tori


恋人になった日


2人の影が重なり、隙間なく合わっていく。

「…ん、…ふっ…」

海向の舌が環の舌を探し、絡み合えばぴくりと環の肩が跳ね、顔に火がついたように真っ赤になった。
恥ずかしいのに気持ちが良い。
ぬるりと動き廻る舌の動きに合わせるよう、環も海向の首に腕を回して、拙いながらも舌を動かせた。

「っ…!」

まさか環が応えてくれるなど思ってもみなかったのか。
海向の瞳が驚きに見開く。
目の前では環が顔を真っ赤にし、うっとりとキスに夢中になっているではないか。
その破壊力と言ったら、鼻血ものである。
まぁ、出はしないけれど。

「…んっ…海向……?」

ふと、海向からの口付けが止み、ぼーっとしたままで環は不思議そうに声をかける。
無意識だろうが、首を傾ける仕草が可愛くて仕方ない。

「おん?……可愛ぇな、思うてな…」
「っ…可愛くなんか…」

環は瞳を潤ませ、動揺する。
決して嫌なんかじゃなく、この顔のどこが可愛いのか疑問なのだ。
いつも言われる言葉は平凡。
地味。
そればかりだから、可愛いなんて思うのは世界中探しても海向だけだろう。

「めちゃくちゃ可愛ぇで。…こない、夢中になってまう程に…」

環の顎を掴み、何度も触れるだけの口付けをする。
ちゅっちゅっとリップ音を鳴らし、唇から始まり頬、鼻、額と顔中に広がっていく。

「っ…狡い…」

環がキスされる度に目を閉じ、離れたタイミングで開けては、少しだけ不満そうに頬を膨らませる。

「どないしたん?」
「…海向の方が格好良い。……可愛いなんて思うの海向だけだよ。…余裕なくて、夢中になるのは俺の方じゃん…」

ずきゅんと胸を撃たれ、環を思い切り抱きしめる。
この少年は何て嬉しい言葉を毎度くれるのだろうか。
格好良いなど言われ慣れてない海向がメロメロになるのは当然である。
可愛い、綺麗、そればかり言われて育って来た海向からしたら、格好良いと言ってくれたのは環だけだった。
その言葉がどれ程嬉しかったかなど、環は知りもしないんだろうが。
きっと初めて会ったあの日、格好良いと言われた瞬間から恋に落ちていたのだろう。

「あー…アカン。…環、ホンマ、俺を喜ばせ過ぎやで…。止まらんなるやんか…」

ぎゅうぎゅうと力を込めて、変な気持ちにならないよう必死に抱きしめる。
頭の中では糞兄貴こと、和空を思い浮かべればやましい気持ちが段々と薄れ、萎えていくのだった。

「喜ばせてるのは海向じゃん…。こんなに可愛いとか、好きって言われて…、いつも助けに来てくれるから、好きにならない方がおかしい…」

環の言葉に、海向の体がぴたりと止まった。
先程は好きかもだったのが、今は好きに変わっているではないか。

「……それって、俺の事…」
「……ん、好き。…凄く…」

恥ずかしさのあまり、ぎゅっと海向を抱きしめる。
茹で蛸のように顔が真っ赤だった。

「っ!!最高や…!ホンマか…!?」

がばりと環を体から引き離し、照れているであろう顔を見れば、自分に恋をしている瞳と合わさった。
本当なんだと表情でわかり、海向はそのまま環ごと、ソファーに転がる。

「わっ…!?」

ぼすんと音が鳴ったかと思えば、海向越しに天井が見える。
押し倒されたと思った瞬間、再び唇を塞がれたのだった。
最初は驚いたものの、環はゆっくりと目を閉じて、海向の口付けを受け入れる。
胸元をきゅっと手で掴み、まるでキスをせがんでいるように思えて堪らない。

「環、…ん、…好きや」

ちゅっちゅっと再びキスが再開され、環は幸せそうに微笑んだ。
どのくらい口付けをしていたのだろうか。
重ねるだけの軽いものなのに、物凄く海向を近くに感じる。

「…環、大切にする。好きで堪らんわ…ホンマ」
「うん…」

互いに見つめ合い、何度も会話しながらキスをし続けた。

「俺と付き合うてや」

その言葉に環の瞳が揺れる。
目に涙を溜め、うるうるとした上目遣いで見つめられて、海向が何度も愛を囁いた。

「恋人になってぇや」

こくんと環が頷き、嬉しそうに笑った。
その顔の可愛らしさと言ったら、花が咲いたみたいに綺麗で、海向は思わず見惚れてしまう。

「嬉しい…海向の恋人にしてくれて、凄く…嬉しい」

互いに真っ赤になりながら、照れ合う姿は何とも可愛らしいものだった。
その後も何度も口づけを交わし、深くなるそれにギブアップしたのは環の方だったとか。



クラス編終了しました。ここまでおつき合い下さり、本当ありがとうございます。
めちゃくちゃ寄り道したけど、やっとこさ両想いになりました。いきなりの急展開にきっとついていけないだろうなとは思つつも環→←←←海向って感じに解釈して下さい(笑)2人の間に横槍と言うか、間男?を入れていけたらなと思います。総受けじゃないけど、総受けちっくになるのは目に見えてますので、誰が環にちょっかいかけるのか、自分なりに楽しみながら書けたらなと思いますので、今後ともよろしくお願いします。


2025.05.02

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