告白
どれくらい合わせていたのだろうか。
気づけば夜中の12時を過ぎていた。
海向の演奏に合わせて、夢中になって歌っていたから時間が過ぎるのが早くてあっという間に楽しい時間は終わってしまう。
「…環、勅使河原の事で…キスして堪忍や」
突然の事に、あの時の海向の美しい顔と唇の感触が脳内に浮かび上がる。
どきんと胸が高鳴り、環の顔が真っ赤に染まった。
「……そない顔したら、アカンやろ」
海向が参ったと言わんばかりに目元に手を添え、バツの悪い顔をする。
「っ…ごめん。気持ち、悪い顔…してた、よな?」
ガーンと効果音が鳴る程にショックを受ける環。
「違うやろ…、環の今の顔…満更でもない言うてて、正直グラっと来よる…」
その言葉の意味が一瞬理解出来ず、環がゆっくりと海向に視線を向ける。
「……え?」
するとそこには目元を真っ赤に赤らめ、明らかに照れている海向がいたのだった。
「……見んなや」
普段は絶対にしないだろう、拗ねるような睨み。
美少女顔がそれをするだけで、相当格好良く見え、環が顔を真っ赤染める。
「……その顔やボケ。…そんなんしとったら、喰われてまうやろ」
はーっと海向が溜息をつき、目を逸した。
「……っ、こんな…平凡な俺が…そんな…」
環はふるふると微かに震え、心臓をばくばくさせながら否定する。
何だこの気持ちは。
口から心臓が飛び出てしまうんじゃないかと言うくらい、訳がわからない。
海向なのに、目の前にいるのは海向の筈なのに、いつもより更に格好良く見えてしまうのは何でなんだろうか。
そして、触れて欲しいと思う感情が何なのか全くわからなかった。
「…ホンマに言うてるんか?…こない無防備な姿して、…喰うて欲しそうな顔して…」
ずいっと海向が近付いて来たかと思えば、強く抱きしめられた。
「…あ…」
ふわりと香る海向のフレグランス。
そして抱き上げられた時から感じていた、逞しい腕と胸板。
「…なぁ…ホンマ、敵わんで…」
ぎゅっと強く抱きしめられ、心臓がきゅんっと甘く痺れる。
海向に抱きしめられている事を体と心が喜んでいるのだ。
「…かな…た…」
環が小さく名前を呼べば、海向がゆっくりと体を離す。
環の顔を見れば、頬を染め、恥ずかしそうなのに色っぽい視線にばくんと心臓が高鳴った。
「……さっきの訂正させてくれんか」
海向の喉がごくりと鳴った。
「…海向?」
ぼーっとしながら、環は海向を見つめた。
「謝った事…無かった事にしてや…。初めてやから、俺自身も戸惑うてまう。けど…誤魔化しとうない」
ゆっくりと手を動かし、環の頬に添える。
ぴくりと環が揺れ、逃げないよう腰をぐっと捉えた。
「…何…が?」
環は何の事を言っているのか理解出来ず、自然と上目遣いとなって海向を見つめる。
細い目元が少しだけ大きくなり、水気を帯びた瞳がきらきらと光り輝く。
まるで宝石のような輝きに、海向が見惚れていく。
「キス」
その瞬間、環の瞳が大きく見開く。
そして更に顔を真っ赤にし、口をばくばくを開口したのだった。
「っ…ぁ…」
声にならない声をあげ、瞳が段々と潤み始めた。
「…それ、脈ありって事でええんか?…期待、してまうやろ」
海向がぺろりと自らの唇を舐め、誘惑的な色気を放った。
「っ…!」
それを見た環は目をとろんとさせ、ゆっくり瞳を閉じる。
「…可愛ぇ…、ホンマ、可愛ぇな…」
海向は堪らないとばかりに目をギラつかせ、親指で環の唇をゆっくりなぞった。
「したかったから…したんや、あの時。…環をあない男にやりとうなくて…気付いたら、体が動いとった…」
ゆっくりと環が目を開ければ、いつもの優しい表情の友人ではなく、男の顔をした海向がいたのだった。
それを見て、環の胸が何度も激しく鼓動する。
とても心臓に悪い。
「…かな…た…」
口を開き、名前を呼べば、海向の指が環の唇からするりと口腔内へと入る。
白く綺麗な歯を指で何度もなぞり、その奥に潜む赤い舌に触れた。
海向のされるがまま、かたかたと環の体が震えて行くのがわかる。
それが恐怖からではないのはその表情を見れば一目瞭然だった。
「…スキだらけや…、喰われても文句言われへんで?」
海向の瞳が細まり、ゆっくりと環へと近づく。
「…好きや…環。…お前を誰にも触らせとうない…」
こくんと環が頷き、海向の瞳が微かに揺れる。
すっと指が口腔から出れば、蕩けた顔をした環がゆっくりと唇を動かした。
「…海向が…いつも助けてくれて、凄く嬉し…。俺も…好き…だと思う…」
そう言って、目の前にある海向に抱きついた。
ぎゅっと音が鳴る程強く。
「っ…ははっ!…参ったわ。まだ好きやないにしても…好きだと思うだけで、こない嬉しいもんなんやなぁ…」
海向は環を強く抱きしめ、嬉しそうに微笑んだのだった。
固定カプにして、百合っぷるです。同じ背丈くらいのカプって良いなって所から始まり、美人可愛い×平凡(非凡)書きたいと言う気まぐれから始まった連載です。そして環を中心に攻達が頑張っていく様を今後書けたらなと思い、フラグ立ち上げてますが、総受けではないので、そこに様々な感情をのせられたらなと思ってます!
2025.04.30
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