交渉成立
青蘭が弾き終えると拍手喝采だった。
周りなど気にも止めてなかったのか、一瞬だけ固まったように思えたが、すぐさま表情は険しいものへと戻り、くだらないとばかりに睨みつける。
その姿に拍手していた生徒達はぴたりと止み、慌てて目を逸した。
楽譜を手にし、立ち上がれば近くに人が立っている事に気づく。
「ねぇ…ピアノ、教えてよ…」
律が無表情なまま話しかける。
自分よりも遥か高い身長に舌打ちし、青蘭は無言のまま睨みつけた。
「俺、どうしても佐野とセッションしたいんだけど…」
青蘭が一言も喋ってないにも関わらず、律はお構い無しに話し続けた。
「多分、佐野は今回デビューすると思うから、一緒に出来る最初で最後のチャンスなんじゃないの…」
その言葉にぴくりと青蘭の眉が上がった。
「…アンタもデビューする為に来たんでしょ?なら、一緒にチーム組ませてあげるよ」
その言葉にぴくりと目元がつり上がる。
「……他人と戯れる、気、ナイ」
青蘭の声にその場にいる生徒達が一斉に驚いた。
何を話しても中国語、またはガン無視する彼が片言だが日本語を話しているからだ。
「…でもソロはないよ?必ず誰かと…組まないといけないでしょ。…アンタ程の人が弱小チームなんて、無理…。それなら、最高のチームに入ればいいじゃん」
律の提案に、青蘭が少し考える。
言われてみればそれもそうである。
今回パスしようかと思っていたが、それだと妹の病気が更に悪化し、資金も集まらない。
物凄く不本意だが、この男の提案に乗るのも一興なのかもしれない。
馴れ合うつもりはないが、セッションとは本来複数でやるもの。
今回避けたとしても次回も同様にチーム戦だろう。
それならば今期にかけて、デビューするのが効率良いに決まっている。
「……条件ハ?」
「俺にピアノ教えてくれれば、佐野に口添えしてあげるよ」
「……了解」
そう言って、スマホを出した。
「…教えてくれるんだ?」
「そうダ。そいつのチームにイレロ」
QRコードを出し、互いに登録しあった。
「じゃあ、今からレッスンしてよ…」
青蘭は返事しないまま、顎をクイッと動かせた。
着いて来い、そう言っているのがわかり、律は棒読みのまま返事をするのだった。
ついに主軸メンバーが揃いました。基本、この5人が中心の小説になるのかな?なんて思いながら書いてます。とても長くなりそうなので、今から気が重いです。自分の塩梅の癖に(笑)
2025.06.24
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