!こんな……っ!…あなたのような強い御方が…っ」
黎椎はジゼルから溢れる出血を止めようと自らが着ている洋服を脱いで当て布する。
すぐに水分を含み、真っ赤に染まってしまう。
傷口は大して大きくないのに、少しずつ流れる血液が止まらない。
「そこの別嬪さんよぉ…本当の事を答えてくれねぇか?何で俺様の部下がこんな瀕死の重症なんだよ…」
珠里は背中に添えてある大剣を2本同時に引き抜くと、スイレンの顔目掛け先端を突き付けた。
重いだろうそれを簡単に振り、体の重心がブレる事なくピタリと止めるのは困難だろう。
それを簡単にやり遂げる豪腕な筋力に、少しだけ内心焦る。
それもその筈だろう。
完全に珠里はスイレンを犯人とし、返答次第では殺す覚悟が見えるのだ。
そして自分の真横にいる姫乃も気掛かりであった。
何の鍛錬も特殊な訓練も受けてない彼女、いやもう彼なのだが、そのお荷物を守りながらどう攻めていこうかと。
「珠里様っ…出血が止まりません…っ!」
カタカタと黎椎の手が震える。
既にジゼルの血により、真っ赤だった。
「……お前達がやったんだろ」
もう疑問系ではなく、決めつけの言い方だった。
普段の珠里であったなら、すぐに気づけただろう。
こんな数分でジゼルをどうにか出来る筈もなければ、元からここにいた人間ではないスイレンにメリットがないと言う事に。
動揺してないように見えて、黎椎同様に珠里は感情の制御が効かない程に取り乱していた。
「……俺は水属性の魔法しか使えないよ。ましてや隣にいる姫乃に限っては何の力もない。俺達があの一瞬で彼に何か出来る訳がないのくらい…わかっても良いと思うんだけど…」
その言葉に珠里が目を大きく見開き、絶句する。
口が裂けても弟は毒耐性あって、猛毒を操る特異体質ですよ、等と言えやしない。
ギョクレンがやった訳ではないが、少しでも疑わしく思える情報はシャットアウトである。
「貴様ぁぁ!!!珠里様に向かって何だ、その口の聞き方は!!!」
完全にブチギレている黎椎は鞘から長剣を抜き、スイレンに向かって振りかざした。
「偉大なる海の悪魔、我に力を…リヴァイアサン」
姫乃にしか聞こえないくらいの声で詠唱し、水属性最大の魔法、リヴァイアサンを呼び出したのだった。
広がる大海原の中で、巨大な津波と共に現れる青い龍の姿をした海獣。
リヴァイアサンが口を開け、黎椎とジゼルを飲み込んだ。
激しい海流が止まるとキラキラと水面に反射する光がとても美しく、珠里は初めてみるそれらに思考回路が追いつかない。
炎国には魔法と言う概念がない為、初めて見るものに心奪われた。
だが次の瞬間意識が遠のき、海の中へと沈んでいく。
そして、3人は地面に突っ伏して気絶する。
初めて喰らった魔法に、抗う術はなかかった。
この召喚にはひとつの法則がある。
スイレンの意のままに操れると言う事。
即ち、命を奪おうと思えば奪えるし、気絶させたりその場を治める為に使用する事だって出来るのだ。
そして当然の事ながら、出血し、毒を喰らった状態のジゼルに使えばどうなるのか。
スイレンは国家対立を避けたいと思っている為、彼を殺すのではなく生かす方向にしたのだ。
リヴァイアサンは攻撃力も半端ないのだが、ある程度の傷口等は水の癒やしの力により塞ぐ事が出来る。
それも含め、極秘である水属性最大の魔法を使用したのだ。
本来ならば隠しておいた方が良い。
スイレンの力を悪用したり、スイレンを我がものにしようと企む者が増えるからだ。
けど、仲間思いで情に熱い珠里やその部下ならば、その心配はないだろうと至った。
(……これで少しは恩を着せる事が出来るかもしれない。この先、こちらが有利になった方が何かと便利だ)
語彙力がないので、凄く綺麗で勇ましいリヴァイアサンの素晴らしさが伝わらない(笑)悲しい…!召喚とか格好良いよなぁ、みたいなノリでやってみたけど、スイレンがいれば鬼どころか今の力のない魁人倒せんじゃね?竜也とか姫乃いらんよな。まぁ、気付いても乗りかかった船なので、矛盾や理屈は心の中にしまってもらえたら嬉しいです。レッツゴー!!!
2025.08.05
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