15
士騎は風呂から出て、上半身裸で冷蔵庫を開ける。
熱い体を鎮めるようにミネラルウォーターで喉を潤していく。
ワンルームの寝室から身動きする音がし、そちらへ目を向けてギョッとした。
「は…!?え、は…?」
そこには号泣する竜也の姿があったからだ。
ベッドから上半身だけを起こし、体を震わせ嗚咽をしているのだから、士騎の戸惑いは最もだろう。
「え…、…黒野?」
何があったのかと慌ててベッドへ駆け寄る。
名前を呼ばれ、ぴくりと竜也が反応し、ゆっくりと顔を上げた。
すると目を真っ赤に潤ませ、キラキラとした瞳に一瞬言葉を失う。
竜也はいたってどこにでもいるような平凡な少年だ。
士騎に対しては少しだけ意地悪で、からかって遊ぶくらいには友人として認められている。
決して竜也を邪な気持ちで等、見た事もないし、そう言う対象でもない。
なのに、この潤んだ瞳と目尻を赤く染めながら見上げる顔が綺麗に見えたのだ。
異性に感じる恋心に近い感覚と言えば良いのだろうか。
胸がどくりと音を立てた。
「っ…くれ、さわ…」
士騎を見た瞬間、竜也の顔は更にくしゃりと破顔し、気づけば抱きついていた。
「……っ!?」
声も出さずして、士騎が耳まで真っ赤にして狼狽える。
「ぅ…っ」
かたかたと震えながら、子供のように竜也が縋り付く。
そのあどけない姿に士騎の中で、庇護欲が生まれたのだった。
「……好きなだけ泣けよ」
酷く優しい声だった。
まるで自分から出た音とは思えない程に甘く、慰めるようなそれに1番驚いたのは士騎自身である。
「……っ、ありがとう」
竜也が更にぎゅっと抱きつき、肩口に額を乗せる。
ふわりと香る甘い匂いに、士騎の胸がバクバクと音を立てて弾んだ。
頭がぼーっとし、思考回路が停止する。
花魁姿のような格好をした竜也は、今の士騎には目の毒だった。
何故か色気を感じ、頭が沸騰していく。
友人に思う感情等ではない。
わかっているのに、きめ細やかな首筋が晒され、そこから目が離せなかったのだった。
どのくらいそうしていたのだろう。
風呂から出た士騎の体はとうに冷え切っていた。
「……あのさ、今から変な事言うけど、引かないでほしいんだ…」
小さくゆっくりと話し始めたのは竜也だった。
肩口に頭を乗せているから、当然声がより近く聞こえる。
「…お、おう…」
それだけなのに再び心臓がどくりと音を立てる。
どうか竜也に聞こえてませんように、そう思うので必死だった。
「生まれ変わりとかって…信じたり、する…?」
そっと囁くような落ち着いた声。
鎖骨に当たる竜也の吐息。
その擽ったさと触れた体温に、中心がむくりと反応していた。
(っ…マジかよ…!何で俺、勃ってんだよ…!)
ボクサーパンツを押し上げ、微かに頭を上げるそれ。
竜也の言葉よりも自身に起きた事に動揺を隠せない。
「……そんなの、…信じられないよな…?」
竜也が自嘲的な笑みを浮かべ、恐る恐る士騎を見上げる。
そこには不安の色しかなったのだった。
毎回言ってるかもしれないけど、3章にしてやっと本質的な事に触れたような気がする(笑)満足に冒険や戦いなどせずに、ここまで来ていて、何だかなぁといった感じですが、これから矛盾などありつつも進めていけたらなと思ってます。確実に士騎の存在は竜也にとって重要な鍵です。それを初めから出さないと言う根性の悪さ。誰とくっつくとか、かきまわせるだけかきまわしたいなと思ってるのと、少女漫画で言う、初めて会った人間が結ばれる相手になる法則を破っていこうかなと。あの法則で行くと竜也の相手は姫乃になってしまうので(笑)
2025.08.30
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