正反対な同室者
にこにこの笑顔から一変、一葉は真顔になる。
「彼氏いるのに誘って来たのも君、媚売って猫なで声で誘惑したのも君だよねぇ〜?人の事色々言ってるけど、俺は恋人がいたら浮気なんてしないよ〜。本物のクズはどっちだろぉねぇ〜」
先程までのお気楽な感じはなく、軽蔑の眼差しを向け、冷たく言い放つ。
話し方は変わらないものの、間抜けそうな間延びとは違い、煽るような言い方へと変化する。
小柄の青年は顔を真っ赤にし、一葉の頬を思いっきりビンタする。
どうやら、図星だったのだろう。
「…あ…」
引っ叩いた本人が驚く。
そんなつもりじゃなかった。
謝ろうとすると先程よりも更に部屋の温度が下がるのがわかる。
「調子に乗っちゃ〜ダメだよ〜、ビッチちゃ〜ん」
柔らかい口調は変わらないものの、低い声に変わり、ギロっと小柄な青年を睨みつけた。
その恐ろしさに怯み、顔を真っ青にして怯える。
「さっさと出ていきなよぉ〜。二度と顔見せないでねぇ。俺、何するかわからないよぉ〜。そのゆるゆる〜なアナルで彼氏に愛想尽かされないよう、精々気をつけなよぉ〜」
一度は体を交えた仲だと言うのに、まるでそこら辺のゴミでも目にしたかのような冷たい瞳。
そしてあまりにも耳を塞ぎたくなる程の暴言に、小柄の青年はショックを受け、涙を流す。
「泣けば済むと思わないでねぇ〜。虫唾が走っちゃうな〜」
涙が嫌いな一葉にとって、この状況で泣かれるのが何よりも不快である。
こんなに優しい言い方をしてあげてるのに。
自分の言動には責任がとれないなら、行動に移すな。
少なくとも自分は覚悟の上でしている事だ。
「いつまで居る気〜?早く消えてねぇ〜」
散らばった洋服を集め、青年に手渡した。
悔しそうに涙を流し、裸のまま部屋を飛び出して行く。
「はぁ…彼氏持ちに手を出すとか、あり得なぁ〜い…」
一葉が大きな溜息をつき、むせ返る部屋の臭いにうんざりする。
嫌ならその行為自体しなければ良いのに、下半身ゆるゆるな彼は誰とでも寝るのだ。
「お前、馬鹿、ナノか?」
開いたドアから黒い影が見え、聞いた事もない声と片言の日本語が聞こえた。
「部屋、臭イ。いい加減に、シロ。喧嘩なら、ヨソでヤレ」
小麦色に焼けた肌と、黒髪ボブウルフヘアをオールバックにし、きりっとしたきつい猫目な美形。
その視線だけで人を殺せそうな程の目力だ。
「この部屋の住人、カ?二度とココで、セックス、するナ。不快ダ。」
それたけを言って、自らの部屋へ入ってしまった。
「へぇ〜、中国人?それとも韓国人かな〜?めっちゃ神経質そうで、全然好みじゃな〜い。俺可愛くない子、嫌ぁ〜い」
あわよくば同室者とセックス出来るかもと思っていたが、あんな辛気臭くて神経質そうな男はごめんである。
頼まれたって抱いてあげない。
「つまんな〜い。もうひとりはどんな子かなぁ〜?可愛いと良いなぁ〜。早く来ないかなぁ〜」
一葉は先程の事が何事もなかったように、まだ見ぬ同室者へと興味が移る。
「ゴム注文しないとぉ〜」
スマホを開き、学園ご用足しのネットスーパーからコンドームを購入した。
種類の違う両者。
全くの正反対だが、果たしてもう一人の同室者は誰なのだろうか。
2025.03.21
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