拉致
海向に言われた通り、ひとりにならずに知之と一緒にいた筈だった。
説明したら、快く作戦会議に参加してくれると言ってくれて、あとは海向達を待っだけだったのだが。
何故か環は礼貴により拉致され、彼の部屋らしき所に連れ込まれてしまっていた。
「っ…勅使河原…くん…」
環は怖くて怖くて、ガタガタと震えながら礼貴を呼んだ。
「佐野…ようやく2人きりになれたな。はぁ…佐野が俺の部屋にいるなんて…夢のようだ…」
目を飴玉のように蕩けさせ、頬を赤らめ、うっとりした表情でベッドに押し倒されていた。
びくびくと怯えながら、どうにか逃げる事は出来ないかと一生懸命考える。
「勅使河原くんの部屋なんだね…。何号室なのかな…?」
少しでも多く情報を知りたくて、引きつった笑顔で質問してみた。
「はぁ…佐野は可愛いな。うさぎのように震えて…。怖かったのか?男女にき、きすなど…されて」
全く質問に答えてくれない。
もしかして、聞こえてないのか。
それとも完全スルーなのか。
やけにキスと発言する度にどもるのは何なのだろうか。
耳まで真っ赤にして、鼻息が荒いのが更に恐怖を湧き立てていく。
「あの…ここには何しに連れて来たの?」
恐る恐る問い掛ければ、礼貴がはっと息を飲んだ。
「佐野、俺たちの交際1日目の記念日だろ?だから、2人きりになりたくて」
かちんと環が固まった。
(……え?待って、待って、待って…。交際1日目の記念日って、何!?そもそも俺達、さっき知り合ったばかりで付き合ってないよね!?)
「誰にも邪魔されたくなくて、少し強引に連れて来てしまった。けど…あれは頂けないだろ。俺がいると言うのに、男女とき、きすなどする、なんて…」
どこからつっこめばいいのかわからない。
そもそも礼貴は何を言っているのだろうか。
環はパニックを起こしていた。
「佐野、男女に弱味を握られたのか?安心してくれ、俺が必ず佐野を守る」
そう言って覆いかぶさって来た。
環は目を大きく見開き、ガタガタと震える。
「あぁ…こんなに震えて…。怖かったんだな…もう大丈夫だ。俺がき、きすをして…消毒してあげるからな…」
はぁはぁと鼻息荒くし、環の顔の横に両手を起き、閉じ込めるように跨がる。
「勅使河原くん…あのっ…待って…」
環は生理的な涙を浮かべ、礼貴の胸元に手を置いた。
「っ…佐野が…俺に触れているっ…!」
どこに興奮してるんだと思い、少しでも距離を取ろうと力を込めるも、ガチガチの筋肉の形がブレザー越しにわかるだけで、何の抵抗にもなっていなかった。
「俺を焦らすのか…?佐野は小悪魔だな…、そんな所も愛らしい」
どこに小悪魔要素があったのか謎だが、どうやらこのままでは危険な予感しかしない。
「あの…勅使河原くんの体重が重いから、この体勢はちょっと無理…」
ぶるぶると震えながら伝えれば、何か思う事があったのだろう。
くるりと体を入れ替えられ、環が礼貴の上に乗り上げる形となった。
それにより更なるピンチになろうとは誰が予想しただろうか。
「っ…佐野の太腿とお尻が俺の股間に…!」
どうやらダイレクトに環の体重を感じ、際どい部分同士が触れ合う事で礼貴が興奮してしまったのである。
(こんな事ってあるー!?何でこうなっちゃった!?)
「佐野っ…佐野っ!」
早く口付けたくて仕方ないのだろう。
がばりと礼貴が体を起こし、騎乗位の体勢から対面座位の状態になってしまった。
それにより腰に腕を回され、抱き締められるような格好になってしまう。
そろりと礼貴に見上げれば、互いの視線が交わる。
それが合図かのように、後頭部を大きな手の平でがしりと掴まれ、腰を強く引き寄せられた。
「んっ…!?」
そして勢い良く唇を奪われたのだった。
2025.04.17
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