tori


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スイレンと姫乃は2人で床に座り、今後の事を考えていた。

「とりあえず、神子様とギョクレンが何処に行ったのか、それさえわかれば…」

顎に指を添え、真剣な眼差しを向ける。

「あ、それならわかるかもー!」

姫乃の言葉にスイレンが物凄い勢いで驚く。

「何かねー、全然、気配っての?感じないんだわ!多分、ワシらの世界に戻ってる可能性大だよねー」

何の根拠もない言葉に、スイレンが盛大な溜息をついた。

「いや…、あのさ…うん。やっぱ…何でもない…」

疲れたと言わんばかりの脱力感。
いや、虚無と言っても良いだろうか。

「こうさ、黒野くんの呼吸っての?なーんも伝わって来ないだわ!今までは何となく、自分の中にもうひとりいるような感覚あったんだけど、あれが黒野くんだったんだなーって、今気づいた!」
「今っ!!?え、今なの!!?」

スイレンがガバリと顔を上げ、大声を出す。

「そう、今ー」

ケタケタと姫乃が笑い、その悪気のない笑顔に苦笑いするしかなかった。
変わってると思ってたが、やっぱ変わってるなと再度認識する。
正直、この楽天家タイプが周りにいなかったから、扱いに困っていた。
どちらかと言えばギョクレンは血の気の多い破壊神で、覚は真面目だが寛大な心を持つ父親のような存在。
だから今こうして、姫乃といざ2人になって思う事はとにかくやりにくいだった。

「あー…うん、そっか…。今かぁ…」
「今ー」

2人は視線を合わせ、にこりと微笑む。

(俺、何で姫乃のナイトなんだろ。本当にコレが何を考えてるか、全くわからないんだけど…。早く神子様とギョクレン見つけて帰りたい)

「あ、でももしかしたら、スイレンも連れて行けるかもしれん!」
「いや、何を根拠に…」

そうスイレンが呆れたように目を細めた瞬間、黄色い光と共に青年が現れた。
まるで最初から来る事がわかってたように姫乃は目を細める。

「ほら、ねー!!」

姫乃が自信満々に言ったが、この男は何処から現れたのか。
スイレンが姫乃を守るように背中に隠して、呪文を唱える。
こちらを見て最初は驚いたものの、特に慌てた様子も見せずに青年は2人を見下ろしていた。

(敵ではないのか…?ずいぶん余裕そうに見えるけど…。3人目の神子…なんて事ないよね…?)

スイレンは自分達の周りに水の結界を張り、様子を伺う。

「……そっか。ここだったんだね」

男が何かを納得したように息をつく。
そしてスイレンと姫乃を交互に視界に捉え、確信したような顔をするのだった。
得体のしれない存在にまだ油断は出来ない。
いくら殺気やオーラがないにしろ、無害とは限らないからだ。

「やっほー。黄田くんじゃーん」

そんなスイレンの予想を遥かに上回るくらい、気の抜けた姫乃の声。
黄田と呼ばれた青年は、姫乃へと視線を向けるが心当たりがないのだろう。
明らかな拒絶とも捉えてもいいくらいな怪訝な顔をするのだった。

(知り合いなのか…?)

「どなたですか?」

姫乃に対し、警戒してるのか目つきが若干鋭くなる。

「すみませんが、俺にはこちらの世界に心当たりがありませんが…」

天音の言葉にスイレンがぴくりと反応する。
そして警戒を強めた。
そう彼はこちらの世界・・・・・・と言ったのだ。
ここに来てすぐそれに気づけるだろうか。
いや、出来ないだろう。
もっと多くの情報を得た上での判断ならまだしも、数秒の間にジャッジを下したのだ。
しかもこの部屋と言う狭い空間の中で。
明らかにおかしい。
ただの人間ではない事がわかる。

「姫乃…、そこまでだよ」

そう言って、スイレンが再び呪文を唱え始めた。
そして天音目掛け、水の龍がその体に巻き付くように拘束したのだった。


2025.09.12

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