tori


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「へー、お前、新って名前なのか!新しいって書いて新、初めて聞いたなー。長いし、言い慣れねぇから、シンでいいか!」
「シン…?僕は新だよ」
「知ってるか?漢字には色んな読み方あるって。あらたの他にシンとも読めるんだぜ!!」

元気いっぱいの少年が名案だと言わんばかりに閃く。

「そっか、シンって言うんだね…」
「そうだ!呼ばれた事ないか?」
「んー、ないぃ」
「なら、俺とシンの特別な呼び方だ!俺の名前は己梛、あんま人に呼ばれんの好きじゃねぇんだ…だって、女みてぇだろ?だけど、シンには特別に呼ばせてやるよ、ほら!」

満面の笑みを浮かべた己梛の顔を見て、新の胸はどきんと大きく高鳴った。
こんなに明るく気さくに話しかけてくれて、しかも自分にだけ名前呼びを許可してくれる。
その特別扱いがどれ程に今の新には嬉しかった事か。
両親からは出来損ないだとレッテルをはられ、上の兄達からはお荷物扱い。
とてもじゃないが5歳の少年には耐えられない家庭環境だった。
そんな中での己梛との出会いは新にとって、とても大切であり、一縷の望みだったのかもしれない。
いや、希望だろう。

「みな、にぃぃ」
「ぶはっ!!え、何!?俺の事、兄ちゃんって言いたいの?」
「うん…」
「おー、俺にもシンと同い年の弟いるから、ひとりや2人変わらねぇか!」

否定されなかった。
それがとても嬉しくて、何度も名前を呼んだ。

「それ、言いにくくねぇか?本当に仲良い奴だけは俺をみーって呼ぶんだけど、シンも俺と今日から仲良しだからみーにぃって呼べよ!」
「っ!!うん!!みにぃぃ」
「ぶはっ!!何かその言い方だと、ディズ○ーランドのネズミじゃねぇか!!」

そう言って己梛は爆笑する。
新は言ってる事がわからなかったが、己梛がとても楽しそうだから、何故か自分も凄く嬉しくなって笑った。


これが新と己梛の出会いで、新にとって初めて自分の居場所を見つけた瞬間だったのだ。
それからはもうただ己梛の後を雛のように追い続け、いつしか金魚のフンとまで言われる程に有名に。
己梛は元々、兄貴肌で誰にでも気さくに打ち解けるし、可梛と言う弟もいたから面倒見がとても良かった。
そこに拍車をかけるよう、新はどんどん己梛にハマっていく。
そして、そんな2人を見ていた可梛は誰にも言えないどす黒い感情を育てる羽目になってしまったのは言うまでもなかった。
こうして幼馴染み3人の三角関係は始まりを告げるのである。


コトコトと音が聞こえ、新の意識が戻る。
見慣れない天井。
甘い香り。
この懐かしい匂いに胸がとくりと音を立てる。

(夢かぁ…。凄い懐かしい。そっか、この匂いのお陰でみにぃの夢見たんだぁ…。嬉しいなぁ…)

「お、目覚ましたか?」

夢だと思っていたけど、あの声は現実だったのか。
まさか本当に、そう思い勢い良く飛び起きるとくらりと眩暈がした。

「おいおい、いきなり起きるなよ」

そう言って己梛が新の背中を支え、隣に座る。

「……、っ…、みにぃ?」

ぼろりと新の目から涙が溢れ、それを己梛が優しい手つきで拭う。
ゴツゴツとした大きな手に長い指先。
微かに香るタバコの臭い。
そのどれもが懐かしくて、新はぼろぼろと涙を溢していた。


今回の脇役くんは自己主張強めのツッコミ気質。何よりも巻き込まれる星と言うものをもっています。本人の意思とは関係なしに周囲のあらゆるものに巻き込まれ、労力を消費し、疲れた様子を書けたらなぁと思ってます。一応ラブコメ展開希望。


2026.06.02

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