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黄田きだ天音あまね…高校二年生、生徒会書紀。秀才、美形、高身長で筋肉質と非の打ち所がない青年。父が陰陽師として名をはせ、時期後継者。覚の従兄弟。


「母さん、おかえり」

黄田きだ天音あまね、高校二年生であり、生徒会書紀。
頭脳明晰、容姿端麗、16歳とは思えない程の高身長と筋肉質な体型。
なのに物腰の柔らかく、気遣い上手でとても女子から人気がある。

「天音、そろそろあの人の所に行って来なさい」

ビジネススーツを着た母親が残業を経て明け方、仕事から帰って来た。
開口一番に言うのは父親の元へ行く事だ。
両親は離婚しており、天音の親権は母親にある。
天音は元々、岸辺の姓を名乗っていたが今は母である黄田の姓になっている。
父親は家族に興味のない、形式上だけの存在だ。
天音の母にもだが、天音自身にも愛情がなく、いわばお見合い結婚の末、無い愛情や情が生まれる事もなく、別居からの離婚だった。

「うん、わかった。行って来るよ。朝食は冷蔵庫に入ってるから食べてね」

にこっと優しい微笑みを浮かべる息子に、母はいつもながら頭が上がらない。
自分の子なのにこんなに優秀で良いのだろうか。
家事、炊事はもちろん、勉強もスポーツも何でも熟す程に優れた存在だ。

「ありがとう」

天音の母はいわばバリバリのキャリアウーマン。
役職持ちで、部下を何十人も従える程に優秀である。
だが、家事、育児はもっぱらダメだった。
もちろん天音への愛情はあり、陰陽師として夫を支える為に家庭に入ったりもしたが、本当に向いてなかったのだ。
離婚原因はそこにもあった。
内助の功ならば多少は上手くいったのかもしれない。
だが、天音の母は男社会でも引けをとらないくらいに仕事能力が高く、母や妻としてはあまり向いていなかった。
そして父もまた厳格な人間だった為に、両者全く引く事もなく、現在に至る。


小さい頃はよく遊んでくれる従兄弟がいて、会いに行くのが楽しくて仕方なかった。
天音にとって唯一、親族で心から尊敬出来る人。
そんな彼が突然消息不明となる。
親族や友人達は何も聞かされておらず、同時は騒然とした。
血痕や荒らされた後等なかった為、事件性は無いとされ、失踪扱いとなったのだ。


あれから何十年と歳月が流れ、覚の存在は忘れ去られていた。
親族はもちろん、父親ですら不気味なくらい名前を出さないのだ。
そんな中、今朝方の夢で突如として覚の夢を見た。
あの頃のまま、とても穏やかな表情をし、こちらへ微笑みかける。

「天音くん、もうすぐですよ」

はっきりとそう言葉にしたかと思えば、光と共にゆっくりと消えていく。
やっと会えたのに、夢だろうが出て来てくれたのに、そう思い必死に手を伸ばした。

「覚くん!!」

だが、掴む事は叶わず空を掠めただけで終わる。
そしてその直後、温かな体温に包まれた。
いつも夢の中に現れる黒髪の少女だ。

「黄の君、神子をお守り下さい」

いつもは顔は影で見えなかったが、今日ははっきりと目に映る。

「鬼が彼を狙っております。一刻の猶予もありません。…どうか、あの悲しみを繰り返さないで下さい」

そう言って、その少女も消えて行った。

「ちょっと待って…!」

自分の声で目が覚める。
物心ついた頃から、夢に現れる黒髪の少女。
いつもは口を動かしてるだけで声が聞こえないのに、初めて耳にした。
ずっとあの言葉を伝えたかったのだろうか。
神子とはっきり伝えていたが、誰の事を言っているのかわからなかった。


昔から予知夢のような夢を良く見ていた。
覚がいなくなる日も遠くへ旅立つと言う言葉を残して、暗闇に消えていったのを思い出す。
その時と似ており、これは自分に与えられた力だと確信する。
そして長年見てきた少女の事も含め。


「気をつけて、行ってらっしゃい」

そう母親に言われ、何故だかこれが最後の別れになると感じた。

「母さん、ありがとう。…体に気をつけてね」

大した会話じゃないのに、何故か母親の心に引っかかりが芽生える。

「…急にどうしたの?」
「ううん、季節の変わり目だから、体調崩さないようにねって意味なんだけど」

そう天音は取り繕った。
それでも不思議そうな顔をして、首を傾げる母親の姿にこれが本当に最後なのだと確信する。

(母さんなりに俺の事を大切にしてくれてた。本当に感謝してるよ。きっと、もう二度と会う事はないと思う。…さようなら)


2025.08.27

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