激怒※和空×色生
※脇カプあり。和空×色生。
色生により無理矢理外へ連れて行かれた和空。
普段は絶対こんな雑で荒っぽいやり方しないのに、後ろ姿だけでわかる。
色生がかつてない程に、本気で怒っている事が。
「色っ…、違うねん!これには事情が…」
和空はガタガタと震えながら、顔を真っ青にして弁解をする。
誰にどんな誤解されようと構わない。
だが、世界でひとりだけ絶対に信じて欲しい人がいる。
それが和空にとって色生だった。
「っ!どんな事情があるんだ!?」
色生が振り返り、和空を突き飛ばした。
思わずよろけ、外壁にぶつかる。
「言えよ!!あんな風に厭らしい目で、宝物に触れるみたいな手付きで…それのどこに、どんな事情があるって言うんだよ!!」
びりびりっと空気が割れる程の怒声が響き渡る。
それは色生と出会って初めての事だった。
「っ…!!?」
和空が驚愕の表情を浮かべ、色生を見て固まる。
「っ……!……俺が馬鹿だった…!お前なんかを信じて……馬鹿みたいだ!」
色生の目から、すっと涙が溢れ落ちた。
ずっと一緒にいたがここまで感情をあらわにする姿を見るのは初めてで、和空は戸惑い、罪悪感に苛まれる。
苦しそうに泣く姿に、和空の手がゆっくりと色生へと伸びる。
「ふざけるなよ!お前なんてっ…」
その手を弾くように色生はきつく睨みつけ、振り払った。
かつてない程の拒絶に、和空は言葉を失う。
胸が苦しくなり、その涙さえも拭わせてもらえないのかと、触れて抱き締める事も許されない事に絶望する。
なんでこんな事になってしまったのだろうか。
ただ色生が大切にしている環を自分も同じように大切にしたかっただけなのに。
ぼろりと和空が目から涙を流し泣けば、色生がそれに気づきギョッとした顔をする。
「っ…、なっ…!?」
色生が驚き、ぴしりと固まる。
泣きたいのはこっちなのに、何故和空が泣いているのだろうか。
「違うねんっ…!俺が悪かった…。だから色…、それ以上言わんといて…?その先を言われたら、俺、ホンマに生きていけへん…!」
ぼろぼろ涙を流し、まるで子供のように肩を震わせる目の前の男。
これは本当に和空なのだろうか。
自分と出会う前までは男女関係なく遊んでは口説き、決して交際はしないものの、体だけの関係だけをすると言う噂は絶えなかった。
自分に声をかけてきたのも物珍しさからだろうし、たまには違うものを食べたいと思うのと同じだと思い、まともに相手にしなかったのを昨日の事のように覚えている。
そんな時ですら、和空はこんな姿を見せた事がなかったのに。
必死に口説く姿に惹かれ、誠心誠意で向き合ってくれ、色生のペースに合わせてくれた。
だから心を許したのに。
まさか浮気される日が来るとは思わなかった。
いつもひょうひょうとし、冗談ばかり言って、ノリだけで生きてるような男だったが、しっかりしてて、頼り甲斐もあり、何より思いやりがあり優しいのだ。
常に真っ直ぐで、自分だけを見て、追いかけてくれる姿に胸を撃たれ、気付いたら好きになっていた。
苦労するのはわかっていたのに。
ただでさえ男同士の恋愛。
世間はもちろん、親にさえ理解されないだろう。
どんなに互いを想い合っても先の見えない、不透明な未来。
世間一般が思う幸せな結婚をし、家庭を築き、子供を産むみ、育てる事が叶わない。
それでも良いと腹を括ったのに。
その結果がこれである。
「……何でお前が泣くんだよ。浮気だから…本気じゃないから、許せって?未遂だから、浮気にならない…そう言いたいのか?そうやって…泣けば、俺が…お前に甘い事を知って…利用するんだろ?何でも許してくれるから、俺みたいな…お前しか知らないから、そうやって泣いて縋れば何もかも許してくれるって…」
色生は内から出る初めての怒りと、和空の涙する姿に驚きと混乱が入り混じり、頭がこんがらがってしまった。
この感情をどうしたら良いのかわからない。
浮気なんかされるとすら思ってなかったから、悲しくて、悔しくて、堪らないのだ。
こんな裏切りはあんまりである。
「ふざけるなよ!お前とはもう…終わりだ!」
唇を強く噛み締め、色生か和空から視線を逸らす。
もう顔も見たくない、そう言う言うかのように。
「別れへん!!やっと手に入れたのに…ここまでやっと許して貰えたのに!終わりになんてさせん!」
どの口が言うのだろうか。
この状況を作り出した本人に、拒否権など存在しないと言うのに。
「ふざけるなよ!?浮気のひとつや2つ、見逃せって?どれだけ俺を下に見てるんだ?馬鹿にするのも大概にしろよ!?お前がそんな奴だと思わなかった。けど1番最悪なのは、見抜けなかった俺自身だよ…!もう二度と現れるな。遊びたいなら遊べばいい。好きなようにすればいい。俺にはもう関係ない事だ。お前が何しようが、もう関係ない…」
振り返る事なく、もう話す事はない。
そう言って、部屋へと戻ろうとすれば後ろから抱き締められた。
「っ…浮気なんかするか!!!俺が好きなん、今までもこれからも色ひとりや!!!関係ないなんて言うなや…!頼むから、言い訳くらいさせてくれ!俺を捨てんなや…っ!」
泣いていたかと思えば、急に怒り出す和空。
「………は?」
今さっきまで自分じゃない少年を押し倒し、浮気していた人間の言葉だろうか。
「……意味がわからない」
色生がふらりとよろける。
その体を再び強く抱き締め、どこにも行かないように全身の力を奪う。
何故、こんなにも自分に固執するのだろうか。
バレたなら、潔く環に乗り換えればいいじゃないか。
ひとりの人間に縛られる事なく、たくさん遊べるし自由で良い筈だ。
背後にいる男が何を考え、未だに自分に固執しているのか心底理解出来なかった。
2025.03.17
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