tori


まともじゃない


これからだと言う時に限って、涼介のスマホが鳴った。
出て見れば、今をときめかすioriの記者会見だと言う。
未だに快楽に乱れる環を見て、物凄く残念そうに眉を下げた。


正直、ioriよりも環の方が優先順位は上だ。
だが、涼介の社会人としてのポスト、s-net社長券番組プロデューサーの重圧が重くのしかかる。
今の仕事は涼介なりに好いている。
裏社会の人間になる事も考えた。
だが、百瀬の存在が涼介に光を浴びる世界へと留めてくれたのだ。
彼女の傍はとても居心地が良い。
自分を唯一理解してくれてる戦友とも言えようか。
恋愛感情は互いにないが、信頼関係は未だにずっと続いている。
こんな自分が人にそんな感情を持つなど思いもしなかった。
きっと百瀬は知らない。
涼介が彼女となら結婚しても良いと思える程、気を許し、尊敬の念を抱いている事を。
確かに愛と言う感情は存在しないが、人として百瀬の真っ直ぐで嘘偽りない清らかな心は好いている。
涼介には一生かかっても芽生えない感情であり、それを羨ましいなどとも思わないが、何故か惹かれてしまう。
百瀬は涼介の趣向に口を出さない。
どんなに番組内で味見しようが、手をつけようが 
説教など一切したりしなかった。
何故ならば、自己責任。
私はお前の母親でも恋人でもない、ただ人として道を外した場合容赦なく切り捨て、二度とお前の前に現れないからな、と言われた。
それは涼介にとって衝撃的な言葉であり、百瀬はいつか離れていく存在なのだと悟った瞬間だったのだ。
人が離れてく事に何の戸惑いも後悔もない。
生きていて寂しい、辛い、悲しいと感じていたのはこの学園で強姦されるまでだった。
あれから涼介の感情は全て消失。
元からそんなに喜怒哀楽は多い方でなかっなが、あれ以来何に対しても楽しくないのだ。
何を食べても味など感じず、好きなものもない、ただひとつだけ自分好みの少年や男を組み敷いてる時だけは生きていると感じられた。
そんな自分がひとりの女の一言に動揺したのだ。
涼介の中で何かが息づいていた。
百瀬と言う存在に見放されたくない。
今までどんなに酷い事をしようが、人に嫌われようが、何を言われようが心が動いたり、胸を痛める事はなかった。
なのに自分は今、百瀬と言うひとりの人間に嫌われたくないと思っているのだ。
涼介の中にそんな感情が残っていた、或いはあった事に驚きだった。
百瀬に嫌われるイコールそれはs-net社長、番組プロデューサーの解任を意味している。
自分のような社会不適合者に対し、はっきりと自分の意思を告げる彼女の誠意を感じられた。
犯罪者が出て、seycoグループに傷がつくのは相当な痛手だろう。
そんなリスクを背負ってでも百瀬と言う人間は涼介をこの地位に座らせたのだった。
そしてこんな話を引き受けるのは彼女だったから。
そうではかったら、s-netの社長はおろか、番組プロデューサーなんてそんな面倒臭いポストについたりはしなかった。


「環くん、ごめんね…。僕、仕事だから、続きはまた今度」

そう言って、環の今にもはちきれんばかりの性器から手を放す。

「んっ…」

突然の刺激がなくなった事により、やっと口から涎が止まる。
そして小刻みに震えながら、涼介を見上げた。
やっと開放されたのかと思う安堵と、この熱をどうしたら良いのかと言う不安。

「……誘うような顔しないで。…本当にこのまま犯したくなっちゃう…。それしちゃうと、僕が百瀬くんに嫌われてしまうからね…。環くん、必ず迎えに行くよ。君はもう僕のものだから…これからゆっくり時間かけて、エッチが大好きな子に育ててあげるよ」

環のこめかみに口付けを落とし、颯爽と社長室から出て行ってしまった。
何が何だかわからない。
涼介の言葉の半分も理解出来なかった。

「エッチ大好きな子に育てるって…何…!?」

え、怖っと環はふるえるのだった。

(あれは本当にヤバい人種だ…。目が笑ってなかった…。冗談でもないし、むしろ本気だった…?迎えに行くって事はこれで終わりじゃない…?)

涼介から感じるものはとてもじゃないが常識的な範囲を超えていた。
男が男にセクハラをする。
もうこれはセクハラを超え、性的暴行なんじゃないだろうか。
自分は今まで誰に何をされていたのか。
そう思い、ぞっとするのだった。


2025.02.26

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