tori


オーディション開始


seyco entertainmentは全てのジャンルのアーティスト達の集まりで、役者志望だと、俳優、ミュージカル俳優、声優。
ミュージシャン志望だとアイドル、歌手、ダンス、バンドなど様々である。
その中で登竜門なのがアイドルであり、そこから成功をおさめ、進みたい道に行くケースが多い。
この会社で売れっ子ナンバーワンなのがiori。
俳優でありながら、ミュージシャンとしても名をはせ、絶大な人気である。
そんなioriに憧れ、入る人も少なくない。
そして環はそんな彼に魅了されたひとりであり、同じ舞台に立つ事をずっと夢見て来た。
オーディションは進み、俳優、ミュージカル、声優部門が終了し、アイドル、歌手、ダンス、バンド部門へと差し掛かる。
それぞれが自分の最大の武器を使い、切磋琢磨していく中、先程喧嘩を売って陰口叩いた少年達の番だ。
ひとりはベース、もうひとりはギター、最後のひとりはヴォーカルだった。
ここに来るくらいだから、最終審査までは通過したであろう実力で、3人は自分達の実力を最大限に引き出したのだろう。
ドヤ顔で環を見て、嫌な笑みを浮かべたのだった。
平凡が俺達に敵うはずもない、そんな副音声が聞こえたが環は特に気にする様子もなく、それぞれの挑戦を目に焼き付ける。

「エントリーナンバー19802、折川泉水。ドラム担当のバンド志望です」

緊張した面持ちで泉水は深呼吸し、ドラムを鳴らし始めた。
すると誰もが驚く程の高速ドラム裁きとテクニック、そして普段の苦労性が全く垣間見えない程のミステリアスな空気に会場は一気に引き込まれる。
ドラムは何百人もいたが、そのどれもが上手いがそれだけだった。
たが泉水のそれはリズムの乱れはなく、心に直接響く音、そして力強い動きにも関わらず汗ひとつかいていないのだ。
一体どれだけ練習すればこの粋に到達出来るのだろうか。
プロ顔負けな筈である。
いや、今までデビューしてなかったのが不思議なくらいだった。
会場を圧巻し、終了。
スタンディングオベーションが起き、一気に緊張から祝福ムードに一変。
ビリビリと来るドラムの音が終わっても尚、会場の人間の中で木霊し、皆興奮収まらなかったのだ。
審査員すらも感動して、歓声の中で何かを各々語り合っており、モニターに得点を付けていく。
オーディションがその後も進み、あと50人となった時、海向の出番となった。

「エントリーナンバー19950、連城海向。ギター担当でバンド志望です」

見た目の美しさから会場からどよめきが起こる。
綺麗だったり、格好良い人間はいるが、ここまで整った美少女顔は初めてであり、驚く他なかった。
噂では聞いていた人は数々いたが、まさかここまで美しいとは思っていなかったのだろう。
二万人もいれば皆、緊張や不安、そして自信と期待で周りなど見る余裕もない。
だから海向が舞台に上がった時に見た光景は衝撃だったのだろう。
ほとんどの候補者がオーディション終了し、様々な重圧から逃れた今、改めて海向を見て驚愕するのは当然だった。
ギターを弾いた瞬時、誰もが息を飲む。
難しいコードを涼しい顔をして弾き、綺麗に染められた金髪がふわりと揺れる度にぱっちりとした二重が細められ、何とも言えない雄々しい色気を放っていたからだ。
可愛い、綺麗だとは思っていたが、これ程までに格好良さは何なのか。
会場にいる人間は見た目の可愛らしくて美人のイメージから、一気に男前で格好良い物へとチェンジしたのは言うまでもない。
そして外見だけではなく、実力は想像を遥か上回り、群衆の度肝を抜いた瞬間であった。
容姿が美しく、ギターのレベルもプロ並みでわずか15歳の少年が出来る技ではない。
こちらも終わり、スタンディングオベーションとなり、海向は照れ隠しの為視線を逸らし、泉水はとても嬉しそうに微笑んだ。
そんな2人の演奏を聴き、環は感動してしまう。
こんな素晴らしい人達と友達になれた事もだが、同じ舞台に立てた事が何よりの誇りだ。
もし、ここで敗れたとしても悔いはないだろう。
それくらい凄い人達の集まりなのだから。
それでも全力で挑む、それは変わらない。


2025.01.29

- 6 -

*前次#


ページ: