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ぱちりと2人の視線が至近距離で交わり、互いに別の意味で心臓に衝撃が走る。
黒曜石のような瞳に見つめられ、士騎の顔が段々と赤くなっていく。
不安そうに見つめる竜也は、そんな彼の様子に気づかない。
「……やっぱ…変、だよな…。紅澤は…その、さ…どう思う?」
こてんと首を傾げ、上目遣いで見上げてくる竜也に士騎の目が揺れ動く。
「……」
よく見れば、竜也の顔は中の中であり、平凡なりに整っているのかもしない。
花魁の着物がはだけ、健康的な肌がさらされる。
見えそうで見えない胸の飾り。
そのチラリズムが何故か男心を擽る。
正確に言えば、妄想を掻き立てられ、興奮するのだ。
心無しか頬が紅潮しており、ふるふると震える睫毛がやけに艶めかしい。
おまけに肌の所々にキスマーク等つけてるものだから、要らぬ想像を掻き立てる。
(何だよ…この無数の痕…。これ、全部…あれだよな?…女?いや…、このしつこさは違ぇだろ…!……男、なのか…?こいつ、男がいけるのか…?)
ばくんと士騎の心臓が音を立てて高鳴った。
ほんの少し見ない間に、竜也の色気が半端ないのだ。
何があったのか、そう問いたいが聞いたら何故か引き返せないような気がしてならない。
何がと言われれば説明出来ないが、確実に変わってしまう。
いや、今でも充分変わりそうなのだ。
「……紅澤」
士騎が視線を逸した事により、否定されたと捉え、竜也が辛そうに顔を歪める。
頭に過るのはエンキと言う青年。
「……ごめん、もう…いいや」
酷く傷ついたような表情で全てを悟り、士騎から離れる。
ようやく竜也の言っていた言葉が脳に届き、小さく頭を左右に振った。
まるで邪心を捨てるかのように。
「……あるだろ」
そんな竜也を逃さないと言うように、その腕に今度は自らの意思で抱き締めた。
「……よくわかんねぇけど…てめぇが意味もねぇ質問なんか、しねぇわ…」
その言葉に竜也の胸がどきんと音を立てる。
「……うん」
嬉しそうに頬を赤らめ、竜也は頷いた。
(……はぁ、…やべぇ…。何で今日に限って、こんなに素直なんだよ…。不気味通り越して、可愛いじゃねぇか…。何なんだよ、気持ち悪ぃ…)
自分に対して、舌打ちしたくなった。
妙な格好してるのも良い匂いがするのも全てに意識が持っていかれる。
確かに友人としてとても好いていたが、こんな気持ちになるのはおかしい。
多分、これは異性に感じる想いであって、竜也に向けて良い感情ではない事くらいわかっている。
なのに、竜也に触れている部分全部に神経が持ってかれ、心臓がバクバクと音を立て、鎮まる様子がない。
ちらりと視線を向ければ、ずっと自分を見ていたのだろう。
純粋で汚れを知らない透き通った瞳とぶつかる。
「…っ…」
その瞬間、カッと顔に熱が帯びるのがわかる。
息がうまく吸えない。
まるでスローモーションのように竜也が頬を染めて微笑んだ。
(あぁ…ダメだ。これ、落ちたわ…)
そう思った。
今、この時をして、士騎は竜也に恋をしたのだ。
異性にするような、儚く、そして純粋な。
まさか自分が男もいける質だとは夢にも思わなかった。
(…あー…マジか。俺、年上で包容力のある女がタイプだったのに…まさか、これかよ…)
はぁっと大きな溜息をつき、竜也の背中に腕を回す。
そして、ぎゅっと強く抱き締めたのだった。
「はー…、もう観念するしかねぇか…」
当然の抱擁と共に紡がれる言葉に、竜也の頭はハテナマークである。
「ん?紅澤…?」
見なくても想像出来る。
目を丸くし、どうしたら良いのかわからず頭をキョロキョロと動かしている様を。
「……いや、何でもねぇ…。俺はお前の言葉を信じるし、生まれ変わりだろうが、…前世だろうが、何でもあると思ってるよ…」
その言葉に竜也の胸がとくりと再び音を立てる。
この匂い、とても懐かしいと思うのは彼女の影響なのだろうか。
とても安心するのだ。
「へへ…。ありがとう」
目を細めて笑う無邪気な竜也に、士騎は再び大きな溜息をつくのだった。
あっさりと友情の垣根を越えてしまった。そら、竜也は流されやすいが包容力もあるし、忍耐力もだが何より士騎に一切びびらない時点でフラグは最初からあったよね。それを友達で片付けようとしてもノンノン。傍にいて良いと思える貴重な存在が大切になるのは至極当たり前の事。
ちょっとネタバレになるけど、ここまで、黒、白、藍(緑)、紅(赤)、黄と現代組の名字が5色になった所で、戦隊モノ(5レンジャー)集まりました。お気づきの人ばかりとは思いますが、戦隊的な感じで攻めてます(笑)けど、いつもだいたいいる、青とピンクがおらんよなぁって。さて、どうしたもんかのぉ。
2025.09.06
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