tori


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※音楽知識なく、よくわからないので上手く表現出来ませんがお許し下さい。


環の番号札が上げられた。
大きな深呼吸をし、舞台へと上がる。

「エントリーナンバー19999、佐野環。ヴォーカル担当の歌手志望です」

最後から2人目の登場となり、舞台へと注目が注がれる中、現れた人物に誰もが鳩が豆鉄砲喰らったような顔をした。
それもその筈である。
今まで出て来たメンバー達は皆、容姿が整った者達が多かった為に、まさかここに来て平凡な少年のが来るとは誰もが思わなかったからだ。
審査員ですら表情こそ変えないが、自分のモニター資料と舞台にいる環を何も見る。
何度見ても同一人物であり、容姿もどこにでもいる普通の少年だった。
会場からは微かに動揺する声が聞こえ、それを意ともしない環の姿に度胸がありすぎだろと泉水と海向がニヒルな笑みを浮かべる。
会って数分だが、佐野環と言う少年は肝が座っており、のほほんと試練を乗り越えるような男だ。
実力こそ知らないが話した時に感じた、程よく落ち着いた声から察するにそれなりに上手いのだろう。
そう泉水と海向はわかっていた。
耳に聞こえる声が心地良く、その歌声はきっと平凡を凌ぐ勢いだ。
環がマイクの前に立てば音楽がかかる。
スタンドマイクを両手で包み込むように掴み、スタンドからマイクを抜かずに体を近づけた。
ほとんどの人間がマイクを手にし、スタンドから離していたから、てっきり環もそうだと会場にいるほとんどの人間がそう思っていたのだ。
平凡な成りを潜め、のほほんとした雰囲気が変わった。
穏やかな空気が一瞬にして静けさをもたらす。
一重の目元はお世辞にも強そうな意思を感じなかったそれが、挑発するような流し目へと変わった。
その瞬間、ぶわっと色気が体を包み込み、同性に感じてはならない性欲が刺激される。
そして歌い出した瞬間、会場が圧倒されたのだった。
何という透明感ある綺麗な歌声なのだろうか。
耳だけじゃなく、体の中にも侵入してくる自然な声。
こんな優しく甘い声は聴いた事がない。
耳元で囁かれてるかのような艶っぽさと、穏やかで心地良い歌声は水面の様に美しく、そして甘く、包み込むような音だった。
サビに来ると今度は艶やかな歌声が全面に出て、透き通る声とは違い、心臓を撃ち抜かれるような激しく誘われるような色気に誰もが呆気にトラれる勢いだ。
男に表現するのはおかしい事なのだが、性的な意味で己の中心にぐっと来るのだ。
この会場にはもちろん女性スタッフもおり、そんな彼女らは背筋がゾクゾクとし、腰に力が入らなくなりそうな程、誘惑された。
彼になら抱かれたい、そう思わせるような歌声なのだ。
吐息混じりのハスキーな声が官能的過ぎて、その場にいた男性陣全員が思う。
この男は抱ける、と。
それくらい扇情的であまりにもセクシーだったのだ。
先程のニコニコした表現とは違って、挑発するような色香に充てられる。
平凡な顔なのに流れ目で見つめられるだけで、男女問わず欲情してしまう。
桜色の唇が程よい薄さで、歌う度に真っ赤な舌がちらりと覗く。
それが何故か官能的に映り、性的対象として見えてしまうのはいかがなものだろうか。
目を薄っすらと開け、スタンドマイクを両手で掴む姿はまるで口説いているかのようで、その美しさに誰もが見惚れてしまった。
中には勃起してしまう者や感じてしまう者がいたのだろう。
前屈みになったり、その場でうずくまったり、顔を真っ赤にして耐えているではないか。
同性や未成年に対して、こんな感情を抱く事すらおかしいのに、何故か目が離せない。
釘付けになり、彼に魅了されてしまうのだ。
透明感ある歌声から、色香漂う艶やかなハスキーヴォイス、平凡なのに歌った瞬間憑依されたかのような挑発的な流し目に会場は静寂に包まれた。
環が歌い終わっても静まり返る空間に誰もが息を潜める。


2025.01.29

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