tori


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「覚悟決めたんだな?もういいんだよな。今更、やっぱ無理はねぇから…」
「…、ん…」

新は目を潤ませて、期待するような眼差しを送る。
それがどれだけ男を刺激するか、わかってない。
長年待ち続けた飢えた獣の前でして良い表情ではなかった。
きらりと目の奥が光り、獰猛な肉食獣またいな顔へと変化していく。
びりっとその場の空気が変わり、本気で己梛はこれから自分を食べるのだと理解した。

「今から手出すから、覚悟しとけよ」
「……ん、するぅぅ…」

目元を赤らめ、うるうると瞳を潤ませる。
少しだけ怖いけど、己梛になら何をされても構わない。
目の前の少年を見て、神聖なものを汚すような背徳感と共に訪れる、征服欲。
もう戻れない。
戻る気もなかった。

「シン…好きだ」

その言葉を聞いた瞬間、新の瞳からぽろりと涙が零れた。
ずっと待っていたその言葉。
嬉しくて、胸がいっぱいになり、幸せで堪らない。
そしてゆっくりと2人の唇が重なっていく。

「…ん、っ…」

新から洩れる吐息。
それが己梛のこれまで耐えていた気持ちを決壊させるには充分だった。

「は…」

どちらともなくはかれる吐息。
ふにっとした柔らかな感触。
互いの体が触れ合った場所が焼けるように熱い。
ちゅっ、ちゅっ、っとリップ音を聞かせ口づけを繰り返す。
とても甘く苦いフレーバーの香り。
何度も重なり合う互いの唇。
熱くて柔らかくて、溶けてしまいそうになる。

新の思考がふわふわしていく。
憧れであり、ずっと想い続けていた己梛とのキスはあまりにも甘美なものだった。
薄くて、いつもからかってばかりの唇。
悪戯な笑みを浮かべる時は口角が上がり、それがまた格好良くて堪らない。
その唇が合わさってるのだ。
まるで蕩けてしまいそうな程に唇が触れ合い、熱が伝わる。
触れるだけのキスなのに、もう力が入らない。

「…ん、……ふ」

己梛は思う。
フレンチキスだけなのにこの蕩けよう。
これ以上先は難しいのではないかと。

「みにぃ…」

まるで猫のように甘え、顔がとろとろになっている。
やはり子供にはまだ刺激が強すぎたか。
そう思い、ゆっくりと体を離した。

「…シン」
「っ、…大人のキスぅ、凄いぃぃ…」

いや、まだまだだよ。
そう言葉にしそうになったが、どうやら新は大人の階段を登ったかのうにメロメロに色気づいていた。

「そうですか、良かったですねー」
「……うん、…力はいらないよぉぉ…。こんなの、知らないぃぃ…」
「っ…!」

どこまでも煽ってくる少年。
そんな言い方されて、我慢するのがどれ程難しいかなんて、思いもよらないだろう。
ぎゅっと拳を強く握り、己梛は耐える。

「ちゅーって凄いねぇ…」
「ああ、そうだな…」

とろんと己梛に寄りかかり、自らの唇に触れ、余韻に浸る。
その間も目を潤ませ、誘うような上目遣いだから質が悪い。
何と言う可愛らしいとろけ顔だろうか。
他の誰にも見せたくない。
特に自分と好みが似てる、あの弟には絶対。

「大人って…凄いぃ…」

いやいやいや、まだバードキス。
激しいディープキスをしたかのような反応。
やはりお子ちゃまである。
あそこで止まってて良かったと胸を撫で下ろす。

「うーん…こりゃ、前途多難だわ…」
「ん…?」
「いんや?何でもねぇよ」

己梛はちゅっと何度も新の唇に口づける。
今はこれだけでも良いかと思い、やはり新のペースを一番に考える事にした。

「んぅ…」

それを嬉しそうに受け入れ、己梛の首に腕を廻す。
ぴったりと互いの体がくっつき、先程までの甘々な空気が一変する。
己梛の目がまた先程のように明らかにギラついてるのだ。
それを見て、新は少しだけ怖じ気づく。

「もっと大人のキス教えてやろうか…?」

色気を惜しむ事なく紡がれる甘い声。
何と言う魅惑的な響きだろう。
新の腰にびりりっと電流が走る。

「あ…、え…?」

新は己梛の言葉の意味がわかってるが、何となくだがわからないようにした。
それよりも今まで見た事もない雄としての色気に当てられ、体が自然にびくびくと震えてしまう。

「今からすげぇ気持ち良いキス…してやるよ」

ペロリと自らの唇を舐め、まるでこれからご馳走でも食べるかの如く色気が室内に広がった。

「み、にぃ…?」

新は目に涙を溜め、その色気に充てられ失神寸前である。
こんな己梛は知らない。
いつも余裕しゃくしゃくでからかってばかりで、面倒見が良くて、安心する。
なのに今はとても怖く感じてならないのだった。

「怯えちゃって…たまんねぇなー…。すっげぇ…ぞくぞくする」

その言葉の通り、ぞくりと己梛の体が震えた。
これからのキスにより、新のもっと蕩けた顔を想像するだけで下半身にくる。

「…あ、…?」

新が本当の意味で自分を男と初めて認識して、怯えながらも逃げないでいる。
それがどれだけ男の心を擽る事か。


2026.08.20

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