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魁人は目を細め、舌打ちをした。
竜也の匂いから感触、そして味が一瞬にして消えたからだ。
「ナイトか」
酷く冷たい表情をし、歯をぎりっと食いしばる。
100年ぶりの感触。
愛しさが倍増した。
吸い付くようなきめ細やかな肌。
健康的な肉体の中で、折れてしまいそうな未発達の体。
ようやく堪能出来たと思った矢先、ギョクレンによって抹消させられた。
正確には白夜鬼を上回る力により、抵抗する間もなく消されたのだが。
「僕の竜也に手を出すなんて…」
そう、竜也に口づけしないと力等ないに等しいナイト。
それ自体が気に入らない。
ナイトである証明をするには唇をかさねる事だと。
何たる屈辱。
竜也に触れるのは自分が最初だと思っていた。
だが、覚醒してない己は彼を見つける事すら適わない。
笑えない程の無力感。
囲って、蹂躙して、甘やかして、自分以外あの瞳に映したくない。
その気持ちが強く、普段は怒りを認識しない魁人の手がぶるぶると震えていた。
(一瞬で白夜鬼を消すだなんて…。ずいぶん、生意気だよね)
顔を手のひらで覆うと眼鏡が当たり、かちりと音が鳴った。
指の隙間から白夜鬼越しにみたギョクレンの顔を思い浮かべる。
やけに綺麗な顔をし、すました顔が憎らしい。
脳筋馬鹿かと思えば、どうやら片割れ同様に頭は回るようだ。
やはりあの時、始末しておけば良かった。
役者が揃うまで、そう思って生かしたのがこんなに苛立つとは思いもしなかった。
見た目が平凡で、愛すべき部分なんて持ち合わせていない竜也。
だから、ナイトと言っても突然現れた神子に対して特別な感情等無いとたかを括っていた。
ナイトに選ばれるだけあって、容姿は保証されたもので、相手に飢えてる訳じゃない。
使命感や義務等で仕方なく全うするだろう。
嫌々ながら、傍にいるものだと侮ってしまった。
けど実際はどうだ。
竜也を見つめるあの瞳は完全に男、そのものだった。
雄、いや、それよりも深い感情と言うものが垣間見えたのだ。
まさかあれ程人に興味の無い顔をして、己の鍛錬だけをして来たような殺戮マシーンが神子とは言え、ひとりの人間に執着するなんて。
ましてやあの容姿だ。
平凡でどこか突出してる訳もない、どこにでもいる少年。
お世辞でも美しいとは言い難い。
魁人だけがわかる魅力だと思っていたのに。
鱗の顔は見目麗しいには程遠いものの、愛嬌や内から滲み出る性格が士騎を虜にし、そして今度は竜也がギョクレンを夢中にさせてると言うのか。
「もう待って等いられなくなってしまうよ。…早く覚醒してもらわないと…」
魁人の近くで白夜鬼が蠢き、まるで了承したと言わんばかりにその場から離れた。
2026.02.21
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