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素直で可愛い少年。
まだ発展途上で子供と大人の境目におり、不安定な存在。
海向とはで今日オーディションで出会っただけの少年。
なのにその一言で終わらしたくない。
環と言うひとりの人間がいたく気に入ってしまったのだ。
こんな事で友情も才能も終わるなど許せない。
どれ程に辛かっただろうか。
幼少期からたくさん嫌な事があり、同性からもそういう被害を受けて来た海向だからこそわかる。
未遂とは言え、起きた事は消せないし、一生の傷になるだろう。
たからこそ、トラウマになんてさせない。
自分が経験してるからこそ、せめてこの純真無垢な少年にだけは。
そう思い、海向はゆっくりと目を閉じた。
「……気持ち…悪くない?」
環が蚊のなくような声で問う。
海向が閉じていた目を開けた。
「……?」
海向は一瞬、環が何を言っているのかわからなかった。
不思議そうに首を傾げれば、環が上目遣いで視線を向ける。
うるうるとした水気の帯びた瞳がキラキラと光り輝き、とても美しい。
海向は口を微かに開き、唖然とした顔で環を凝視する。
目の前にいるのは平凡な少年な筈なのに、艶っぽく綺麗なのだ。
環を初めて見た時に思った感想は地味でどこにでもいる顔。
中の下くらいの容姿だろうか。
それくらいの印象だったのに、今はどうだろうか。
エフェクターがかかったかのようにキラキラと光り、伏せた瞳は色っぽく、上目遣いは甘えてるかのように見える程に可愛らしい。
自分はどうしてしまったのか。
環のもたらす表情全てが可憐でいて美しいと思ってしまったのだ。
「…こんな、俺の事…軽蔑しない?…2人、の人に…へ、変なこと…されて…。嫌なのに…気持ち良く…なって…」
ぼろぼろっと環の瞳から涙が溢れる。
その雫を目で追い、まるで宝石のようだと海向は思った。
純粋で何ひとつ嘘のない涙。
何も着飾らない、損得のない環の綺麗な心が自然と伝わって来る。
己の身に起きた事による感情が追いつかない、初めて感じる性への驚きを隠しもせず語る唇。
薄いながらも柔らかそうな桜色をしたそこから目が離せない。
海向は目を大きく見開き、一度に来る情報量の多さに固まっていた。
「お、れ…触られて…嫌なのにっ…おかしいんだっ…!えっちな気分に…なって…海向に…嫌われるって…、友達じゃ、ないって…言われ…るって…。こっ、怖いのに…気持ち悪いのに…、あの人の手を…思い出して…ひとりで…して…!もしかしたらっ…変態なのかも…っ!」
ガタガタ震えながら、たどたどしく話す言葉に海向も昂輝も驚愕していく。
トラウマになってるのはそうだろうが、環はきっとまだ性の知識がないのだろう。
人に触られれば男ならばそう言う気分になるのは仕方ないし、それが本能なのだが。
環は見た目通り、純粋で心も体も綺麗なのだろう。
初めて他人に触られる快楽と、そんな自分が浅ましいと思う罪悪感でいっぱいなのだ。
自慰なんて当たり前のようにするし、何ならそう言う雑誌や動画で抜くのなんて日常茶飯事。
昂輝はもちろん性欲が強いが、こんな美少女面した海向ですら、自慰はもちろん童貞卒業済みである。
女の子を抱く気持ち良さを知り、誘われればそれに答える。
そんな至極当然な事を環は知らないのだ。
現に恐れている事は海向に軽蔑されるのではないかと言う、何とも可愛らしい感情なのだろうか。
2025.03.19
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